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プロダクト開発において「ペルソナ」を正しく活用する方法

プロダクト開発において時折でてくる「ペルソナ」という方法論。正しく使えば良い効果を発揮しますが、実態としては間違った使われ方をされることが多く、結果的に多くのプロダクトを混乱に落とし込んできました。

この記事では私自身の経験に基づくペルソナという言葉に潜むトラップと、ペルソナを正しく活用する方法について記載したいと思います。

ペルソナは本当に必要?

「ペルソナとは」とGoogleで検索した際に一番最初に表示されるのは下記の記事です。(2019年8月末時点)

記事の内容自体は一般的なペルソナについての解説であり、世の中一般におけるペルソナの理解を促す上では良い記事だと思います。

この記事でもあるように、「担当者間で、共通した人物像を形成することができる」という点がペルソナを作成する上での一番のメリットです。この共通した人物像があることで「誰」に向けたプロダクトなのかをより明確にすることができ、プロダクトに対して一本の軸を通しやすくなります。

とはいえ、ここには一つの大きなトラップが潜んでいます。

空想のペルソナには何の価値もない

上述の記事を読み進めていくと、下記のような形でペルソナを作っていくと記載されています。

実際にその人物が実在しているかのように、年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、特技、価値観、家族構成、生い立ち、休日の過ごし方、ライフスタイル……などリアリティのある詳細な情報を設定していきます。

このペルソナの作り方こそがプロダクトを混乱に陥れる要因になっていると実経験から感じています。

ここには二つの問題が隠れています。

言語化出来る情報量の限界
実在しない人物をペルソナにしていること

それぞれ簡単に説明します。

言語化できる情報は限られている
私たちが言語化可能なことは限られています。SNSのプロフィールで自分の全てを伝えられないように、「ことば」に置き換えられた何かでは、自分たちのプロダクトを届けたい「誰か」を正確に表現することはできません。

実在しない人物にプロダクトを届けても意味がない
実在しない人物をペルソナにしたところで何の意味もありません。妄想によって作られた実在しない人物に向けて作られたプロダクトを、具体的な「誰」が使うのでしょうか?

つまりは、世間一般で言われるペルソナの作り方は根本的な欠陥を抱えており、そのペルソナをベースに何かを作ったとしても、プロダクトにとって何の意味もありません。

ペルソナの正しい作り方

ここからは私の経験に基づくペルソナの正しい作り方を記載します。

私としては、下記の2つの方法で作られたペルソナには意味があると考えています。

具体的な「誰か」をペルソナにする方法
数百人以上のdepth interviewを元にペルソナを作成する方法

それぞれ簡単に説明します。

具体的な「誰か」をペルソナにする方法
そのプロダクトを実際に利用する「誰か」をペルソナとして設定する方法は非常に有効です。自分がそのプロダクトを使うのであれば「自分自身」でも良いですし、チームの共通の知人などがいればその人が適任です。自分たちの近くにいないのであれば、その「誰か」を見つけることから始める必要があります。

私の友人が経営する会社では、友人の奥さんをそのサービスのペルソナに設定しています。その方の奥さんが本当にその機能を使うか、使いやすいと感じるか、といったことをベースに議論し、実装したものはまず奥さんに触ってもらうそうです。もちろん、チームのメンバーも奥さんと知人であり、その人をイメージしながら開発/デザインしているとのことでした。

このようなペルソナを置く場合、共通認識を持つことも容易ですし、言語化しづらい部分も共有しやすく、また、困った場合はその本人にインタビューさせてもらえれば大抵の場合は問題は解決します。

もちろん、ペルソナとなる「誰か」の選び方を間違えるとサービスとしては失敗に近づきますが、そこさえ間違えなければ非常に有効な手段だと考えています。

数百人以上のdepth interviewを元にペルソナを作成する方法
こちらは資金的な体力がある企業や歴史のあるプロダクトなどに限定されてしまうのですが、数百人以上に個別のインタビューを行い、それらの結果を元にペルソナを作っていく方法も有効です。

少しのインタビューなどでは言語化できない部分を数でカバーし、情報の精度を上げていくというアプローチです。この方法は多くの時間がかかる上、情報の集約方法を間違えると大切な情報が欠落してしまうというデメリットも兼ね備えています。

とはいえ、CM施策などでマスに向けて発信するときなどは、最大公約数化された「誰」をイメージするしかなく、一定の情報の欠落は許容するという選択になります。

オフィスを出て人間を見にいこう

妄想でペルソナを作るのは、オフィスで出来るので非常に気楽です。ちょっとネットサーフィンして、それっぽい議論をして、年齢や性別や趣味などのあまり意味のない項目を埋めていけば、いわゆるペルソナは出来上がります。

ですが、この大切な情報の多くが欠落したペルソナは何の意味もありません。作らない方がマシです。(間違った方向にプロダクトの軸を通すという観点からは正しいかもしれませんが。)

そうではなく、オフィスを出て自分たちのプロダクトを使う「人間」を見にいきましょう。行動を観察し、時にはインタビューを行い、そしてそれらを自分たちのチームになるべく情報が欠落しない形でシェアしていきましょう。チームのメンバーと一緒にインタビューに行ったり、動画を撮ったり、写真を撮ったり、もちろん自分で触ってみたり。言葉では表現できないことを大切にしていきましょう。

無駄だとも思えるそれらの行動の積み重ねが、プロダクトチームに共通認識と正しいユーザー理解をもたらし、それが結果として良いプロダクトに繋がっていくのです。

まいにちのご飯代として、よろしくお願いします。