パープルタウン

道くんが「僕、パープルタウン大好き。」と言う。パープルタウンは我が家から一番近くにあるショッピングセンターだ。創業は81年で、施設内には映画館や飲食店、衣料品店、スーパー等が併設されている。アメリカっぽいものに憧れていた時代の名残がある施設だ。最近リニューアルされて、パープルタウンの出入り口には人工芝の広場がつくられた。道くんは広場で駆け回り、時々パープルタウン内のゲームセンターや100円で動く電車に乗って遊ぶ。2歳10ヶ月の心には、既にパープルタウンで過ごした楽しい記憶が刻まれているのか。そう思うと同時に、僕は「サンリブ」と「トーエイ」を思い出していた。サンリブは、北九州に住んでいた幼い頃によく連れて行ってもらったショッピングセンターで、トーエイは広島のじいちゃんばあちゃんちのそばにあるショッピングセンターのことだ。サンリブの真ん中にある広場には大きな時計があり、おもちゃの兵隊がその時計に連動して動く。キン消しの匂いが蘇る。トーエイはお年玉を握りしめて自転車を漕ぎながら感じる、陽の光を纏った冬の風を思い出させる。ミニ四駆のモーターに塗り込むオイルや乾電池の匂いと共に。サンリブもトーエイも、大人にとってはなんてことない施設だったのだろうが、僕には幸福を思い出すスイッチのような施設として心にずっと残っている。今でも好きだ。車内で道くんが「僕、パープルタウン大好き。」と言った時、道くんにとっての幸福スイッチがパープルタウンになったのだと思った。その瞬間、僕にとってもパープルタウンが特別な場所になった。そして、鳥取に住み始めて13年目にして初めて、鳥取に馴染めたような気がした。

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