「ホールド・オン・セカンド、OK?」
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「ホールド・オン・セカンド、OK?」

まくらのキタムラ 北村圭介

どこを見ても、新型コロナの話ばかりで、香港のデモはどうなったとか、ブレグジットのその後は何も分からなくなってしまった。我々の中国のパートナー(マスクを製造している)も大忙しのようで、一日も早く収束することを願うばかりだ。

ご多分に漏れず、我々も3月に予定していたいくつかの案件は軒並み中止や延期となり、正直、ぽっかり予定が空いてしまって、なんだか身が入らない。

そんな時は、くだらない話でも。

取るに足らない話で恐縮だが、私の失敗談を思う存分、披露したい。読まれる方の、少なからず何かの知恵になれば少しは救われる。

ここ数年は、飛行機に乗ることが多くなった。ビジネストリップといっても旅行感覚が抜けなく、多くの失敗を繰り返してきた。ラウンジで休憩して、乗り継ぎ便が行ってしまったことなど序の口で、友人と二人で乗り継ぎを待っていたときも、時間になり、当たり前のように搭乗手続きしようとしたら、止められて、あしらわれた。

(日本人、なめられてたまるか)

と威勢よく「何だ!」と凄んでみたら、

「あなたの飛行機は、もう、1時間も前に飛んで行ったわよ」と。。

友人とは行き先が同じだったが、なんと、違う飛行機を予約していたのだった。ちなみに、手配したのは、他でもない、この私だ。OMG

今回は、そんな中でも特に痛快だった話をしよう。もう時効だと思うから、あけすけに書きたい。

その日は、イギリスへ行くために、中部国際空港(セントレア)を朝早くに訪れた。欧州へは様々な行き方があるので、出張を、単なる移動ではなく、できるだけ旅行くらい楽しめるものにしたい。

その時は、中国東方航空を選び、浦東へいき、そこからロシア系の航空会社のエアロフロートで、シェレメチエヴォ国際空港(一度もまともに言えたことがない。そして、この先も言える気がしない。)を経由し、ヒースロー空港へ。

今、聞いただけでも旅好きとしてはワクワクするようなルートを選択していた。これは、価格がリーズナブルだということもあるし、アライアンスを「スカイチーム」にしていることも大きな理由だ。

さて、チェックインカウンターは「ワンワールド」のJALが請け負っていた。そんなことは、あまり深くは考えず、いつも通り、チェックインをお願いした。

すると、「大変申し上げにくいのですが、」と、グランドホステスが、困った表情でゆっくりと顔を上げ、

「北村様のお名前が、間違っているようで。。。」

もちろんすぐに意味が呑み込めなかった。改めて聞き直すと、なんと登録した自分の名前のスペルが間違っていたというのだ。

なんてことだろう。
40年付き合ってきた自分の名前を間違えるとは!

一瞬で、頭が真っ白になった。
まぁ、そうはいっても名前違うくらいなんとかなるでしょうと軽い気持ちでいた。ただ、時間はない。すぐに気を取り直して、脳みそフル回転であらゆるソリューションを考え、実行した。

1.クレジット会社
購入したクレジット会社へ連絡をして、訂正やキャンセルなどできるのか聞いた。もちろん、答えは、まったく、ムリ。申し訳ありません、と朝っぱらから何度も謝らせて、逆に切ない。

2.購入先へ電話
今回、格安チケット会社で購入をしていた。その時点でまったくうまくいく気がしないが、とにかくお客様窓口へ電話。すぐアジアなまりのある英語のお兄さんと繋がった。半分くらい言っていることが通じてない。けど、「そんなのムリだし」という感じで、取りつく島もないとはこのこと。

3.中国東方航空へ電話
早朝ということもあって、ずっと呼び出し音が流れる。その間、もちろん搭乗時間が迫ってきている。(早く出て、お願い!)と思うのを尻目に、チェックインを済ましていく人たちをうらやましそうに眺めるが、アナウンスが延々流れ続けるだけで出る気配がない。したたる汗を感じながら、待つこと20分。

で、出た!二、ニーハオ!

