1年「二わのことり」【友情、信頼】の指導案はこうする!
こんにちは。
今日は『1年「二わのことり」【友情、信頼】の指導案はこうする!』
このテーマで教材解説をします。
今日解説する「二わのことり」は、
いわゆる定番教材です。
定番教材は、長年教科書に掲載され続けていて、
たくさんの実践がある教材です。
なぜ定番教材は定番なのか。
それは、道徳的価値が多い、もしくは深いものが多いからです。
考えれば考えるほど、まるでスルメのように味が出てきます。
定番教材だからといって恐れることはありません。
あなただけの視点を見つけて、教材を研究していきましょう!
今日の記事は、自分だけの視点を見つけるヒントになりますよ。
では、解説です!
1 教材について
2 内容項目と教材
3 導入
4 発問
5 まとめ
順番に解説します。
1 教材について
B 主として人との関わりに関すること
「友情、信頼」
1・2年の目標・・・・友達と仲よくし、助け合うこと。
1年生「二わのことり」(日本文教出版)
あらすじ
みそさざいは、やまがらの家とうぐいすの家、両方に誘われていました。
やまがらの家では誕生日のお祝い。
うぐいすの家では音楽界の練習があります。
やまがらの家は山奥のさびしいところにあります。
うぐいすの家は近くの明るいところにあります。
みんな、うぐいすの家に行きました。
みそさざいはどちらに行くか迷いましたが、うぐいすの家に行きました。
しかし、うぐいすの家にいても全然楽しくありません。
みそさざいは途中でうぐいすの家を抜け出し、やまがらの家へ行きました。
やまがらはうれしそうで、目にはうっすらと涙が見えました。
2 内容項目と教材
定番教材は、多くの切り口があります。
その分、「それは本当に道徳的価値に迫っている活動なのか。」と立ち止まって考えたいものもあります。
まずは、【やってはいけない活動】を2つ紹介します。
【やってはいけない活動①】
望ましい行動を考える
これは、道徳でよくあるものです。
意識していても、行動について考えていることがあるから、要注意です。
例えば、「みそさざいはどんな行動をすれば、うぐいすもやまがらも喜んだだろう。」と発問をします。
それに対して子どもたちは答えます。
「みんなでやまがらの家に行って、歌の練習もすればいい。」
「やまがらがうぐいすの家に来ればいい。」
はい、アウトです。
まず、そもそも発問がよくないです。
「うぐいすもやまがらも喜ばせるための行動」を探す発問です。
そんな八方美人のようなことを強要し、そのアイディアを募集する。
子どもたちに、「八方美人になりなさい。」と言っているようなものです。
それに、子どもたちはアイディアを発表しますが、「○○の時は●●すればいい」という方法論は、道徳的価値と関係ありません。
むしろ、全く意味がありません。
例えば、登山を思い浮かべてください。
「熊に遭遇したら死んだふりをすればいい」という通説があります。
実際に熊に遭遇したら、逃げられる道もあるし、助けを呼ぶスマホももっているし、隠れる場所もあるのに、
「死んだふりをすればいい」という方法しか知らなかったら、目の前で倒れて死んだふりをするしかありません。
そんな命知らずなこと、本当にしますか?
方法論は、道徳で語ることは全く無意味です。
顔で笑って心で泣く、なんてことはよくあります。
笑顔で人を騙す詐欺師もいます。
みそさざいや他の小鳥の正しい行動を探すことは、時間のムダなので、絶対にしないようにしましょう。
【やってはいけない活動②】
教材を区切って提示する
これもよくある活動です。
活動というか、教材提示の工夫ですね。
「二わのことり」では、みそさざいがうぐいすの家に行って、
「全然楽しくない」と感じているところで区切り、
「このあとみそさざいはどうしたでしょう。」と聞くのがよくある実践です。
はっきり言います。
この活動は全く意味がありません。
なぜか。
区切って先を予想することは、道徳的価値に迫っているようで、建前を引き出すための策でしかないからです。
うぐいすの家で「楽しくない」と思っているみそさざい。
だったら次は、やまがらの家に行くだろう、と子どもなら誰しも予想がつきます。
だって、教科書はそんな流れが一般的だから。
それに道徳だから、いい話にならないとおかしいから。
そんな風に思って、「やまがらの家に行ったと思う」と言うわけです。
それは、みそさざいの気持ちになって発した言葉ではなく、
教科書の流れを読み取った推測です。
「うぐいすの家にそのままいたと思う」なんて発言をする勇気ある子はいないでしょう。
「空気を読まない子」とみんなから思われるのはいやですからね。
そして、続きの教材を提示した時、どうしても「(予想が)当たった!」「外れた!」という思考になります。
その思考は、道徳で必要でしょうか?
