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【読書記録】「兄だったモノ」(1)マツダミノル

兄が死んだ。私は兄の恋人だったひとと、兄の墓参りに来ている——……。これは、兄の恋人と私と「兄だったモノ」のおぞましい恋の話

舞台は広島。季節は夏。
広島のお盆では盆灯篭という飾りを立てる習慣があります。初盆は白、という決まりがあって、本作でもそのシーンから始まります。

余談ですがたしか映画「この世界の片隅に」だったと思うのですが、白い盆灯籠がお墓に大量に並んでいるというシーンがありました。つまりはその年に亡くなった方が大勢おられたというわけで、一つの描写でとても示唆的なシーンだったことを覚えています。

ついでに拙作にも盆灯籠が登場する物語があったりします。

https://note.com/kisaragimiyabi/n/n094e159b66c1

余談が過ぎました。

兄の恋人と一緒に、亡くなった兄の騎一郎の墓参りに訪れた主人公の鹿ノ子。兄の恋人だった人は聖という名の男性でした。
生前の兄から「きっとお前も聖を好きになる」と言われていた鹿ノ子。
墓参りを終えて兄が聖と過ごした家に赴き、ひとときを過ごします。
そして去り際に彼女が見たものは、「兄だったモノ」。

「兄だったモノ」のインパクトはなかなかで、ここまで引っ張ってきた雰囲気を一気にガラリと変えてきます。さらに描写される鹿ノ子の本性。
ここまでいずれの登場人物も心の中に渦巻くものを抱えており、それが絡み合いながら物語は複雑な展開を見せていきます。

どろどろのまま破綻しそうな展開でしたが、騎一郎の元恋人だという南カンナの登場でまた展開が変わります。新たにキャラクターが現れるたびに局面が変わっていき、飽きさせないストーリー進行となっています。
1巻最終話ではさらに新たな人物の登場が示唆されており、2巻以降の展開も楽しみな物語です。


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