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「素敵な本屋ですね」という用意していた翻訳

12月28日土曜日昼から夜

昼食、店を変えてお茶、ブルターニュ公爵城散策、すぐ隣の観光案内所で休憩し、併設のギフトショップをのぞく。

トラムに乗って、パッサージュ・ポムレーへ。トラム乗り場の向かいは広場で、花やチョコレートチュロス、クレープ、プレッツェルのテントが出ている。カフェの賑わいは見慣れてきた。今日はシネコンも混んでいる。若いというよりは幼い感じの集団や二人連れが戯れている。

地図によれば、このシネコンのすぐ裏だ。路地に入るとパッサージュ・ポムレーの門が、様々な色の頭の向こうに見えた。門はオレンジ色のベストを着た男が柵を閉じていて、柵越しに様々な色の頭が見えた。路地の出口の人だかりをくぐると、通りをデモ行進が横切って行く最中だった。事前に外務省からのメールで、年金制度に関するデモがあることは知っていた。途中から頭がぼっーとしてくるくらい長い行進だった。列なる一人が持っていた緑の空き瓶が、まるでライトのように像を残していった。

行進の最後尾が過ぎるが過ぎないかギリギリのところで人だかりが散り始め、私も通りを横断し、パッサージュ・ポムレーの柵の前へ着いた。だが、オレンジのベストを着た男は、まだ柵を開けなかった。パッサージュ・ポムレーから出たい人たちと、そこに入りたい人たちで混雑した。柵の向こうにいる人たちは、まるでエレベーターが行きたい階に着くまで、電車のドアが開くまでを待つような顔つきと佇まいだった。

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パッサージュ・ポムレーはショッピングモールである。写真がブレブレなのは買い物客で混んでいて、立ち止まっているに引け目を感じたからである。ちなみに三枚目の写真の右端には私のようにスマホを構えたマダムがいました。さらに、三枚目の写真を撮る直前には酔っ払っていたようで、ふらふらのマダムが介抱されていました。

チョコレート屋、靴、服、オモチャ、キッチン雑貨、缶詰屋、ケータイショップ、お茶のみ場など一回りする。照明が暖かい橙色で、着膨れた小さな子供がチュロスを噛りながら立っている。

トラムの乗り場に向かう。来た時と違う通り道を行き、ロワイヤル広場に出てしまう。

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来た道を戻ると、途中、本屋を見つける。

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フランス語の本屋は英語の図書館に似ている。

暖かい感じの橙色の明かりが、並ぶ本棚の木目を浮かび上がらせている。手前の売り場には、日本の新書と似たデザイン、サイズの本。フランスに来てからハードカバーの本は見ない。台北の空港の本屋にも市立図書館の戯曲や小説コーナーにも無かった。絵本やアメコミはハードカバーだったけど。

レジ横にMURAKAMI HARUKI。たぶん『1Q84』かな、と。

じゃあ、Mangas(漫画)を探してみよう、と店の奥まで入ってみた。

新書みたいなやつ、旅について、他の国について、アメコミ、絵本、児童書、二階に上がると、おそらく専門書だろうか。階段の両脇にも本が積んで置いてあるのがノスタルジックでいい。

旅についての本があるコーナーで、日本についての本を開いてみた。『Japon』は日本語とフランス語が並べて書いてある。目次を見て、日本文学という頁を開く。平安、江戸、近現代の文学の説明がある。

近現代の日本文学とは、西洋の影響を受けて個性的な生き方をする個人を書くもの(引用ではない)、とある。端的にまとめてくれてありがとう、って感じである。思わず苦笑した。

向かいも同じ本屋の店舗なので、そちらにも探しに行く。ドアが開きっぱなしになっていた。本棚に、本棚と同じ木の梯子がかかっている。料理本や写真集、さっきの店舗よりポップで生活感がある。Mangaは見つからないが、良い本屋。本を探すためのパソコンのそばに付いていた店員さんが会釈をした。素敵な本屋ですね、と翻訳アプリに用意した。

結局、用意した翻訳を出しそびれ後ろ髪を引かれるような思いで、店を出ようとした時、出入口の端に放射状の亀裂が入っていた。それは開けっ放しで壁際に寄っていた自動ドアだった。

思わずレジを振り返った。店員は眼鏡をかけた茶髪の男で、客と話をしていた。客は大柄な、キャップを被った男で、ジャンパーやズボンもくたびれ気味。積極的に話している様子を見ると、親しそうに見える。

ドアと翻訳アプリの画面とレジを順に見ながら、しばらく立っていると、キャップの男が出入口に向かって来た。言葉が分からないから雰囲気だけ伝えるが、

キャップの男「(ドアを指差し)ねぇ、あれどうしたの?」

レジの店員「ああ、ちょっとね」

キャップの男「あ、そう。じゃあね」

キャップの男のラフな出で立ちとドアの亀裂が並ぶ。キャップの男を見送った後、ホント素敵な本屋ですね、と笑えた。歩いている途中にある洋服店のドアにも亀裂が入っていた。これ、西洋独特の保険があるのかな? あるとしたら民間? 市?

結局Mangaは、トラムの乗り場近くにあったお店にあった。外観が思いっきりコンパクトにしたパルテノン神殿みたいなのに、一階が電気製品、二階にオモチャ、DVD、本屋。雰囲気TSUTAYAっぽい。「Mangas」というコーナーが確立されていた。

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