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戦略不在のプロダクト開発を防ぐための処方箋

職業柄プロダクト開発についての相談を受けることが稀にあるのですが、その多くの場合に見受けられるのが「戦略の不在」という事象です。

ここには二つの問題が見え隠れしています。ひとつは、戦略というものに対しての理解が低いという問題。もうひとつは、戦略を実行するためのプロセスが整っていないという問題です。

このエントリでは、プロダクト開発における戦略とは何かを解説したのち、戦略不在に陥ってしまう理由および、戦略不在に陥らないための処方箋をいくつかご紹介したいと思います。

戦略とは

ビジネスやプロダクト開発の場で多く見受けられる「戦略」というワードはいったい何を指すのでしょうか。戦略と戦術は異なるなどの抽象的な話が多いこともあってか、戦略というものにピンときている人は少ないように思えます。

さて、戦略の定義はいくつか存在するのですが、私が気に入っているのは「目的達成のためのリソースの使い方」という定義です。これはP&Gなどでマーケティングを行なっていた音部大輔氏が提唱する定義なのですが、シンプルでとてもわかりやすいと思っています。

この定義をさらに詳細に考えていくと以下の4つの部分に分けることができます。

  • 目的の明確化

  • 現状分析(=リソースの把握)

  • 基本方針の策定(=仮説)

  • 実現可能な行動計画

つまるところ、明確な目的を達成するために何ができるかを現状のリソースから適切に判断し、現実的な行動計画に落とし込むことを「戦略」と呼ぶと考えています。

また、このことは戦略のもうひとつの側面を表しています。つまり、戦略とは「仮説」に過ぎないという点です。目的達成のためのリソースの使い方についての仮説を立て、その仮説をもとに行動に落とし込むこと、と言い換えることもできそうです。

ここまでの議論をまとめると、戦略立案=仮説立案とも捉えることができそうです。

としたときに「戦略不在」という事象が発生している組織に共通しているのは、「いま検証すべき仮説の不在」という事象です。

何を検証すべきかを組織として理解しないままに手だけを動かしているがゆえに、何年経っても前に進まないう問題が発生してしまうのです。

なぜ戦略不在に陥ってしまうのか

戦略不在に陥ってしまうケースはいくつかのパターンに分類されます。

パターン1:目的の不在

このケースが一番多いのですが、明確な目的が存在しないがゆえに戦略が存在し得ないというケースです。

そもそもとして、何を目的とするかで解決策(=仮説)は変わります。にもかかわらず、プロダクトの明確な目的を定義しないままプロダクト開発を進めてしまう組織が多く感じています。

また、「世界中の人を幸せにする」といった抽象的な目的が存在することもあるのですが、これはあまりよい目的とは言えません。目的には解釈の余地がないことが重要であり、そのためには「SMART」などの目的立案のためのフレームワークを利用すると良いでしょう。

参考: SMART
・Specific(具体的に)
・Measurable(測定可能な)
・Achievable(達成可能な)
・Related(経営目標に関連した)
・Time-bound(時間制約がある)

パターン2:実現不可能な行動計画

目的が存在していたとしても、実現不可能な行動計画を立ててしまうことはよくあります。ここでの問題は、現状分析が正しく行われていないという部分です。

つまるところリソースの見誤りなのですが、それが起こってしまう理由の多くに「現場と経営層の分断」という根深い問題があります。

実現不可能な行動計画は害でしかないことを理解し、現在のリソースおよび将来獲得予定のリソースで実現可能な行動計画を立てる必要があります。そうしない限り現場に戦略を徹底することは不可能であり、やがて現場からの戦略離れが始まってしまい、これが戦略不在へとつながっていきます。

パターン3:戦略の見直しを行わない

戦略立案当初は良い戦略だったとしても、市場環境の変化や自社の変化によって、その戦略は徐々に腐敗していきます。

つまり、戦略は定期的な見直しが必須といえます。にもかかわらず、一度立てた戦略の見直しを行わないケースが散見されます。

ゆえに不毛な戦略が現場に残り続け、結果として日々の行動と戦略が紐づかない戦略不在な状況が生まれてしまいます。


このような戦略不在の状況の場合、効率的なリソースの使い方ができず、結果としてプロダクトをうまく前に進めることができません。では、どのようにしてこの戦略不在を防げば良いでしょうか。

ここからは戦略不在を防ぐための処方箋をご紹介します。

戦略不在に陥らないための3つの処方箋

処方箋1:明確な目的の定義

前述したSMARTなどを利用し、明確な目的を定義することが望ましいです。また、目的の時間軸を考えることも大切です。

長期的な目的から現在の行動計画に落とし込むことは難しく、長期的な目的から導き出される短期的な目的を定義することで、実現可能な行動計画を考えることが容易になります。

処方箋2:プロダクトとして検証すべき仮説の明確化

市場の変化等で現在とるべき戦略は日々変わっていきます。これらの戦略の変化を現場のメンバーにうまく伝えられると良いのですが、そこがうまくいかずに「いま自分達は何をしているのか」がわからなくなってしまうケースが散見されます。

これらを防ぐために、「いま、なにを検証しようとしているのか」を常に明確に掲示しておくことが望ましいです。例えば、戦略を考える人の頭の中を日報や週報のような形で共有しておくなどの手段が考えられます。

処方箋3:仮説検証プロセスの徹底

戦略=仮説だとしたときに、仮説検証プロセスが徹底されていれば目的の不在にはすぐに気付くことができますし、戦略の見直しも仮説検証プロセスの中で自然と行われていきます。

つまりは、実行プロセスについて精通していくことにより、戦略不在という問題が自然と解決されていくわけです。

まとめ

戦略がない、つまり検証したい仮説がない(もしくはそのように見える)ということは、プロダクトに何の学びも与えないということです。学びを得てよりよいプロダクトにしていくためには戦略が必要であり、戦略自体も仮説検証を経てよりよいものへとブラッシュアップしていくべきです。

そのためにもまずは明確な目的を意識して現状を分析したのちに、実現可能な仮説を立てるという戦略立案の一連の流れに慣れていきましょう。


P.S. ラフなプロダクトの相談等々はいつでも歓迎ですし、ちょっと手伝って欲しいとかも時間次第では可能なので、お気軽にご連絡ください!


まいにちのご飯代として、よろしくお願いします。