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喜安浩平の『庭から』~脚本創作について・序の2~

さっきまで、『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』2話の放送を見ておりました。


様々なご意見があることでしょう。ツイッターで散見するのは、「なぜ今?」とか、「設定が違う」というご感想(感想なのか?)です。今作は、原作の続編にあたります。原作の25年後です。だから、純粋で恋に不器用な少年の前に突然ビデオガールが現れ、、、という基本設定については、原作と同じです。時代設定が違うということなら、確かにその通りですが、主人公が違うというのは、そりゃあだって続編だから、です。


なぜ今、電影少女を?という疑問については、プロデューサーの五箇さんがいろいろお話ししてくださっているので、そちらをごご覧いただくとして。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171230-00000058-mantan-ent


私自身も、脚本のご相談をいただいてすぐ、「今やる」ということを強く意識しました。25年前に連載を終えた漫画ですから、そのまま脚本に起こせば、当然、違和感むき出しになります。あるいは、それを懐かしむことができる方々だけの、閉じたお楽しみになる。どうもそれは、テレビという媒体でやるべきものではないように思われます。私の仕事は、原作を「今やる用」に作り変えることから始まりました。


では、ビデオガールを、Blu-rayガールにすればよいかというと、そういうことではないはずです。アイは、ビデオテープから出てくるからいいのです。今でもテレビから人がにょっきり出てきたらギョッとするわけではありますが、しかし、あの当時の最先端であるところのVHSビデオテープに、美少女と恋愛と、極めて説明困難なSF設定を掛け合わせることで、少年たちの心の内に秘めたロマンとエロスに、大きな火を灯すことができたのではないかと思います。あの時代だから生まれ得たヒロインであり、恋愛ドラマと言えるでしょう。今のデジタルな再生機器を介して、同じだけのロマンを視聴者に想起させられるか、私には想像し難く、設定を現代化することにはどうにも気持ちが向きませんでした。


逆に、原作準拠を徹底し、連載当時の89年から92年辺りを再現するドラマにしてしまう、という考えはあるでしょうか。これっぽっちもなかったかと言えば嘘になりますが、議論にさえならなかった記憶があります。それをやってしまっては、現場が、ビデオガール云々よりも、あの時代を再現することに注力してしまうことは必至です。それではビデオガールではなく、バブルへGO的ななにかになってしまうのではないでしょうか。原作の持つ魅力を邪魔することにしかならない。というわけで、原作ママ、も無しと。


原作通りにやる。原作の設定を現代に置き換えてやる。どちらも無しとなりました。あるのは、ビデオから女の子が出てくるという大原則。あとは、原作の、あの時代らしい切なく愛らしい恋愛ドラマを現代の若い俳優が演じる、という避けようのない条件だけです。でも、そこから先はそんなに複雑な道のりではありませんでした。自然と早々に辿り着いたのが、“あの”ビデオガールを、現代の若者に出会わせる、というアイデアでした。ボーイミーツガール、時代を超えて、というわけです。


そこで、あのテープと、あのビデオデッキが、実は封印されたままになっていて、、、という続編案が形になっていったのです。


電影少女の話はいったんこの辺りで。ここは、気ままに脚本のことを考える『庭』です。仕事の宣伝になっては困ります。


しかし、先の話は、脚本を書く上で重要な、「どこからどうするか」についてのヒントでもあるようです。そのことを、次回以降書いてみようと思います。今日はもう、夜が深いので。


ところで、この3ヶ月の間に、この『庭』で小編を製作し、発表しようと考えています。ただ徒然に脚本のことを書き連ねるだけでは、単なる脚本家の個人ブログになってしまうので、少しでもいいから、目指すところを設定してみようというわけです。


普段の記事は無料公開していきますが、出来上がった小編に関しては、有料にするかもしれません。私は有料を希望しています。商売がしたいということではなく、この場所でなんらかの成果が生まれるならば、対する評価もいただくべきだと考えるからです。簡単に言えば、張り合い、ということなのかもしれません。もしも有料にしたことで反応がなければ、そういう評価なのだ、と知ることができます。おお怖い。その先の所有やら使用やらは、自由なものとします。もちろん許諾なりなんなり、なにかしらの筋は通していただきますが、難しくはしません。もちろん高価なものにもしません。気軽に取って遊べるような、あるいは、手元に置いて眺めるような、そんなちょっとした、庭の収穫をご披露いたします。まだ少し先の、春の頃に。


ああ、その頃にはもう、電影少女の放送も最終回を迎えているのかもしれません。迎えていることでしょう。いやあ、作っても作っても、終わっていくものです。





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