キソキソ話 第三回~上野勇希編その③~
ズンドコサプライズ
木曽:さぁ充実した練習生生活を過ごしつつ、遂にデビューするわけですけど。
デビューはいつですか?
上野:2016年の10月19日ですね。
2016年、5年前!
はい。
ちなみに「デビューするよ」みたいのはどんな形で伝えられたの?
あの~、まず僕は発表されたのが春日部大会の休憩中だったんですけど。
高木さんとかがデビューさせようってのを決めてくれて、(団体が)サプライズ好きなんで、まぁ勿論何にも聞いてないですけど。
みんなもなんとなく言わないんですけど。
はいはい。
でもそのサプライズの箝口令が甘すぎて(笑)
まぁこれはDDTあるあるなんですけど、ちょこちょこ会う人会う人に「聞いたか?」って聞かれるんですよ。
アハハ
「なんか聞いた?」みたいなね。
「今日聞いた?」とか。あれ~?と思いつつも『いや、聞いてないです』と答えると「じゃあいいや」って(笑)
そんな事ないんですよ。練習生が色んな人に「今日聞いた?」って聞かれる事って。
これはまさか…?しかもなんとなく環境的にもどんどんデビューが近づいてる様な感覚もやっぱりあったんで。
体感的にね?
やっぱり練習もどんどん高度になってくるし。
はい、より実戦に近い練習をしていたんで。
大雑把に言えば、基礎体とかマット運動しかしていなかったのが、練習試合みたいなところまで来るわけですね?
だからまぁみんながコソコソっとやってくるやつですね。
それでなんとなく感付くというか。
その~、そんなにアホじゃないんで(笑)
まぁそれでもサプライズという形で春日部大会で。
直接は言われずに、休憩中に「リングに上がれ」と言われてデビューですよと。
はい。
「何か聞いた?」って聞かれたらそりゃ何かあるなって思うよね、普通は。
そうなんですよね、何にせよ基本的にはポジティブなものだと思うんですよね。言い方とかでも。
練習生が会場で二人にも三人にも言われる事ってもはやデビューしかないと思うんですよね。
逆パターンも見たけどね。
練習生に先輩が「まぁあんま気にすんなよ」「プロレス団体は一個じゃないしみんながみんなデビュー出来る訳じゃないから」とか言っといて、その日にデビューを告げられるみたいなね。
お~!
みたいなパターンもあるけど、いつもみたいにサプライズだと思ってドッキリ仕掛けたら本人はもう知ってて「は?」みたいな顔されてる人もいた(笑)
アハハ
いよいよデビュー!相手は若手最強の男
ちなみに言われてからデビューまではどれくらいの期間が?
僕は二ヶ月…どれくらいだったかな?
一ヶ月半とか二ヶ月なかったですねぇ。
デビューが十月ですよね?言われたのが八月とか九月かな?
恐らくタイミングもあったんですよね、DNAの先輩たちの怪我が続いたりして。
やっぱこう練習生をいつでもデビュー出来る状態に仕上げて、良きタイミングでデビューさせるって感じが多いと思うんですけど。
そんな中でDNAがリーグ戦をやるって話があって、それが一つのタイミングだったんじゃないかなぁと。
やっぱりその、運て言うのも凄く大事だなぁと思いましたね。
まぁそれはあるよね。
はい、やっぱりデビューのタイミングとかも凄く良かったのかなぁと思います。
なんでデビュー戦は五連戦!
リーグ戦、あの新宿FACEですね?
はい、新宿FACEで五連戦でした。
いいねぇ、恵まれてるねぇ!
そうですね。
でも無我夢中過ぎて、あの~何とか走り切りましたけどよく分からなかったですね(笑)
やっぱ大阪から親が駆け付けたとかあるんですか?
ありますあります!えっと~僕は母と兄がデビュー戦は来てくれましたし。
咲くやこの花高校の体操部の同期の子も先輩も来てくれたりしましたね。
東京まで!
東京まで来てくれましたねぇ。
凄いねぇ!
まぁでも五連戦なんで全然お祝いとかは出来なかったんですけど。
相手は?
