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白いペンは自由を描く

先日もらった2000円のペンをずっとポケットに入れている。

「なんでその値段なの?」

もらったときにはそんなことを聞いていたのに、一度ポケットに入れてしまうと、私は四六時中このペンをいじっている。ノック式というわけでもなく、ペンのお尻の部分をひねってペン先を出すタイプなので、カチカチとノックしてすぐに書けるような使い勝手の良さはない。

最初のうちはよくわからないのにやたら高いペンだと思っていたが、いじっているうちに私なりの良さを見つけるところまでたどり着いた。ステルスマーケティングだと思って聞いてほしい。株式会社サクラクレパスのサクラである。そう! サクラのサクラである!

……さて、今回もらったペンは大人のクーピーと呼ばれるものでクーピーペンシルを模したペンだ。小学生のときに、ほんの少しだけ触れた覚えがある。私は根っからの色鉛筆派で、幼稚園の頃からクレヨンがあまり好きではなかった。触ったときの感じが粘土みたいで気持ち悪かった。そういえば、あぶら粘土もあまり好きではなかったし、紙粘土もそんなに好きではなかった。小さいころから、触り心地には敏感な子供だった。その中でもクーピーペンシルは私のカテゴリの中では「クレヨン族」として扱われ「色鉛筆側に寝返ろうとしているが、本質はクレヨン」という設定を与えていた。

なので、授業に必要な時にほんのちょっと、使ったのだが「削った時の削りカスがすごくきれい」以上の感想は持たなかった。

そんな、私の歴史においては邪険に扱われてきたクーピーペンシルの名前の由来をご存知だろうか。


”クーピーペンシルの名前のエピソードは、最初はフランスで作られたものだったので、 フランス語にちなんだものを、と考えて、フランス語の「クー COUP」という単語に「Y」を語尾に付けて、 クーピーと耳にやわらやく響くように工夫した造語です。このフランス語の「クー COUP」には、 「打つ」という意味があり、英語でSTROKE、BLOW(ボディ・ブロー、ロー・ブローなどのブローの意味)、PUNCH(パンチ)なのですが、 このような意味から発展して、つまり「今までの色鉛筆市場に一撃を加えたい」という意味を込めたネーミングです。”(クーピーペンシルHPより)


耳に柔らかく響くように工夫した造語。という母親のような優しさから一転「COUP」の意味が明かされる。……結構、野蛮だ。突然、耳障りの良いボディブローが放たれたので、私はこの文面をコピペしてペンをくれたYさんへとりあえず送り付けた。

そんなクーピーペンシルを模した大人のクーピーのボディ部分はすごくさらさらした触り心地だ。アクリル樹脂らしいが、材質にはあまり詳しくないので「さらさらしてます!」というのが精いっぱいである。あと、全体的に重い。計ったら25グラムくらいあった。床に転がっていたジェットストリームがおよそ10グラムなので、私が普段使っているボールペンよりもやっぱり重い。

そんなペンがポケットに入っていて、私はそれをずっと触っている。この太さ、触り心地、なにかに似ているなと思ったら、チョークだと思い至った。最近はチョークに触れていないので実際の触り心地と比べてどうかはわからないのだか、私の記憶の中にあるチョークとかなり感覚が近い。

手が汚れるけどチョークは好きだ。地面に落書するのが好きだった。こどもの国という神奈川県付近にあるテーマパークに遊びに行ったときは、入り口を抜けてすぐに広がるアスファルトの道と、そこに描かれた来場者のチョークによる落書きが飛び込んでくる。結構本気でイラストを描いている人もいて、私もへたくそなりにアンパンマンやらドラえもんを描いた。

高校でも、黒板いっぱいにチョークで文字を書くのが好きだった。今でもホワイトボードに文字を書くのが好きなので、でかいところにデカい文字が書ければいいのかもしれない。ただ、私にとってチョークの感触は「自分の好きなことを好きなように書いた記憶」としっかりリンクしているようだ。持っていても書いていてもテンションが上がる。

スケッチブックを取り出して、真っ白な紙に真っ白いペンで黒い線を引く。あー、いいなぁ、自由だなぁ。この空間だけは何をしても怒られない。嘘偽りない、武骨で下品で率直な言葉が空白を埋めた。

やっぱり無くせないなぁ。

一通り書き終えたらあとは、ペンをポケットに突っ込んで、親指の腹で何度も撫でた。

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参考ページ:株式会社サクラクレパス、クーピーペンシルhttp://www.craypas.com/products/pickup/coupy.php

SAKURA craft_lab https://craft.lab.craypas.com/


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