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革命の旗手か? 支配の魔王か?

顧客第一主義――1995年7月、およそ四半世紀前に開業したインターネット書店「アマゾン」が掲げる企業理念です。多くの企業が同様の企業理念を掲げていますが、同社のそれはどこが他と異なるのでしょうか。

いまや地球最大の書店であるばかりか、Eコマースの巨人として君臨する同社が標榜する顧客第一主義は次の三つを実現することにあります。
① 顧客は幅広い選択肢を求めている
② 顧客は低価格を求めている
③ 顧客は迅速で信頼できる配送を求めている
 
圧倒的な品揃えが顧客の再来店を促し、それによって出品者の数を増やし、それが豊富な品揃えと循環する。売上げの増加とコストの低下で得られた原資は、値下げと配送の迅速化へと投資され、それはまた顧客満足へと循環する――同社の歩みはこの3点を追求してきた歴史と言っていいでしょう。

『1分間ジェフ・ベゾス Amazon.comを創った男の77の原則』は、創業者、ジェフ・ベソスの言動から、彼が実践しているビジネスの原則を、77のキーワードと解説で解き明かしています。
 
「注意を払う相手は顧客であって、競争相手ではない」(70ページ)
 
このキーワードに対して著者・西村克己さんは、実店舗で商品を確認してアマゾンで購入する「ショールミング」という顧客行動を防ごうと、家電量販店がキンドルの取り扱いを拒否した結果、ネットでの顧客獲得競争に大きく出遅れた事実に触れつつ、「わかるライバルに対策を打ってばかりでは仕方がない。わからないライバルに対策は立てられない。最善のライバル対策は、顧客サービス拡充」にほかならないと解説しています。

77のキーワードは次の8つのテーマに分類されています。
「気づいたら動く」決断の条件
「まず成長する」マーケット戦略
「サービスに集中する」ブランドづくり
「長い目で見直す」発想の技術
「イノベーション体質になる」進化計画
「利益を無視する」競争戦略
「驚きを与える」商品開発
「チームを小さく保つ」組織戦略

気になるところから読んでみると、そこに改革のヒントが見つかります。「最後は、顧客にとってよい選択をするものが勝ち残る」とはジェフ・ベゾス。新しい流通革命の旗手か、流通支配の魔王か? いずれにせよ、彼から既存の商業者が学べることは少なくありません。


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