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ラ米の先住民アクティビストと学者を紹介

今日、8月9日は国際先住民族の日(International Day of Indigenous Peoples、World Indigenous Day)である。ここではラテンアメリカで活動する先住民アクティビストや学者を少しだけ紹介していきたい。エクアドルの先住民族組織ネットワークCONAIEのSNSをフォローするとエクアドル国内の各民族の活動や近況について知ることができる。

南米では、先住民アクティビストが国家やパラミリタリーに殺害される事件が後を絶たない。アマゾンの資本化と先住民差別を推進するボルサナロ政権のブラジルでは2019年だけでも10人の先住民族リーダーが殺されている。「あなたの道ゆくレイピスト」で一躍有名になり、チリ警察に訴訟を起こされたチリのフェミニスト・コレクティブのラステシスも、自分たちがもしも世界的に有名ではなかったらとっくに死んでいただろうと語っている。アマゾンの開拓反対運動や環境保護活動をしている先住民は特に標的とされる。例え遠く離れた国からでも、たくさんの人が先住民アクティビストの活動を知って、知名度が上がることでもしかしたら少しでも守られるかもしれない。今回はほんの数名ではあるが、紹介していきたい。


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ネモンテ・ネンキーモ(ワオラニ民族、エクアドル)Nemonte Nenquimo
2020年のタイム誌の世界で最も影響力のある100人に選ばれた。彼女たちが暮らす地域では石油の開拓が政府や企業によって進められており、その影響で生活圏が汚染され、ワオラニの人たちは苦しんでいる。森を守ることはワオラニの生活を守ることだけではなく、全地球のためのことだと彼女は言う。最近エクアドルのアマゾンで発見された新種のトカゲは彼女の名前に因んで命名された。
ネモンテのインスタ


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モイ・ギキタ(ワオラニ民族、エクアドル)Moi Guiquita
SNSを使ってワオラニ文化や言語を発信するほか、ワオラニ民族のコミュニティーを訪れることのできる観光プロジェクトWaponi Amazonの創立者でもある若きアクティビスト。いま、密輸業者の手から救出されたアマゾンのサルの保護センター設立のクラウドファンディングを行っている。様々な活動を通し、ワオラニが暮らすアマゾンを守ることの大切さを訴えている。
モイのインスタ


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グアリンガ姉妹(キチュア・アマゾニコ民族、エクアドル)
Nina & Helena Gualinga
ニナ(姉、左)& エレナ(妹、右)は母親のパトリシアさん含め、家族揃って環境保護に力を注ぐアクティビスト一家。彼女たちが住むアマゾンの地域、サラヤク・コミュニティーでは今年嵐による大洪水で地域一帯が浸水被害にあう。クラウドファンディングなどで支援を募るが、今もたくさんの家庭が被害を受けたまま先が見えず困っている。この嵐や洪水は気候変動が原因にあると姉妹もSNSとメディアを通して状況の深刻さを発信している。
COVID-19から身を守るため森のさらに奥へと帰ったサラヤクの人々の様子を追った短編ドキュメンタリーをニナがプロデュース
ニナのインスタ
エレナのインスタ


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ウシワ兄弟(サパラ民族、エクアドル)Gloria & Manari Ushigua
グロリア(姉、左)とマナリ(弟、右)はサパラ民族の生活圏を石油会社から守るためにもう何年も休むことなく活動し、世界各地で気候変動と環境保護を訴える活動に参加している。グロリアは沖縄の米軍基地反対デモへも参加したことがある。現在、Andes Petroleumという企業がサパラのテリトリーで石油開発事業を再開させることへの反対運動を起こしている。
国内外でサパラ民族のことをもっと知ってもらうため、リパヌというコミュニティー観光プロジェクトも行っている。


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アリルマ・コウィー(キチュア・アンディノ民族、エクアドル)
Ariruma Kowii

エクアドルのオタバロ出身のコウィー教授はアンディナ・シモン・ボリバル大学で長らく教壇に立ち、先住民の文化や言語について教えてきた。彼が提唱する「アビャ・ヤラ化」(abyabilizar)は南米先住民のルーツに戻ることの必要性、方法論を提示している。


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シルビア・リベラ=クシカンキ(アイマラ民族、ボリビア)
Silvia Rivera Cusicanqui

ラ米フェミニズムには欠かせない存在の一人。インドのガヤトリ・スピバァクの有名な「サバルタンは語れるか」に対し、「支配層は傾聴できるのか」と答えている。デコロニアル理論はもちろん、彼女はさらに、反コロニアル理論を提唱している。Taller de Historia Oral Andina(アンデス口述歴史ワークショップ)のメンバーとして長年アクティビズム活動を行ってきた。


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サメラ・サテレマウェ(サテレマウェ民族、ブラジル)
Samela Sateré Mawé
アマゾンのほとんどの面積はブラジルに属している。そこではボルサナロ政権になってからさらにアマゾンの「開拓」が進み、すざましいペースで森が破壊されている。生物学を勉強中のサメラさんは森の保護と先住民の生活の擁護のため活動している。新型コロナウイルス発生後は、先住民が意図的に必要な医療サービスを受けられない差別的状況について発信している。


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ロレナ・カブナル(マヤ民族、グアテマラ)
Lorena Cabnal
自身が幼い頃に受けた性暴力被害を元に、先住民コミュニティーのジェンダー暴力、家父長社会、ミソジニーを可視化する活動を始める。先住民社会とジェンダーなど、様々属性の交差点から生まれる問題にフェミニズモ・コムニタリオの視点から活動している。Red de Sanadores Ancestrales(先住民療法ネットワーク)を創立。暴力被害にあった先住民女性の回復支援を行っている。