ランニング中の呼吸を計測してみた
今回は「ランニング中の呼吸計測」に関する記事です。
弊社が輸入販売する呼吸と心電が計測できるウェアラブルセンサー HEXOSKIN(ヘキソスキン)を着て信州スカイパークの周回コースを走り、その間の呼吸を計測してみました。
ランニングのようにダイナミックな動きの中で呼吸計測がどこまで可能なのか、気になるところです。果たしてうまく計測できるでしょうか?!
(文:営業職 社員T)
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以前、HEXOSKIN(ヘキソスキン)の姉妹製品である ASTROSKIN(アストロスキン)を着て、ランニング中の「心電図・血圧・SpO2」を計測したことがありました。興味があればご覧ください。
■ HEXOSKINとは
HEXOSKINは、ASTROSKINと同じカナダのメーカー(Carré Technologies inc.)が開発・販売している着るタイプの生体信号計測装置です。
HEXOSKINで計測・算出できるデータは以下の通り。
・心電図、心拍数、R-R間隔
・呼吸、呼吸率、呼吸量(推定値)
・加速度、活動量、歩数、ケイデンス
*太字は生データとして計測可能な項目。
*その他は生データを基に算出可能な指標。
各センサがひろったデータをシャツの中を通っているケーブルで集め、ロガー内部のメモリに記録するという仕組みです。バッテリ駆動で30時間の計測が行えます。
ロガーが軽く小さいため(サイズ:41 x 73 x 13mm、重さ:40g)、運動中にその存在が気になることはありません。
本記事の主役となる呼吸センサはRIP(インダクタンス式 呼吸プレチスモグラフィセンサ)という仕組みを採用しており、簡単に言うと胸部と腹部をそれぞれ一周するバンド型センサによって、呼吸運動に伴う体表面の伸び縮みを測っています。
■ 計測準備
計測の準備はとても簡単です。
HEXOSKINのシャツを着て、シャツから出ているケーブルをロガーに繋ぐだけで計測がスタートします。
呼吸計測は胸部・腹部の伸び縮みを計測しますので、できるだけ体にフィットしたサイズのシャツを着ることがポイントとなります。
(ちなみに、心電図を計測しないのであればシャツの下にアンダーウェア等を着ても問題ありません)
■ 計測結果
前回と同様に、信州スカイパークの約9㎞のコースを1周しました。
その結果、計測されたデータが次の図になります。
上から、胸部の呼吸、腹部の呼吸、加速度(上下方向)です。
スタート地点から25分ほど走り、クールダウン区間で10分ほどゆっくり歩いた後、再びゴールまで走っているデータになります。
横軸のスケールを調整して、データを拡大してみましょう。
胸部の波形は呼吸と思われる頻度で波が上下しています。
一方で腹部には胸部よりも高頻度で上下している成分があります。
これについては「着地時の揺れ」が影響してしまっていると推察できます。
私はランニング中、「吸う↑、吸う↑、吐く↓、吐く↓」というようなリズムで呼吸をしており、かつ、「吸う」「吐く」のタイミング全てで足を地面に接地させているため、1呼吸あたり4回ほどの頻度で着地することになります。
上のグラフにはその様子が表れているように感じました。
■ フィルターでアーチファクト除去
「呼吸の周期」と「その中での着地のタイミング」は、どちらも規則的で周期が異なりますので、デジタルフィルターで切り分けることが出来そうです。
次の図は、HEXOSKINと一緒に購入して頂くことが多い「心拍変動解析プログラム BIMUTAS-Video for ECG」で 先ほどのグラフに"2Hzのローパスフィルター”をかけた状態です。
いかがでしょうか?
呼吸よりも高頻度の成分をローパスフィルタによって除いてみました。
腹部の波形が先ほどとはかなり変わって見えますね。
果たしてこの波形は呼吸データと言ってよいのでしょうか?
分かりづらいので、今度はBIMUTAS-Video for ECGで、①デジタルフィルターを掛けたデータと②掛けていないデータを重ねて表示してみます。BIMUTAS-Video for ECGでは、最大4つまでのデータを同時に開くことができ、次の図のように同じデータ項目を色分けして重ね描きができます。
青がローパスフィルターなし、赤がありのデータです。
重ね描きすることで、アーチファクト(着地によるノイズ)がうまく取り除けて呼吸のデータを取り出せていることが分りますね。
■ もっと速く走ったらどうなる!?
どうやらHEXOSKINはランニング中の呼吸の計測には十分に使えそうです。(もちろん、50歳を目前に控える中年オヤジの走りだけでは結論を出すことは難しいですが…)。
ちなみに、もっと速く走ったらどうなるかを確かめるために、短時間ではありますができるだけ速く走ったときのデータも示します。頑張っても1分間程度しか続けられないスピードで走ってみました。
結果は同じでした。しっかりと呼吸データが取り出せています。
是非次は、「トップアスリートの走りでも同じように走行中の呼吸が計測できるのか!?」にトライしてみたいと考えています。
ご協力を頂ける方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡ください!
■ まとめ
今回は、弊社が輸入販売するウェアラブルセンサーHEXOSKINを用いて、ランニング中の呼吸を計測してみました。
結果として、ソフトウェアによる波形処理を組み合わせることで呼吸データだけを取り出せそうだということが分かりました。
走る動作はある程度規則的な運動であるため、うまく呼吸由来の波形だけを取り出すことができたのではないかと考えています。
このことから、マラソンや長距離走、短距離走、もしかすると自転車競技、競馬・馬術などでもトレーニング時にこのHEXOSKINを呼吸法の評価などで活用してもらえるのではないかと考えております。
皆様のお問い合わせをお待ちしております。
■ 今回使用した製品
○ウェアラブル心電・呼吸・加速度センサー HEXOSKIN
https://www.kicnet.co.jp/solutions/biosignal/humans/biosignal-2/hexoskin/
○心拍変動解析プログラム BIMUTAS-Video for ECG
https://www.kicnet.co.jp/solutions/biosignal/humans/biosignal/bimutas-video-for-ecg/