岸田啓

翻訳者。早大法卒。インターネットを活用し、在宅で法規や契約書の翻訳(英和、和英)をやっ…

岸田啓

翻訳者。早大法卒。インターネットを活用し、在宅で法規や契約書の翻訳(英和、和英)をやってきましたが、現在は主に一般書籍の翻訳を手がけています。著書『電脳田舎暮らしのススメ』(洋泉社)、訳書『スナーク号の航海』(ジャック・ロンドン著)、『老水夫行』(サミュエル・コールリッジ著)他

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二十世紀最大の遭難・漂流の記録:『エンデュアランス号漂流』と『エンデュアランス号大漂流』を読む

 デフォーの創作した『ロビンソン漂流記』*1を持ち出すまでもなく、漂流記(ノンフィクション)は究極の状況における人間を描くもので、ふだんは雑事に追われてあまり考えることのない人生や生命について、われ知らず思いをめぐらせるきっかけになったりします。  寒い冬には暖かい部屋での冷たいアイスクリームがおいしいように、寒い時期には、あえて極寒の南極での遭難と氷海での漂流、生還という、人類の歴史のなかでも特筆すべき海の冒険(というより、あまりにも過酷な試練)についての本を手にとってみ

    • 人生の名言・迷言・妄言1:  前から思っていたのだが、何かを実現する人というのは、椅子に座って傍観するのではなく、みずから出かけていって、やってみるのだ。 レオナルド・ダ・ヴィンチ

      SNS全盛の時代、スマホ片手に世界中のあらゆる出来事に上から目線でコメントして、なにか自分が偉くなったような、何事かをなしとげたような気分になれるという、なんとも手軽で安上がりなストレス解消法が生まれました。 自分自身を含めて、このダ・ヴィンチの言葉はちょっと耳が痛いかな。 身のまわりに動画や画像を含めた情報があふれ、部屋から一歩も出なくても、手のひらの小さなツールひとつで世の中の出来事が手にとるようにわかる――ような気がするこの世界では、半可通(はんかつう)の、つまり、

      • 電脳田舎暮らし:散歩で見かける鳥 オオバンとアオサギ

        オオバンといえば、北の鳥というイメージがあったんですが、最近は冬になると、こちら(九州)でもよく見かけます。こんな感じ <blockquote class="instagram-media" data-instgrm-captioned data-instgrm-permalink="https://www.instagram.com/tv/CXVPpg8lISy/?utm_source=ig_embed&amp;utm_campaign=loading" data-ins

        • テレワーク、あるいは動く秘密基地をつくる:災害の避難場所に使ってみた

           今年の夏、自宅周辺では48時間で500ミリ、72時間で700ミリ超の記録的な大雨が降りました。こんなことは記憶にありませんね。  で、家は坂の途中にあり、消防からの呼びかけもあったので、土砂崩れを警戒して、三日間避難しました。  一日目はホテルに、二日目以降は海に浮かぶ秘密基地(早い話が海上係留のヨット)に泊まりました。役所でも避難所が開設されていたんですが、公的な避難所ではパソコンを使った仕事ができないので、いまのところ選択肢には入ってきません。  これが台風で避難

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          アルベール・カミュの『ペスト』とダニエル・デフォーの『ペスト年代記』を読んでみた 2

          デフォーの『ペスト』 (以下、「ペスト年代記」 A Journal of the Plague Year) 二〇二〇年四月に中央公論新社から発行された電子版(平井正穂訳)。 (ベースは二〇〇九年七月発行の中公文庫) ダニエル・デフォー(1660年~1731年)はイギリスの作家でありジャーナリストでもあった人物。 『ロビンソン・クルーソー』の作者としてあまりにも有名。 この作品では、1665年にロンドンで発生したペストの大流行を取り上げている。 デフォーの「ペスト年代記」

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          アルベール・カミュの『ペスト』とダニエル・デフォーの『ペスト年代記』を読んでみた 1

          いまさらながら、アルベール・カミュの『ペスト』とダニエル・デフォーの『ペスト年代記』を読んでみた。 ペストと新型コロナウイルス(COVID-19)はどちらもパンデミック(地域や国の枠をこえた大規模な流行)を引き起こす動物由来の感染症ではあるのだが、病気としては相違点の方が多いかもしれない。 致死率は、黒死病とも呼ばれたペストの方が圧倒的に高いし、感染の宿主はネズミで、人間同士の飛沫感染はあるものの、多くはペットやノミが媒介する。 とはいえ、そういう大規模な感染症に対する

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          春の海 ひねもす のたりのたりかな―とは、まだいかない……かな

          天気がいいので、春の海を散歩してみました。 風も波もおだやかで、のどかな春の海ではあるものの、 風はやはり冷たいですね。 終日(ひねもす)とはいかず、早々に港に戻ってきました。 この船は仕事場でもあるのだけど、年に一度の船底塗装の前なので、船底に海藻の類がついて汚れていて、なかなか快適なセーリングにはほど遠い―― 写真はないのだけど、今年はじめて海鵜(ウミウ)をみました。 鵜(う)は長良川の観光鵜飼が有名ですが、海にいる鵜(う)も潜りが得意で、もぐった場所からかな

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