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空白が連鎖する the 連鎖show

ある日、クイズ番組をみていたら、
「端午の節句にたべるのは何餅?」という問題に、
「桜餅」と答えたタレントがいて、
えーそんなことも知らないの…とおもったけど、
もし、その人が育ってきた家庭に、そういう文化がなかったら、
5月5日に柏餅をたべるという習慣を教えられていなかったら、
知りようがないよなぁ。

またあるとき、お気に入りのフレンチレストラン(ミシュランでビブグルマン認定!)のシェフは、
「サイゼリヤのスパゲティしかたべたことのない人は、それが最高だとおもってしまう。
あるいは、回転寿司のウニしかたべたことのない人は、ウニって不味いものだとおもってしまう」
と話していた。
たしかにわたしも、その昔、ウニって苦いような甘いようなヘンな味だとおもっていたけど、
いいお寿司屋さんでいいウニをいただいて、本物のウニはあまくておいしいんだと知った。

文化のある家庭に育つこと。
本物を知る機会を与えられること。
それはじつは、恵まれた環境であるのだな。

以前、ある男の子が、
「お母さんが晩ごはんにマクドナルド買ってきた」
と言っているのを聞いて、びっくりしたことがある。
親が子の晩ごはんにマクドを与える・・・?
出来合いのものを買ってくるにしても、わたしだったらお弁当にするわ…。
でも、彼の家庭において、それは異常でも不思議でも何でもないことなのだろう。

わたしはいま、がんばって夕食をつくっているけど、
それは、自分の母親がそうしていたからだ。
母は、マクドはもちろん、出来合いの惣菜も滅多に買ってこなかった。自分できちんと料理していた。
わたしにはその文化がある。だから料理をする。
メニューにしても、野菜スープや豆のサラダ、ひじきの煮物など、
きがつけば母が作ってくれたようなものをつくっている。
「豆は体にいいのよ」「海藻もたくさんたべてね」と母に言われていたことを、
今度は自分が同居人に向かって言っている。

いま、わたしが煮干しで出汁をとって味噌汁をつくっている一方で、
くだんの彼は、自分の子にマクドナルドを与えているかもしれない…。

各家庭の生活の次元は、かなりの確率で子に受け継がれていくだろう。
だって知らないものは教えられない。自分の知っている範囲でしか伝承できない。
端午の節句を知らない家、
カッペリーニやリングイネをたべたことがない家、
ミョウバン味のウニしか知らない家、
晩ごはんをハンバーガーで済ませる家……。

先日、国産松茸をいただいた夜のごはん。
炊飯器から立ち上る蒸気がすでにごちそう。いい香り!
家で松茸ごはんを炊くなんて、WORLD家にはなかった文化。新たにもたらされた文化。
人と人が交じり合うことで、あたらしい文化に触れられる可能性は、ある。


(『凛として世界』2013/11/18 記事 再掲)

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