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動く建築で、人に会いに行く

先にアップした記事「来双船の緊急事態宣言」の内容を、広島にある建築設計事務所studio KANROの内野康平さんに相談をさせていただきました。
彼とは昨年の5月に種子島で初めて出会ったんですが、おもしろい方だったのでインタビューをさせていただき記事にしています。

きっとおもしろい話が聞けるかも、他の人も聞きたいかも、と
インスタライブという流行りの形をとりました。(5月半ば)
今回の記事はその簡単なまとめとします。

敦子(私です。以下A)「お久しぶりなのにこんなところにひっぱり出してすみません笑」

内野さん(以下U)「いえいえ・・・笑」

内野さんは6月から文化庁『新進芸術家海外研修制度』美術分野調査員としてアフリカ・セネガルで進める 『クルイサ村集会所リノベーションプロジェクト』 での活動が決まっていたのですが、新型コロナの影響で延期になり現在広島にいらっしゃいます。

U「(セネガル行きが決まっていたので)日本での仕事をどうしよう…ってなったときに、今まで1〜2年間田舎の方に移住することを悩んでいた方々が一気に話を進めたい、走り出したいというご相談を受けたりしました。もう街にいても仕方がないと(定年を迎えた方々だったため)」

A「そうですよね、定年を迎えていなくても若い年代でもそう考える人は増えていると思うし、実際もう動きが始まってますよね。だからというわけではないけど、地方に目を向けている人に向けての情報発信をしたい、と思った時にまず来る人とすでにそこに住んでいる人の関係のことを考えたんです。そこですぐに内野さんが浮かんで相談をしたいなあって思って」

U「あずまやの話になるんですが、コロナ以降1〜2か月ほど貸して欲しいと10件近く問い合わせがあったんですが、オンラインで面談を希望したところぱったり連絡が取れなくなったということがありました。
まずは真っ先に、あずまやのまわりの人のことを考えないといけないと思ったんです。
この、今のタイミングで長期滞在っていうのは現地の人たちも気が気でないだろうし。」

この話は全国に緊急事態宣言が出ている最中の事です。その前から種子島は渡航自粛を出していました。
しかし、今は規制がゆるくなってきているのでおそらく夏には一気に人の動きが出てくるかもしれません。

関係人口という言葉があります。総務省によると、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。

それって・・・内野さんです!
記事にも書いていますが、広島と福岡と種子島に事務所があります。福岡はスナックが事務所です(一晩だけママやってみたい・・・あはっ)

A「かなり理想的なような気がするんですが、実際どうです?メンタル的なところも含めて」

U「最初の1年は割としんどかったです。笑
広島と福岡は事務所が街中なので、種子島だけ雰囲気がすごい掛け離れるので、スイッチの切り替えが難しくて、最初の2日はなかなか適応ができなかったり。
今度は帰るのはつらくて・・・種子島がすごいゆっくりだから、笑。
広島に帰るのは戦いに行く感じだったんですけど、半年1年続けると境界がなくなった。 今はどこにいっても割とフラットです。」

A「拠点が3ヶ所あるってやっぱすごいじゃないですか、たぶんこれからそんな人は増えると思うんだけど、内野さんは移動がしたいんですか?」

U「”人に会いたいんです”
新型コロナのことがあってから、賃貸でオフィスを借りるリスクっていうのを考えています。今、広島の事務所はいろんな職種の人とシェアしているんですが、自分も現場に行くことが多くている時間が少ないのであり方を変えようと思っています。

そこで、今、考えているのが移動型オフィス
軽トラックの荷台にオフィスを作って移動するんです。」

A「なるほど!!!すごくいい!(軽トラックの荷台に部屋というか家を作って移動して生活している人がいるとテレビで見たことがある)」

U「建築士でそれをやってる人っていないと思うんですが、
”動く建築” 
っていうのを大工さんと話してるんですよ。
自分の事務所を各地に持っていけるじゃないですか。」

内野さんはいつも発想が”自分の楽しみ”から出てきているような気がする。

U「笑、はい。これ、、、話逸れるんですけどね、いろいろ移動して
朝、釣りをして、昼間仕事をして、晩飯作って帰る。ってできたらいいなあって」

きっと誰もがうらやむような生活かもしれない。
けど、きっと人の営みとは元々いまほどパッツンパッツンではなかったはず。もっと自然界に対して平行に、というか自然の動きと共にあったんじゃないでしょうか。
内野さんの言う、”朝、釣りをして、昼間仕事をして、晩飯作って帰る”
は、普通に戻ろうよって言ってるように私には聞こえてウンウンと深く頷きました。

A「話しは変わるけど、現地の方々とどうやって距離を縮めて行ったんですか?まあ内野さんの人柄もあるだろうけど・・・。」

U「あずまやを作ることに現地の方々からはめちゃくちゃ反対されていました。外国人が来たらどうするの?都会の言葉は自分たちは話せない、とか。ここに宿泊施設を作るなんてお金のムダ・・・という心配も含めて。
なので説明会を何度も開いて不安を払拭して、種子島に行くたびにもみじ饅頭を持って挨拶まわりをして、ということをひたすら続けて。
そうするうちに、なんか若いあんちゃんががんばってるよって認知してもらえて。笑」

A「えー!そうだったんですか・・・。徐々に時間をかけて関係性を作っていった感じですね」

U「1年…半くらいなかな?時間はかかりました。苦笑」

うわー、、、私は・・・そこまでたぶんできないかも。

話を関係人口に戻します。

U「関係人口のいいところって、
そこの土地にどっぷりつからなくていいところがあるかなと思ってます。
そのことが、逆に関係性作りやすいっていうこともあるんじゃないかと。
たとえば3ヶ月に1回通うとします。となりのおじいさんおばあさんに
おみやげもって会話したら、”あ、あの人いい人だったねえ”
で終われる関係性もある。
みんながみんな合うわけでもないしなあ、って。」

確かに・・・
各地にいろんな関係性があってもいい。心地いい距離感があるはず。
必ずしも密になる必要もない。
”あの人、風のようにやってきて風のように去って行ったねー”
でもいいかもしれない。(実際に言われたことがある私、笑)

話題を”発信”のことに。
A「あずまやはどうやって広めたんですか?」

U「広めようって意識はあまりなかったんです。
今みたいにインスタもやっていなくて、結果的にクラウドファンディングでたくさんの人に知ってもらえたんですが。
建築を作る立場からすると、かっこつけすぎて、すごいもんができあがるっていう方法のアピールをした時にガッカリされるっていうのがいやなんです。できあがったものを見て・体験してもらって、結果論でどんどん広まっていけばいいなと思ってました」

すごく説得力ある言葉。メモメモ・・・

最後にすごくグッときた、内野さんの言葉で締めます。

U「今まで田舎の土地ってほぼ価値がなかったけど、
そこに行きたい人も今後増えるから、価値はあがってないけど
需要は増える。・・・そうなるといいですよね。」

さらーっとさわーっと彼は言ったけど、核心をついてるなと思いました。実際に動いている人の言葉は強い。私も動きますよ、内野さんと何かコラボできるように。

今、一気にオンラインの対面コミュニケーションが増えてきたけど、やはり私も”人に会いたい”と思います。その人に会ったときに、あふれ出てくる言葉にならない何かっていう感じも”発信”だと思うので。




いただいたサポートはこれからも来双船がよい出会いができるよう、心から感謝しながら使わせていただきます!