相手、全部中国語。こちら、まったく中国語できない。
唯一、思い出した、「プーハーイース―(すみません)ホールドオンセカンド(英語)」
急いで、さっきのJALカウンターへ走り、誰でもいいからグランドホステスに、

「ちゅ、中国語、中国語ができる人、いませんかっ?」

と詰め寄る。
向こうも急いで周りに声をかけて探してくれたり、いなかったので電話してくれたり、その間、馬鹿の一つ覚えの様に「プーハーイース―。ホールドオンセカンド、OK?」を繰り返す。

永ちゃんの新曲「ホールド・オン・セカンド、OK?」

そんなことは、どうでもよくて、電話の向こうはメッチャ塩な感じだけど、祈るように受話器を握りしめる。

その時、一人のグランドホステスが、その日一番の最高の笑顔で

「北村さん、繋がりました!はい、どうぞ!」
って、受話器を差し出してきた。


コントの様な、マジな瞬間。電話と電話・・・昭和と令和

彼女と目が合うか合わないか、私の瞳から一縷の望みが消えた瞬間だった。涙で何も見えなくなった。JALの方の悲しい顔を今も忘れられない。申し訳なさすぎて。

ハッと我に返ると、受話器から、なんか告げられ、
その後、ツーツーツーと聞こえた。

そんな。。。ああ、無常。。。

それでも、カンタンに諦めるわけにはいかない。電話の向こうにいた中国語の喋れる人は、搭乗口から、わざわざカウンターまで戻ってきてくれた。

まるで、マリア様が舞い降りたかと見まごうばかりの、オバちゃんだった。汝、希望を捨てるな、と、マザーテレサも言っていたとか言わなかったとか。

もう一度、やり直そう。諦めるな。可能性を信じろ。
自らの手で開けるんだ、サードドアを!!

そう鼓舞して、マリアオバちゃんを筆頭にJALの方々に見守られながら、再び、中国東方航空の問い合わせ窓口へ電話するが、、、

イエス、現実は、いつも苦く、そんなうまい話はない。
それから20分ほど、まったくつながらない。。。
さっきの瞬間を、どれほど後悔したことか。
気が付いたら、もう汗も乾き切っていた。

諦めかけたその瞬間

キターーーーーー(古っ)
ニーハオ!ニーハオ!
ちょっと待って(もう日本語)


すぐにマリアへバトンタッチ。マリアは美しい朝日に包まれ、受話器を優しく手に取り、話し始めた。うなづきながら、話は進んでいる。いくつかの質問を受けているようだが、マリアの厳しい表情が和らいでいるように思えた。思いたかった。固唾をのんで見守るって、このこと以外に形容できない。

しかし、、、、

プートンまでは何とか行けたとしても、プーチン(ロシア)まではムリ。ビザもいるし、エアラインも、そこから先は違ってるし。

ジ・エンド。
私を乗せること以外のすべての業務は完了し、飛行機は離陸体制に入る。精魂尽き果てた。何もかもが色彩をなくした。文字通り、燃え尽きた。。なにより、JALさんに申し訳ない。でも、JALさんは最後まで優しかった。そして、「アライアンスが違いますが、」と前置きをしてくれながら、「大韓航空さんなら、ソウル経由のヒースロー便が15分前です!」(ああ、私、メインのアライアンスは、スカイチーム。)そして、ダッシュでカウンターへ行き、チケットを正規の価格で購入し、土産物屋でゴディバを買い、JALさんへ詫びを入れ、急ぎ搭乗口へと向かった。

めでたしめでたし。疲れた。

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まくらのキタムラ
北村圭介

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まくらのキタムラ 北村圭介
枕屋です。【元気な「おはよう!」を創る】を経営理念に、いつも枕のことばかり考えながら過ごしています。2011,2012,2016年グッドデザイン賞。また日本のものづくりを応援するNPOメイド・イン・ジャパン・プロジェクト 前代表理事。