マガジンのカバー画像

めずらしい味

10
イラブー、ウツボの味噌煮、亀の手、ワケノシンノス、山羊汁、ウツボカズラ飯、穴ジャコ、カラクッコ…珍味を巡るエッセイです。
運営しているクリエイター

記事一覧

珍味⑪ 臭い?臭くない?山羊汁(ひーじゃー汁)

珍味⑪ 臭い?臭くない?山羊汁(ひーじゃー汁)

肉食に思われることが多いのですが、実際は肉をそれほど食べることがなく、日常的には魚や野菜を多めに食べています。魚に味が近い鶏肉がもっとも好きで、鶏肉→牛肉→豚肉の順に好きです。

 ところが例外があり、羊肉だと俄然順位があがり、鶏肉に並びます。

 しかも、ラムよりもクセのあるマトンが好みです。

 インド料理店では、なにをおいてもマトンカレーが食べたいし、マトンビリヤニも大好物です。

何が好き

もっとみる
珍味⑩ がん漬けと「クラブ・ヴィオロニスト」

珍味⑩ がん漬けと「クラブ・ヴィオロニスト」

杉浦日向子さんの掌編小説集『ごくらくちんみ』に 「がん漬け」という珍味が紹介されています。

『ごくらくちんみ』は、オリーブやたたみいわし、カイコ、ふぐ白子、くさや、うずらピータンなど全68種の珍味が取り上げられ、ひとつの珍味につき、一本の掌編小説に料理されています。すなわち、68本の掌編小説からなります。

一本はごくごく短いのですが、一話完結で、男女の話であったり、親子の話であったり、珍味を

もっとみる
珍味⑧ 山のヘビ、海のヘビ、イラブー

珍味⑧ 山のヘビ、海のヘビ、イラブー

奇しくも、マムシやシマヘビを食べたのと同時期に、ウミヘビも食べる機会がありました。

 山と海のヘビ、両方と相見えることになったのです。

 ヘビは神の使いといいますから、海の神と山の神を胃袋におさめてしまっていいものか、逡巡するところでもありますが、せっかくの機会は逃したくはありません。

 しかし、両方とも「ヘビ」といいますが、その味は驚くほど違うのです。

 マムシを食べたのと同じ年に、沖縄

もっとみる
珍味⑦ シュールストレミングの悪臭と豊潤

珍味⑦ シュールストレミングの悪臭と豊潤

発酵錬金術師こと、発酵学者、 農学博士である小泉武夫さんの著書『奇食珍食』、『くさいはうまい』や『不味い!!』に、たびたび登場する

シュールストレミング。

スウェーデン産の塩漬けニシンの缶詰なのですが、強烈な悪臭から、現地では河原で開封しなければならない、風上で開けてはいけない(風下に人がいないことを確認)、周囲50メートルに人がいないことを確認しなければならない、などのルールがあるとか、「世

もっとみる
珍味⑥ レプティリアンとマムシの味

珍味⑥ レプティリアンとマムシの味

関西で鰻のことを「マムシ」というそうですが、

鰻ではなく、蛇のマムシの話です。

世の中には、足のない生き物と、足の多い生き物が嫌いな人間がいるといいます。

足の多い生き物が嫌いな人は、ムカデとかヤスデとかが嫌いで

足のない生き物が嫌いな人は、ヘビを見るとゾーッとするそう。

私はヘビが好きでも嫌いでもないのですが、

マムシを、数年前に頻繁に食べていました。

食べるようになったきっかけは

もっとみる
珍味⑤ ウツボカズラ飯が呼んだ

珍味⑤ ウツボカズラ飯が呼んだ

出会いは常に不思議なもので。

写真家の青柳陽一さんの著書に『岩魚が呼んだ』というのがあり、岩魚がさまざまな人の交流をするきっかけになり、まさに岩魚が人の縁を呼んだといった内容なのですが、

私の場合も、食虫植物をきっかけに、色々な方とのご縁がありました。

hiyokoさんと出会うきっかけになったのが「ウツボカズラ飯」で、mixiで珍味のコミュニティーを運営し、日記に食虫植物のことを書いていたと

もっとみる
珍味④ 見てはいけない唐墨(カラスミ)

珍味④ 見てはいけない唐墨(カラスミ)

子供の頃のある夕暮れ時、夕陽が差し込み、薄暗くなったリビングに、

何の用事があったのか、ふらりと足を踏み入れると、大テーブルの隅に祖母が座っているのが

目に入り、ぎょっとしました。

電気もついていないから、誰もいないものだと思っていたのに、暗い中に祖母がいた時の、ひやりとした気持ちときたら。しかも、手に包丁をもっていたのです。

台所でもないのに。

見てはいけないものを見た気がして、踵を返

もっとみる
珍味③ 黄金色の至宝。とろりと甘い海の味、雲丹(うに)

珍味③ 黄金色の至宝。とろりと甘い海の味、雲丹(うに)

一度でいいから洗面器いっぱいに食べたい。いつもそう思うのが、ウニです。

洗面器にとびきり新鮮な、ピンとしたウニをなみなみと入れて、木のスプーンで

掬っては食べたい。

「気持ち悪い」と必ず言われるのですが、いーや、食べたい。

それで、食べ過ぎて本当に気持ち悪くなって、二度と食べたくないって思うんだろうなぁ。

まるで私の人生を象徴しているようです。

そもそも、子供の頃に大量のシシャモを食べ

もっとみる
珍味② 郷愁のハチの子

珍味② 郷愁のハチの子

小学校時代の話です。

うちの小学校には、週一回お弁当の時間というのがありました。

机をくっつけて、お弁当を食べるのですが、ある日のクラスメイトKさんのお弁当箱の中に、みなれないオカズが入っていました。Kさんとは、仲が良いようなそれほどでもなかったような、大人しい女の子でした。

Kさんの小さなピンク色のお弁当箱のはしっこには、うすいクリーム色でマカロニを極細にしたようなのが何本か詰められていた

もっとみる

珍味① フィンランドの伝統料理 カラクッコ

木こりのお弁当というと、何を想像しますか。

私の中で「木こり」のイメージは、C.W.ニコルなのですが、

大柄で、髭が生え、オーバーオールを着て、帽子を被った男性

腕は太く、指は節くれだって、手の甲に毛が渦巻いているイメージ。

斧を地面に突き立て、首にかけたタオルで汗を拭き

切り株に腰を下ろして、食べるもの。果たして、何がぴったりでしょうか。

日本人なら、竹の皮に包んだおにぎり。

でも

もっとみる