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限りなく弱々しい咳払い

先日、いつも通っている鍼灸院へ行ったら、鍼をうたれたまま存在を忘れられてしまった。

一時間放ったらかしだ。そのせいで普段なら一時間で終わる施術が二時間もかかってしまった。

これまで放ったらかしにされたことはなかったものの、この先生にはなぜか、根拠はないけれど、いつか忘れられる予感がしていた。

この日は、もしかしたらついに存在を忘れられたかもしれないと気付いて、弱々しく咳払いをしてみたりしたのだが、全く気づいてもらえなかった。

一番端の目立たないベッドに寝ていたから。

もし勇気を振り絞って先生に声をかけなかったら、閉店時間を過ぎて真っ暗になった鍼灸院の片隅で、うつ伏せのまま、宇宙に取り残された宇宙飛行士のように、どうすることもできずに居続けたんだろうなあ。

子供の頃の自分だったらきっとそのまま声をかけることができなかっただろうなあ、とか。

いつも自分の存在がバレないようにひっそりと生きているのではあるが、さすがにあまり存在感を消すのもどうかと思った一日だった。

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