当たったか外れたかはどうでもよくて、なぜその行為をしたのか、心の奥の奥を考えることが大切なのです。
「それでも私は区切ります」と言う人がいます。
それを止める権利はないのですが、最後にもう1つお伝えします。
区切ると、「どうなったでしょう。」と予想させる発問やそれに対する意見がたくさん出てくるので、授業は活発になったように見えます。
つまり、「工夫して授業を作っている錯覚」におちいります。
でもそれは、上述したとおり、道徳的価値の本質的な部分には向かっていないことが往々にしてあります。
子どもがたくさん発表する授業がいい授業ではありません。
子どもがたくさん思考する授業がいい授業なのです。
話がだいぶそれました。
ということで、【やってはいけない活動】を2つ紹介しました。
では、内容項目について考えます。
「友情、信頼」
この内容項目は、順番に意味があります。
友情が先にありますね。
広辞苑で意味を調べると、
友情・・・友達の間の情愛
信頼・・・信じて頼りにすること
とあります。
例えば,道を歩いている人にいきなり住所などの個人情報を伝えることはできますか?
きっとほとんどの人が「できない」と答えるでしょう。
「何で教えないといけないの?」
「どこにばらされるか分からない。」
「そもそも,だれ?」
それらは「信頼」という基礎が、人間関係の中にできていないからです。
つまり友情がないと、信頼もできないのです。
では「友情」とは何でしょう。
広辞苑の意味の通り、「友達との情愛」略して「友情」なのです。
では、情愛とはなんでしょうか。
再び広辞苑で調べると、
情愛・・・情け、いつくしみ、愛情
とあります。
・友達が困っているから助る
・友達の気持ちに共感する
・友達に対して好感をもつ
これらのことを数十回、数百回くり返して、「友情」と呼べる関係ができあがるのです。
その過程の中では、自己開示が必ず必要です。
自分のことをさらけ出したり、本音を言い合ったりして、関係が深まっていくのです。
そうしてできた「友情」があるから、初めて次の「信頼」が成り立つのです。
教材研究の場面では、
①「友情」か「信頼」か、どちらに重きを置いているのか考える。
②例えば「友情」なら、2人はなぜ友達と呼べるのか、本当の友達と呼べるのか、などという発問を考える。
この流れで、本質に向かう授業ができるのです。
友情と信頼のちがいは、授業では扱わなくていいですが、授業者はこれについて自分なりの考えをもっておきましょう。
「二わのことり」は、『友情』に重きを置いている教材です。
情愛の意味で、「同情、いつくしみ」とありました。
友達に対して、少なからず同情の念はあるということです。
みそさざいは、うぐいすの家にいる時、どこか楽しくなくて落ち着きませんでした。
心に何か大事なものが欠けている状態だったのです。
みそさざいの心に欠けているものとはなんだったのでしょうか。
・やまがらがいないさみしさ
・やまがらの家に行かなかった自分への後悔
・やまがらの家に行こうか迷う
みそさざいの心について考える活動も、有効ですね。
友情で大切なことは、相手意識です。
相手は今、どんな思いをしているのか、自分の行動でどんな思いになるのか。
相手の気持ちを想像できることが、真の友情に大切な要素なのです。
また、教材をさらっと流してしまうと、「さみしい思いをしている友達を見つけて仲よくしよう」という結論になってしまいますが、果たして本当にそれでいいのでしょうか?
みそさざいは、やまがらの家に行くために、うぐいすの家を途中で抜け出しています。
それは、うぐいすに対する裏切りの行為であり、後日うぐいすから「どうしたの?」と聞かれるかもしれません。
それが原因でうぐいすとの友情が壊れるかもしれません。
また、やまがらはみそさざいが来てくれてうれしかったのは当然でしょうが、「みんなに」招待状を出していたのですから、みんなが来る前提でごちそうを用意したり、飾り付けをしてくれていたはずです。
でも、来たのは遅れてみそさざいが1人だけ。
誰も来ないより、マシだったと感じている可能性はないでしょうか?
また、やまがらはみそさざいが来てくれてうれしいですが、「他の鳥たちはどうしたんだろう。」という悲しい思いは残っているのではないでしょうか。
これらは、懐疑的な見方ではありますが、教材の裏側まで推測すると、考えられることです。
そしてそれを考えることが、実生活でも生きるほどの深くて細かいポイントなのです。
さすが定番教材、多くの観点がありますね。
ここまで説明したことはたくさんありますが、全てを45分で触れようとは思わないでください。
私も全てを触れることはできないです。
どれか、「これだ」と思うポイントを1つか2つに絞って、授業でチャレンジしてみましょう。
定番教材のよさを実感できるはずです。
3 導入
T:教師 C:子ども
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