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熱しやすく冷めやすい/週刊「外国人就労関連ニュースまとめ」(21.6.6-21.6.12)

俺たちのことだが。

あれだけウィシュマさんウィシュマさん言ってたひとたちの大半が気を抜いてしまっている。それはまあある程度は仕方ない。と思う昨今ですが、油断大敵だと思ったのがフジテレビのニュースにあった一節。

国会で6月4日に行われた難民問題に関する議員懇談会で、事務局長の石川大我参議院議員は真相究明をあらためて訴え、監視カメラ映像の公開をこう求めた。
「名古屋入管にヒヤリングした際に、内規で映像には保存期間があることを示唆していた。まさか廃棄はしないと思うが引き続き情報公開を強く求めていく」

あ、これは入管消す気だな。
監視カメラ映像公開を焦点化する動きには反対してきた私ですが、それは大前提として「まさか消すとは思っていなかった」からでした。抵抗して結局あかるみに出て非難囂々。ってシナリオだと軽く考えていたところがある。なるほどそこまで腐ってるのなら話は違う。

政治家が言いそうなセリフで恐縮ですが、引き続き注視してまいります。

■入管まわりでちょっと話題になった「在留カード等読取アプリケーション」について

東京新聞が引用している法務大臣閣議後記者会見、令和3年6月8日(火)付に以下のようなやりとりがありますね。

【記者】在留カードの読取アプリについてお尋ねしたいと思っております。
昨年の12月に在留カードの読取アプリケーションの無料配布がスタートしたということですが、これは在留カードだったり特別永住者の証明書のICチップを読み取るものだと思います。
ただ、無料配布ということで、一般市民の方々がこれをダウンロードして相手の在留カードだったり証明書を読み取れるということで、一般市民の過度な干渉をあおるのではないかと改めて批判の声が上がっています。
その点について大臣の受け止めを伺えますでしょうか。

以下、「アプリが市民の監視をあおって人権侵害に当たるのではないか」「外国人、この人もしかして不法かなと思ったら、すぐ在留カードを見せてと...市民に外国人に対する監視の能力を持たせてしまう」「ホームページを含めて告知をして...ヘイトをあおってしまうかのようなアプリを入管として出してしまっている」と質問者として抱いている問題意識が表明されているのですが、この件については

・わざわざアプリをダウンロードしてわざわざ嫌がらせをする「市民」を想定していなかった、と責めるのは酷(業界を知っている人間が見たら、ああ、主たる利用者は行政書士だな、と思うものなので)
・とはいえカジュアルなヘイターが目につく昨今、広報の手法が迂闊な点は批判に値する
・それを言うなら在留資格を過大に扱う風潮が間違っている、という話をしようぜ

ぐらいが私のスタンスで、当該アプリの話が思ったほど盛り上がらないのは社会の反応としては真っ当だと思いました。

■在留資格を人間の証明みたいに扱うのをやめないか。と言いたい

あと、この記事も同じ角度から読みたいやつ。

過去の不法就労等外国人の態様は、不法残留や不法入国という、いわば単純な形態であったが、時代が変わるにつれ、その態様も大きく変化している。

不法就労等外国人対策の推進(改訂)」という公文書に、大きく変化しているとあるのですが、挙げられている例はこんな感じ。

・在留カードの偽造
・技人国の在留資格で単純労働
・難民認定申請の悪用
・技能実習生が失踪して働いている
・留学生が留学ビザ切れたまま働いている

それ全部「不法残留」として昔からあるやつ。
なんでこのタイミングで言い出した、ってうさんくさい目つきになって読んでいたら答えが書いてありました。

このような中,政府は,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて「世界一安全な国,日本」を創り上げることを目指している

つまり日本の都合。正直か。

■という流れで次のニュースも読む

不法残留で12年前に強制退去命令を受けた外国籍の家族5人が在留の特別許可を国に求めていた裁判で(中略)日本での不法滞在が続いたのは父母の責任だとした上で「長女は大学に次女は高校に進学し、日本への定着が高まっている。母国の言語はほとんど話せず、送還されると日本と同じような教育課程を修了するには相当な困難がある」として在留を特別に許可するよう国に命じました。
一方、両親と13歳の長男については特別な事情の変化はないとして1審と同じく訴えを退けました。

名古屋入管が最高裁まで持っていかないとも限らないし、13歳の長男はなんでじゃ。という思いもあるものの、感想を述べるには情報が断片的すぎるので、裁判所ホームページで一審の判決を探していたんですよ(見つけられなかったけど)。

そうすると、似たような事例が過去にあるんですね。そりゃそうか。
2010年12月9日付の日経新聞。

不法滞在の両親と、ペルー生まれの3人兄弟、日本で産まれた女子、合計6人家族が「出頭して日本での在留特別許可を求めたが、名古屋入管は09年1月、息子3人に1年間の在留特別許可を与える一方、両親と娘は強制退去処分とした」。
その判断は間違ってるよ、という判決を地裁が下した、という記事ですが、裁判所ホームページをうろうろしていて見つけた判決主文には、こんなことが。

仮に,名古屋入管が,原告父母に対し,速やかに退去強制を求めておれば,原告長女は日本で出生しておらず,現在のように日本でのみ幼少期を過ごすこともなかった。
確かに,原告らは,名古屋入管に出頭することが遅れたが,幼い子どもを抱えて生活をして行くのに必死であったことに加え,母国の状況も帰国できるようなものでなかったという酌むべき事情がある。
他方,名古屋入管は,長期間にわたり,原告父母の存在を知りながら,在留を放置又は黙認した背景には,上記酌むべき事情に対する配慮があったものと推測できる(もし,名古屋入管の怠慢で放置していたのであれば,強い非難に値する。)。
名古屋入管が放置又は黙認して形成された生活状況があるのに,原告らの落ち度のみを過去に遡って現時点で避難するのは,バランスに欠ける。
したがって,長期間の放置又は黙認を十分に斟酌していない本件各裁決は,妥当性を欠くものである。

思い出したいのは、バブル期の日本が不法滞在であることを承知したうえで、多くの外国人労働者を黙認してきた事実です。
そして、今になって「在留資格がない人間は人間でない」といわんばかりのメッセージが流通している事実。
バブル期のようにお目こぼしする社会へ戻ろう、と言いたいわけではなく、法が社会の実態と乖離してしまったのなら、そっちを変える発想が出てきていい。法を絶対視するあまり、人間をないがしろにする社会であってはならない。私はそう考えます。
まさに「在留カード等読取アプリケーション」のさらなる活用という話は、法の厳格な運用を促進する文脈で浮上してきたわけで、権力を持つ-と勘違いする-人間を放っておくと、平気で「法律が先/人間が後」そんな社会を目指してしまう。
こわいこわい。そういう今週の学び。

■ほかにもいろんなニュースがあったんだけどめっきり力尽きたのでリンクだけ貼っとくねパターン

最後の岐阜県のニュース、高齢者にひととおりワクチン打ち終わったら基礎疾患持ち、社会福祉施設従事者、教職員、消防職員、外国人を優先しよう。って内容で、日本人が先だろう、って一部のひとには評判悪そうですな。

クラスター(感染者集団)の発生が相次ぐ外国人に対しては、外国人に問診できる医療従事者や通訳を配置した「外国人県民枠」を設けることが適切とした

縫製業・製造業で多くの技能実習生を抱える自治体の発想としては正しいと思います。何度も言うようですけど、ウイルスは国籍を選ばない。人間より平等だから。

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