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まちゼミは商人を鍛える

総人口に占める65歳以上の人口の割合、つまり高齢化率は全国平均で28.4%(2019年9月15日現在)で世界最高率。2030年には高齢化率は31.1%に達し、約3人に1人が65歳以上という社会を日本は迎えます。

そんな日本でも、すでに高い高齢化率となり、ある意味、日本の先進地域と言っていいまちがあります。福岡県北九州市、ここはすでに高齢化率35.7%(2015年)と、同年の全国平均26.6%を大きく上回っています。かつてはにぎわった商店街も、歩く人はまばらで、まちなかでたまに見かける往来者も多くはお年寄りでした。

しかし、まちはまちを思う人間がいるかぎり終わりではありません。このまちで、「これで駄目ならまちは終わり」と固い決意でまちゼミに取り組む商人に出会いました。60年以上にわたってこのまちで商う「お茶のありや」の店主、岡崎勤さんです。

生活者、地域、そして商人の“三方よし”の活性化事業、まちゼミを知った岡崎さんは仲間を募ろうと、地元の店主仲間や商店街関係者を回りました。しかし、返ってくるのは「何を今さら?」「もう年金暮らしだし」「まちがあんなに寂れたんじゃなあ」という否定的な言葉ばかり。「1週間ほど立ち直れませんでした」と岡崎さんは振り返ります。

それでも、あきらめる岡崎さんではありませんでした。地図を片手に、地元の商店や事業所を一軒一軒しらみつぶしに歩き、声を掛けて回ったのです。一日に4、5軒、それを2カ月半続け、訪問した軒数は延べ約200軒に及びました。

「これで駄目だったら門司港は終わる。それにそのとき、私はもうすぐ70歳。自分にできる最後のことという気持ちもありました」。まちに育てられてきた恩を返したいという思いが、岡崎さんを突き動かしたのです。

彼の情熱に感化された賛同者たちによって、門司港でまちゼミが始まったのは2016年2月。この2月で9回目を迎え.まちゼミを活用することで事業を軌道に乗せつつある新しい商業者も現れはじめています。

そんな岡崎さんを支えた言葉がありました。「何を学んだかが大切なのではなく、何を為したかが大事なのである」。商業界主幹、故・倉本初夫の言葉です。

70歳を過ぎた岡崎さんは、いまも仲間たちと共にまちの活性化に取り組んでいます。「門司港をみんなの力で大きなショッピングモールのようなまちにしたい」と岡崎さん。

これまで私は全国30以上のまちで、まちゼミに取り組む商人たちを取材してきました。その上で断言できるのは、まちゼミは己の商いを鍛え、地域のお客様に寄り添い、まちを暮らしやすくする取り組みだということなのです。まだまだ岡崎さん挑戦が続きそうです。

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