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ISO感度を変えると写真のなにが変わるのかを、なるべくむずかしくなく語ってみた。(その2)

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さて、前回につづいてISO感度について。

長くなりすぎたのを半分ぐらいにわけているだけなので、ひとつ前の「その1」からお読みいただくのがよいと思う。

これも前回と同じで、記事自体は有料だけど、お金を払わなくても全部を読めるようになっている。

プロのライターとして書いた記事から収入を得たいというのと、なるべく多くの方に読んでもらいたいので、こういう形にしている(そのうちに気が変わるかもしれないけど)。

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ISO感度の1段は露出の1段

で、本題である。

もうおわかりだと思うが、ISO感度の1段は絞りやシャッタースピードの1段と同じ意味合いを持っている。

絞りやシャッタースピードが、フィルムや撮像センサーに当たる光の量を物理的に変える。これによって画素の受光部から得られる信号の強さが変わってくる。

たとえば、絞りを1段開ける、あるいはシャッタースピードを1段遅くすると受光部に当たる光の量は2倍になる。さっきの例で言えば「10個」だったのが「20個」に増えるわけだ。

それに対して、ISO感度を1段上げると信号を2倍に水増しする。もとは「10個」だったのが、やはり「20個」に増える。

というふうに、絞りの1段とシャッタースピードの1段、それからISO感度の1段が写真の明るさ=露出に与える影響は等しいのである。

なので、特定のシーンで絞りを1段絞ると撮像センサーに当たる光は半分に減る。ので、それぞれの画素から得られる信号も半分になる。ISO感度を1段上げると半分になった信号を2倍に水増しできる。ので、撮れる写真の明るさは同じままとなる。

ようするに、ISO感度も絞りやシャッタースピードと同じく、露出を左右する要素のひとつなわけだ。

違うのは、絞りやシャッタースピードは撮像センサーに当たる光の量を変えるだけなので画質には影響しないのに対して、ISO感度はカメラの中で信号の強さをいじる。そのせいで画質に影響が出るということだ。

ISO感度を変えるとなにが変わる?

ISO感度を上げたり下げたりするとどういう効果が生まれるか、というのを具体的に考えてみる。

まず、ISO感度を上げるとどうなるか?

明るさが同じであれば、ISO感度が高いほどシャッタースピードを速くできる。

その分、動きの速い被写体を止めて写せるようになるし、暗いシーンでもブレを減らせる。

スポーツを撮るときのほか、室内や夜間の撮影で高感度が必要となるのは、被写体の動きを止めてくっきり写せるからだし、手ブレを抑えられるからだ。

また、絞ったほうが解像力(=ものを克明に写せる能力)がよくなるレンズの場合、感度を上げた分だけ絞り込めるので、よりシャープな描写に仕上げられることもある。

それから、絞り込むことで被写界深度(厳密にはピンボケなんだけど、見た目としてはピントが合ってるように見える範囲)を広くできるメリットもある。

どこで撮ったのかを明確にしたい観光地での記念写真とかの場合は高感度のほうが便利ということになる。

次はISO感度を下げるとどうなるか?

こちらは高感度の逆で、シャッタースピードを遅くできる。

滝や渓流といった水の動きをシルキーなイメージに写したいときは意図的に遅いシャッタースピードで撮る。むしろ、NDフィルターというサングラスみたいな光を減少させるフィルターを使うぐらいなのだから、感度は低いほうが有利となる。

街の夜景で走る自動車のライトを光跡として撮るときもやはりシャッタースピードは長いほうがお得なので、暗いからといってそんなに高感度を使うことはない。

鉄道やモータースポーツの世界でよく使われる流し撮りのテクニックもシャッタースピードを遅くする必要があるので、感度は低めにするのが普通だ。

絞りについても高感度の逆となる。

明るいレンズで絞りを開けて撮りたいときは、高感度だとシャッタースピードをめいっぱい上げてもまだ足りないなんてこともある。

ので、うざい背景を整理したいポートレートや草花、小物などの撮影では感度は低めに設定する。

夏の砂浜や晴れた雪山などのすごく明るい条件では、感度は低いほうがありがたかったりする。

常用感度と拡張感度について

最近手に入れたばかりで自慢したくてしようがないパナソニックのフルサイズミラーレスカメラLUMIX DC-S5の場合、基準となる感度(ワタシは勝手に「ベース感度」と呼んでいる)はISO100で、設定できる上限の感度はISO51200となる。

