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地方で演劇をやりながら就く仕事

県内で演劇をやりながら暮らす、には、演劇をやれるだけの収入を得られる仕事が必要である。私は関東でフリーターをしながら演劇をやっていたが、バイトだけで生活するというのはとても大変だった。周りの役者志望のみんなは次第に、生活するためにバイトをしているという感覚になって行く人が増えていった。

富山に帰って演劇を続けていた時に最初に感じたのは、生活に余裕があって演劇ができるなんて、なんて幸せなんだ。ということだった。就職していたので、お金はあるし、時間もあるから、宣材写真を撮ろうかなという気持ちや、そのために新しい洋服を買おうかな、という気持ちが大きくなった。東京でお芝居をしていた時よりも、お芝居で得られる金銭は富山に帰ってきてからの方が圧倒的にあった。皮肉なものだな~とよく思っていたのを覚えている。

県内の演劇関係者は、ほぼ正社員として働いていて、その傍らで演劇をやっている。パートやアルバイト、自営業の方もいる。割合的にはどのくらいだろうか。正社員:パート・アルバイト:自営業=7:2:1くらいの割合だろうか。(あくまでも私の体感)

県内で演劇をやるなら、まず土日休みで残業があまりない職種や業種は必須だと思う。就職して演劇が続けられなくなる人は、まず公演日と稽古日の時間が確保できない理由が多い。または、狙った通りの休みがもらえるシフトが組んでもらえるか、そういった人間関係を構築できる職場が理想だと思う。県内は製造業も多いため、実は土曜日も出勤の会社が多い。そのため、公演は土日に行うが、土曜日はソワレ(夜公演)、日曜日はマチネ(昼公演)が基本である。

アルバイトも時間の融通が利いて、都市部ではアルバイトと役者の相性は良いが、田舎は微妙である。生活としては成立すると思うが、家族や周りの評判や評価を求められる場合は、正社員という単語がチラつくからだ。パートの人は多いが、結婚しているからという理由が多く、そこで社会的立場を保証してもらっているような気がする。とにかく田舎で仕事をしながら演劇をするというのはある程度周りの目との戦いは必要だと思っておいた方が良いと思う。そろそろそういうのは無くなってきていると思いたいが。

私の知っている人たちの職業は、製造業、金融関係、販売、福祉、公務員(公務員は実はチラホラいる)、警備関係、飲食サービス、図書館、メディア関係などなど.....。基本的に8時間勤務の人が多いと思う。
ちなみに私は製造業で8時間勤務。残業は多い時で1日2時間位。休日出勤もある時がある。それでも、有休は取りやすいのと、職場でも演劇をやっていることは知られているので、公演が近くなってくると定時で帰ったり、有休を取ったりはしやすい。本当に職場には恵まれている。(有難や)

以前書いたが、稽古に人が集まらないという原因は仕事と家庭が多い。本当に演劇をやりたければ、仕事を選ぶときから演劇と仕事をどう調節するかというところに頭が行くかもしれないが、仕事が先で演劇が後から入ってきた場合には、なかなか仕事を調整しにくいのかもしれない。逆に、これから地元に戻って演劇をやるならば、演劇の活動時間を考慮しつつ仕事を選ぶ、ということも考えていいのかもしれない。

また、
職場⇔家⇔稽古場(劇団の活動場所)
の位置関係も、劇団を続けるということには重要だと思う。
(画像は県内に点在する主な劇団さんの活動地域)

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富山県は東西に広がっており、行こうと思えば東側から西側の劇団にも通える。移動時間片道1時間半、往復3時間ということになってしまうが、高速道路などが上手く接続されていれば、片道1時間くらいで収まる場所もある。
ただ、なかなかそこまでしてもこの劇団に入りたい、という動機がなければ、近くにある劇団に入ることが多い。

そのため、県内全域に、何となく劇団が散らばっており、その周辺の人たちが劇団員になるという形が多い。その結果、人口が多い場所は劇団員も多く、少ない場所はなかなか人が集まらない、ということになる。

演劇を続けるには、仕事の休日のほかにも、劇団の活動場所と家、職場の位置関係も重要かもしれない。

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