樋口さんです、樋口和貞。
しんど…
いや~当時からもうDNA最強!樋口和貞でしたねぇ。
リーグ戦なんで総当たり戦とはいえ初戦から樋口さんとやって。
まぁまさに「胸を借りる」とはこの事だなと。
もう自分の出せるものを出し切って。
当たって砕けろみたいな…
黒パンに隠された秘密
いや~でもまぁこの練習生からデビューする時も入門テストの一発芸の時の精神と同じですね。僕なんか別に特別な取り柄も無いんで。
普通のコスチュームにしちゃおうかなぁ~って思って、坊主に黒パンにするっていう。
はいはい、DDTでは珍しいね。
坊主に黒パン。
逆にこう(誰も)いないからいいなっていう。
抜け穴を(笑)
最近で見ても黒パンで試合したの高木さんと樋口と岡田君しかいないからね。
自分でもそんなにピョンピョン飛んだりしたかったわけではないというか、限界があるなぁと思っていたんで。
やっぱ器械体操しててもっともっと飛んでる人見てて、遠藤さんも凄かったし。
自分のやれるところはそこじゃないんだろうなって思って。
まずはこう「地に足着けてやっていきたいなぁ」って思ったのがきっかけで黒パンで。
なるほど!
いかにも新人みたいなところでしっかりしていこうというね。
そこもやっぱり「竹下の同級生」ってのが出るんで。
なかなかこう、穿った見られ方もするんだろうなってのは本当に思ってたし。
身体もまだまだ全然細かったんで急がず、自分はまだまだここからやっていくんだぞ!って気持ちを込めての坊主にもして。
むしろ黒パンでっていう事でコスチュームはそれでお願いしましたね。
意外とこうデビューするに当たって真面目になりましたね。
アハハ
今までの話だとね。若干ヤベー奴だなみたいな。
いやいやいや!そんな事ないですよ。
練習生の頃だってそりゃ楽しい事もありましたけど、きちんと積み重ねてましたから。
デビュー戦でいきなり味わったプロレスの魅力と活きていた高校の教え
まぁ真面目は真面目だなってのは最初から思ってましたけどね。
ちなみにデビューしてみてどうだったんですか?
まぁ言うても実際に試合するまで何にも分からないわけじゃないですか?
まぁそうですね。
本当に凄いのは、チョップとか痛いんですけど痛くないというか。
直ぐに消えるんですよね、衝撃そのままに。
痛いとか心が折れそうとか全然無い。
え!痛くないの?
いや、めちゃくちゃ痛いです(笑)
でも試合中は全然痛くないと思い込むんですかね、それは今でもそうなんですけど。
人の前で試合をして自分が応援されたり敵対視されたり、色々な人の目の前に立つっていうのはもの凄い作用があって。
痛いのに、痛くない、痛くないはずなのに動けないみたいな。
脳みその不思議みたいのを凄い感じましたね。
アドレナリンみたいのが出つつ…
もうドバドバ出てて、ホント不思議で。
身体は動かなくなっていくしでもまだまだ戦っていたいし。
プロレスラーってみんなプロレスが好きで辞められないって言ってる人が非常に多くて。
それをデビュー戦で!
あぁ、こういう事かと。
はい、いきなり感じましたね。
ちなみにこう入場する前とか「緊張して吐きそう」とか「泣いちゃいそう」みたいのは無かったんですか?
あ、全然無かったですね。
緊張も無かったですね。
なんか「緊張してると思わないようにしてる」のもあると思うんですけど。
自分で?
はい。なんか緊張してるって思わなかったら、それに自分が気付かなかったら緊張が無くなっていくみたいな事を考えてましたね。
それはもう哲学的な話みたいになってきたけど。
やっぱこう、(緊張に)気付かないふりをするっていうのを意識してたら…
それは器械体操の時からもう同じで。
器械体操も限られた時間とか動き、鉄棒も床も色々ある中で緊張して委縮しちゃうと動きも小さくなっちゃうし。
だからその当時からヘラヘラしてましたねぇ。
自分自身を緊張させない為にね?
そうです!
ちなみにね、デビュー一年目の竹下もね、全然緊張してなくてね。
16歳の竹ちゃんに33歳のおっさんが「木曽さん緊張してるんですか?」なんて言われちゃって(笑)
生意気な野郎だな(笑)
生意気だなぁ!
咲くやこの花高校の校風かもしれないよ?
あ、でも確かにアスリート高校ではあるんで自分のメンタル的なものの持って行き方っていうのは、誰に聞いたか忘れましたけど受け継がれてたのはあるかもしれないですね。
先輩なり監督なりにこう、スポーツ心理学的なアプローチね?
はい、メンタルの持って行き方というかベストパフォーマンスを発揮するって事に関して、それは繋がっているんだなって思いますね。
やっぱ人生は繋がるねぇ!
そうですね(笑)
つづく
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