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↑DC-S5のISO感度設定画面。初期設定の状態で選択できるのはISO100からISO51200となる。

この範囲のISO感度を「常用感度」と言ったりする。おおざっぱには「(そのメーカーが考えているところの)十分な画質が得られる感度の範囲」を指す。

これに対して「拡張感度」というのがある。こちらは、「画質的には難ありだけど、必要があれば使ってくださいね」みたいなオマケ領域と言える。

DC-S5ではメニューの「拡張ISO感度」を「ON」に切り替えると利用できる「H」付きまたは「L」付きの感度がそれだ。

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↑「拡張ISO感度」を「ON」に切り替えると、

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↑拡張感度が選択できるようになる。

常用感度の下限(基本的にはこれがベース感度である)のISO100より下、「L」付きとなるISO50からISO80までが低い側の、「H」付きとなるISO64000からISO204800までが高い側の拡張感度に当たる。

これは1/3段刻みのときの数字で、1段刻みのときは、低いほうはISO50のみ、高いほうはISO102400とISO204800のみとなる。

なお、メーカーによっては常用と拡張の区別がないこともあるし、区別できるだけ(常用とか拡張とかの言葉を使っていない)の場合もある。また、ニコンでは低いほうを「減感」、高いほうを「増感」というふうに使いわけていたりする。

感度を大きく上げ下げすると画質が落ちる

さて、前述のとおり、感度を上げることはカメラにとっては無理をすることなので、そのしわ寄せは画質にあらわれる(処理のスピードが遅くなる=時間がかかるようになるといった別のしわ寄せが出るケースもある)。

どうしてそうなるのかというメカニズム的な話はまた別の機会に書くとして、ここでは単純に感度の違いによる画質の違いを知っておいてもらいたい。

お見せするのはDC-S5で感度を変えて撮った画像だが、細かい部分を見たほうがわかりやすいので、画面の一部を切り取ったものを並べてみる。

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↑ISO100で撮った画面全体。これの中央やや左寄りの部分を切り出したものをごらんいただきたい。
※クリックすると拡大します。

ちなみにこのカメラはかなり高感度に強くて、ISO3200ぐらいまでは普通に使ってまったく不満は感じないレベル。

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↑ISO3200
※クリックすると拡大します。

ISO6400あたりから空などの平坦な部分にザラツキが出てくる。これが感度を上げることによるしわ寄せだ。

画像6

↑ISO6400
※クリックすると拡大します。

ISO12800になると画面全体にざらっとした感じが出てくる。

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↑ISO12800
※クリックすると拡大します。

ISO25600まで上げると拡大しなくてもノイズっぽさが強くなる。

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↑ISO25600
※クリックすると拡大します。

ISO51200から上は、「ああ、これはもう使いたくないなぁ」なレベルになる。それこそ写っていること自体に意味があるぐらいのシーンでなければ使おうとは思わない。

画像9

↑ISO51200
※クリックすると拡大します。

とまあ、ざっくりとだけれど、感度を上げるほど画質が悪くなるのはおわかりいただけたかと思う。

で、低いほうはどうかというのもごらんいただきたい。

ベース感度よりも低いほうはいきなり拡張領域となるのが普通で、範囲もだいたい1段分にかぎられる。

こちらはベース感度のISO100と低いほうの拡張感度であるISO50の比較。

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↑ISO100。画面左下の赤い看板にご注目いただきたい。
※クリックすると拡大します。

画像11

↑ISO50。看板の明るい部分が白飛びしていて、階調が残っている部分も色がおかしくなっている。
※クリックすると拡大します。

ISO100では色も階調も残っている明るい部分が、ISO50だと白飛びしているし、白飛びしかけている部分は色味がへんてこになってしまっている。

ただ、気になるのはここぐらいのものなので、画面全体を見ている分には問題なしとも言える。

また、カメラによっては低い側の拡張感度で撮ったほうがザラツキ感の少ない仕上がりになったりもするので、白飛びが起きにくいシーンではおいしく使える、

そのあたりはお使いのカメラで撮り比べてみて、じっくりチェックして判断していただくのがいちばんだと思う。

まとめ

長々しくあれこれ書いてしまったが、ISO感度についてとりあえず押さえておくべき点についてまとめた次第。

ISO感度を上げるとノイズが増える理屈や、逆に下げたときに白飛びが起きやすくなる理屈については回をあらためて書こうと思っている。

元気があればですけどね。


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