動物の歩行解析を簡単に ~FootStamp~
弊社には、KinemaTracerという歩行解析システムがあります。
こちらの製品は人や動物にマーカーを取り付けて歩行の様子を撮影して解析する、いわゆるモーションキャプチャのシステムです。
しかし、マーカを取り付けるという特性上、動物では計測しにくいというお声をいただくことがありました。
そこで新たに開発したのが、足裏解析システム「FootStamp」です!
今回はこのFootStampについてご紹介します。
(文:新人開発職 T)
■ 動物の歩行解析
薬学や医学の発展にはマウスやラットなどの動物を用いた実験が欠かせません。
これらの実験の中では様々な解析が行われていますが、その一つに歩行解析があります。
弊社製品のKinemaTracerでは、関節につけたマーカを認識するモーションキャプチャの仕組みで歩行解析を行っています。
▼ KinemaTracerの記事はこちら
しかし、動物(特にマウスなど)の場合
「小さな体にマーカを取りつけるだけで大変!」
「せっかくつけたマーカをかじって取っちゃったよ…」
「マーカを取り付けた足が体の下に入ってうまく解析できない!」
…というようなお声を頂くことがありました。
一方、マーカを使わない歩行解析としては、フットプリント分析という手法がありました。
この分析では動物の足裏にインクを塗り、紙の上を歩かせることによって歩行時の足跡を記録します。記録された足跡からは、歩幅や足の重複などがわかります。
しかしフットプリント分析にも、歩くまでに足裏のインクが乾いたり、インクが滲んだりすることにより、うまく記録が取れないといった問題がありました。
■ FootStampの概要
先述のような問題を解決するシステムとして開発されたのがFootStampです。FootStampでは動物の歩行を撮影する計測装置と、解析用のノートパソコンを使用します。
計測装置にはアクリル板を設置し、横方向から赤外光を入射させています。動物にはアクリル板の上を歩かせ、足裏がアクリル板に接地すると光が下方向に屈折します。
この屈折光を高解像度・ハイスピードのカメラで撮影することで、接地した足裏を記録することができます。
動物は歩くだけなので、非侵襲的で負担のない計測が可能です。
カメラで撮影した映像からAIにより足裏の接地箇所を検出し、さまざまなパラメータを算出します。
■ ここがすごいよ!FootStamp!
その1. 動物が動きやすい環境!
FootStampでは動物が動きやすくなるような工夫がいくつかされています。
計測装置は蓋を閉めるだけで外光が入らないようになっており、明るい室内でも暗環境を再現できます。これにより、夜行性のげっ歯類でも活発に運動させることができます。
また、付属の歩行路は回廊型を採用しており、直線の歩行路よりも動物が連続で動きやすい設計になっています。
その2. さかのぼり撮影機能!
FootStampでは「さかのぼり撮影」という手法を採用しております。
ドライブレコーダーが衝突の瞬間の数秒前までの記録をしているのと同様に、撮影ボタンを押した時点から数秒前までの動画を保存します。これによって、動物がうまく歩いた後に録画することができるので、撮影データを最小限で済ませることができます。
その3. AIによる足裏の自動検出!
足裏の特徴を学習したAIで自動的に足裏を検出し、フットプリント分析と同様の画像を自動作成します。
また、実際の歩行映像と見比べることができるというデジタルならではのメリットもあります。
■ どんなデータが取れるの?
FootStampでは様々なデータを取得できます。
1. 時間・距離因子
時間因子(歩行周期・立脚期・遊脚期)と距離因子(ストライド長)を自動で計算しています。画面にはバーグラフで表示され、左右差やばらつき具合を確認できます。
赤:右前肢、青:左前肢、橙:右後肢、緑:左後肢と色分けされており、違いが一目瞭然です。この色分けは他の部分でも共通で使用しています。
2. 足裏の面積変化
足裏の接地から離地までの面積変化を確認することができます。
基本的に前肢と後肢の足裏は後肢の方が大きいため、後肢の足裏面積が大きくなります。
下のグラフを見ると左後肢に比べて右後肢の接地面積が小さくなっていることが確認でき、右後肢に痛みを感じているのではないか、などの考察ができます。
3. 足の向き・進路
AIで足の向きを自動で測定し、動物の進行方向を確認することができます。
白線が前肢の軌跡、緑線が後肢の軌跡を表しており、歩行中の蛇行の様子なども確認できます。
他にも、任意の2点間の距離や、角度も計算できます。数値データはいずれもCSVで出力することができます。
■ Q&A
Q. AI検出の結果は編集できるの?
A. できます。
AI検出の結果、接地・離地のタイミングや向きにズレが生じた場合に、編集画面で確認・修正ができます。
Q. どんな形式でデータ出力できるの?
A. AIで検出した足裏の静止画(.bmp)や動画(.avi, .mp4)、様々なパラメータをCSV出力することができます。
静止画や動画は学会発表や論文にそのまま用いることができます。また、CSVで出力されたパラメータはExcelなどを用いることで二次利用することが可能です。
まとめ
今回は動物の歩行解析システム「FootStamp」について紹介しました。
従来のインクを用いた分析をデジタル化し、より簡便な計測を実現しました。
今後はさらに、撮影の自動化やAI検出の精度向上を目指しています。
他にも、歩行分析以外の分野への応用もできないか検討を進めています。
「こんなことに使えないか」というようなご意見・ご要望がありましたら、ぜひ一度ご相談ください!
今回ご紹介した製品
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