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駆込み訴え/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.4.4-21.4.10)

申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。はい。厭な奴です。悪い人です。人というか、人じゃないね、人なら、人の心を持っているなら、あんなことは出来っこないからね。
……と太宰治コピペから始めたくなるようなニュースを毎週目にして、いいかげん心が麻痺しそうですが、そんななか、掛け値なしに酷いと思った記事をいくつか並べるところから今週はスタート(すみません太宰センセー、お出まし願っておいてナンですけど本日の出番はここまでです)。

病院にもいくら行きたいと言っても連れて行ってもらえない。苦しくて職員を呼んでも1時間、放置されたこともあった。
(3月6日に)名古屋入管で死んだスリランカ人の女の子も、こうやって死んでいったのかなと思うと涙が出てきます。かわいそうです。自分たちもいつ死ぬのかわからない。辛いと言えば、「じゃあ、どうしたらいいんですか」と冷たい返事が返ってくる。クラスターになったのはあなたたちのせいだとも言われた。
6歳になったころ、繁田さんは地元の法務局に相談に行った。しかし、素っ気ない言葉が返ってきたという。
「無国籍で何がダメなんですか。学校も行けるし、免許もとれますよ」
「借金はベトナムで仕事を探してどうにか返す。早く国に帰りたい。すみませんでした」。今年2月、配達員だった男は法廷で涙ながらにベトナム語でこう述べ、肩を震わせた。捜査関係者などによると、男は日本で金を稼ごうと、2018年10月に在留期間1年の技能実習生として日本にやって来た。渡航を手引きした人物に現金を支払う必要があったことから、多額の借金を抱えての来日だった。

最後のニュース、どんな悪いことをしたらこんなことを言わなければいけないのかと思うけど(思いません?)
「所持品検査で期限の切れた在留カードが見つかり、入管難民法違反(不法残留)容疑で現行犯逮捕」
「他人の在留カードの画像を自分のものと偽ってスマートフォンで送り、不正に配達員登録していたとして、電磁的記録不正作出・同供用容疑」
なんですよね。
そらね、罪に応じた罰は受けるべきでしょうがね、その上の記事2本と同様、人を人と思ってないよねえ。よりによって国が。という嘆息が出るんですよ。

困窮する外国人女性に国も自治体もなかなか動かない。しかし、12月下旬になり、入管から「手続きを進めたいので、マイさんに出頭してほしい」と支援者に連絡が入った。明言はなかったが、仮に在留資格が出れば、生活保護申請や健康保険加入への道が開ける。かすかな光が見えた。ただ、末期がんのため、医師はマイさんの出頭を止めた。すると、入管からの連絡が途絶えたまま越年。しびれを切らした長澤さんらが今年1月4日、「このままでは死んでしまう。なぜ早く在留資格を出さないのか」と抗議した。

■入管法改正案が提出されたタイミングなので、今週は入管法についての報道が多く、各メディアの記事を並べて読んでいたわけですが。

あえて「え、そんな感想?」みたいなことを申し上げるとすれば、せやろがいおじさんって訴求力あるのか問題。
訴求力というのは、彼/彼女の活動に好意的でない人にも、お。と手を止めさせるだけのパワーがあるのかという意味で、これは自分がYouTuberの影響力に不感症な世界に生きているからこそのオクレテル感想なのかもしれない、と思いながらも、たとえば次の事例と比べてみたい。

国家戦略特区における、これまた論外な話が東京新聞のスクープによって我々の知るところとなったわけですが、あまりに単独スクープなので他紙が追随せず、メディアとして追うのが1紙だけという状況。
にもかかわらず、国会で担当大臣が「報道は承知している」と答弁する事態になっている。これは、然るべき時に然るべき政治家を動かすことで、ムーブメントが起きた・わけです。
一方の入管法改正について事の重大さ、報道ボリュームの多さに比して世論を喚起できているとは思えないのは、なんというか、やり方が違うんだろうな? って感想なんですよ。
私自身は、いまでさえ問題多い入管の在り方をなしくずしに拡張する「改正案」には反対なので、どうすればええっちゅうねん。と嘆きこそすれ、他人事とは思っていないのですが。

無国籍者を支援するNPO法人「無国籍ネットワーク」(横浜市)をようやく探し当てた。娘と一緒に横浜に行き、国籍を取得するための手続きを始めた。「専門的な人につながらないと、たらい回し。もう何周もまわった。ここにたどり着く前に、人生でいろいろあきらめている人が多いんじゃないかな」

朝日新聞が始めた「無国籍」問題をとりあげた連載第1回、太字は引用者つまり私ですけど、そういう「然るべき人とつながらないとダメ」問題。これ、トピックにおけるインフルエンサーとは何ぞや問題と通底しているのではないか。
それこそ「車椅子の人が乗車拒否」の話のように、ゴウゴウ炎上しないと前にも後ろにも進まない社会って、21世紀まで培ってきた文明の甲斐が無さすぎると思うんだけどなー。

■ひとつひとつに何か言いたい記事は今週ほかにもいっぱいあるんですが、リンク先の紹介に留めます

■ただ次のローカル記事は、地味だし見出しもいかにも地方面なんですけど、どうしても紹介したい一節があって別扱い。

同校の進路指導主事、尾関清光教諭(39)は「生徒たちが正社員を目指す取り組みを進めている」。非正規で働く親の姿を見て、子どもも「それでいい」と思いがちという。だが、「最近は正社員を目指す生徒が多くなってきた」と話す。
日系人の事情に詳しい武蔵大のアンジェロ・イシ教授(移民研究)に外国人生徒向けの「キャリア教育」などについて聞いた。

――外国人の子どもが非正規の仕事に就く例が多いですが。

間違いなく非正規雇用者の再生産が進行していると感じる。「デカセギ」で来日した人の子どもの多くは苦労する親を見ている。だからと言って、「自分は非熟練労働や非正規雇用から抜け出そう」という方向には必ずしも向かない。「どんな仕事でもいい、稼げば親も楽になる、親の負担を軽くしたい」という意識が働くからだ。

日本国籍だろうと外国籍だろうと無国籍だろうと、ロールモデルが無い子どもたちは目指すべきところが分からない。
……他人事だろ、って思えます?

■最後に、「警察庁のまとめでわかった」という報道を目にしたときの違和感について。

これ警察庁の「報道発表資料」というところに行っても該当しそうな情報が無いんですよ。
「白書等」から辿って「令和2年版警察白書」に行って「第4章 組織犯罪対策」「第3節 来日外国人犯罪対策」まで行くと近いことが書いてはあるんですけど、でもそれじゃない。
「各部局から」「組織犯罪対策部」「組織犯罪対策に関する統計」の先、「令和2年における組織犯罪の情勢」、これか。
……っていちいち通信社なり新聞社なりがやってるわけがないので、供給された資料を写してるんだな、って理解に至るわけですが。

何が言いたいかというと、なんとなく年間の外国人犯罪件数を伝えられ、なんとなくベトナム人中国人と言及されると、ああはいはい、ベトナム人が増えて日本も危険になってきて嘆かわしいね。
と、短絡的なリアクションで知ったつもりになれる社会ですね、そのことを危惧するほうがいい気がしますね。そんなところです。

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