台本:無気力男と契約女神の確執

如月N『時は現代、俺達3名の学生は女神の指令により、俺と同じく女神と契約した契約女神と呼ばれる異能者と接触するため廃校を探索していた』

如月「しかしこんな瓦礫やら窓ガラスが散乱している廃校に、契約女神がいるとは思えんな」


翼「だからと言って見過ごすこともできないだろ?そもそも女神と契約している時点で常人とは逸脱した存在だからな」


如月「ちょっと待て、間接的に俺の悪口を言ってんじゃねえよ」

ナギ「師匠みたいに狂っている例もありますしね♪」

如月「直接的に言えばいいってわけでもねえよ!」

翼「落ち着け如月狂(キサラギ キョウ)」

如月「如月  亮(キサラギ リョウ)だよ、全然違うだろうが!」

翼「団長の狂った性格と性癖の話は今はいい」

如月「後もいいから! っで、残す部屋はここだけか?」

ナギ「はい。この扉の先にある屋上を残すのみですね」

翼「ひどくわかり難いが微かに人の気配も感じる」

如月「今回の指令に加えて、廃校の屋上に不審な気配か。このスリーコンポでただの肝試ししている学生ってオチはなさそうだな」

ナギ「むしろボク達が肝試しの学生みたいですけどね」

翼「私達は失敗すると肝取られるけどな」

如月「肝の冷える話だな」

ナギ「さて、ドアを突き破りますか?」

翼「ナギは飛び跳ねて準備万端だが、どうするんだ如月」

如月「いんや、今回の目的はあくまで契約女神を口説いて平和的に終わらせることだ、変に警戒を増しかねない行動はやめておこう」

ナギ「師匠、今の2行分の発言で十分警戒心は増しますよ」

翼「はいはい、じゃあ慎重に扉を開けるぞ」

如月N『不審な気配のする屋上に踏み入った俺達、そこには』

翼「・・・・どうやら」

ナギ「ビンゴ」

如月「みたいだな」

如月N『驚いたような表情で俺達を見ている女が1人立っていた』

凛「驚いたわねぇ、こんなところにお客様なんて」

如月「驚いた・・・ってのは俺達も同じだよ、俺は特にな」

翼「待ってください、私達は君に敵意はありません。私の名前は西野 翼(ニシノ ツバサ)話し合いをしたい、名前だけでも教えていただけないでしょうか」
  
凛「うん、私の名前?ふふっ、今更名乗る必要があるのかしら」

凛「いや、あんた達には名乗らなくちゃね。私の名前は・・・」

如月・凛「澤木凛(サワキ リン)」

翼・ナギ「えっ?」

凛「へぇ、私の名前覚えていたの。とっくに忘れ去られていると思ったわ、如月」

ナギ「ちょっと待ってください!2人とも知り合いなんですか?」

凛「・・・あんた名前は?」

ナギ「あっ、ボクの名前は木村ナギ(キムラ ナギ)です。ナギって呼んでください」

凛「そうナギ、あんたの言う通り私と如月は知り合いよ」

翼「どういう関係か伺ってもよろしいですか?」

凛「私と如月の関係ね・・・」

ナギ「元恋人ですか!?」

如月・凛「違う!」

凛「んっ、うん!(咳払い)私と如月は中学時代の同級生であり親友の関係よ、見捨てられるまでだけどね」

翼「見捨て・・・られた?」

凛「ええ。私に心地いい言葉を並べて信頼させてからあっさりとね」

如月「言いかたはあれだが、事実だから否定もできねえな」

凛「私がこれまでどんな思いでっ!、いえ失言だったわね。そこで2人には取引をしたいのだけどいいかしら?」

ナギ・翼「取引?」

凛「如月を置いて立ち去ってくれないかしら。私はこの男と大切な話があるの、もちろん最大限の協力はするわ」

ナギ「師匠の命が保証されない以上、その取引は受けられません。ここを出るときは4人仲良くです」

凛「そう、交渉決裂ね」

翼「なにか、くる!」

如月「がはっ!」

ナギ「師匠!!」

翼「集中しろナギ! 如月は一撃でやられる男ではない!」

ナギ「翼さん!今、空気の塊を打ち出したように見えました。彼女の能力は恐らく」

凛「第二波、いくわよ!」
翼「たぁ!」

凛「へぇ・・・、私の空気砲を真っ二つにするなんて相当の使い手ね。直撃すれば間違いなく骨が砕けるのに避けるそぶりすら見せない」

翼「私の愛刀が期待に答えなかったことはない」

凛「木刀じゃないの」

翼「関係ないさ」

ナギ「風の流れを手足を動かすが如く操っている。やはり澤木さんの能力は『風』ですね」

如月「ぐっ、風を操るとかチートじゃねえかチクショウ」

ナギ「知り合いなんですよね、師匠が説得とかできないんですか?」

如月「残念ながら絶望的だな。話し合いをするにはあいつを無力化するしかなさそうだ」

凛「私を見捨てたうえに私に牙を向けるのね。そう、そこまで私は嫌われてしまったのね」

翼「垂直斬り!からの水平斬り!」

凛「くっ、よそ見を狙うなんて反則じゃないかな?」

翼「間違いなく隙を突いたはずなのに、避けるその反則レベルの反応速度に勝つためには仕方ないだろう」

凛「ふふっ。垂直斬り裂いて軌道に無風となった場所を走り抜け、さらに水平斬りで確実に意識を刈り取ろうとしたその行動力はお見事、けれども残念ね、私には無意味よ」

翼「傷が、治っていく!?」

凛「落ち込まないで。私には視えているのよ、その剣の軌道もあんたの息遣いも指の動きも全て。もちろんその絶望した表情もね」

翼「本当に恐ろしいよ、この状況でも一切集中を切らさず、この屋上全体を 視ている君の集中力がね」

凛「私に死角はないわよ」

翼「八方塞がりか・・・私1人ならね!」

如月「ナギ!打ち抜け!」

ナギ「はい!」

凛「なっ、地面が割れ・・・きゃっ!」

ナギ「ダダダダダダ!!」

凛「なっ! 素手で地面を割るわ、破片で遠距離攻撃しかけるとか、無茶苦茶すぎるでしょっ!!、女の子としての慎みを持ちなさいよ!!」

ナギ「あなたに言われたくありませんよ、今です翼さん!」

翼「たぁ!!」

凛「だから私の視る力を持ってすれば軌道がわかるつってんでしょうが!風の刃『かまいたち』!」

翼「きゃっ!」
ナギ「うわっ」

凛「本当にいい加減にしてくれない?何度も言ってるでしょう。
その男を差し出してくれれば何もしないのよ?」

翼「つっ、はぁ・・・ ここまでしておいて何が何もしないだよ」

ナギ「師匠が見捨てたから、その報復ですか?」

凛「そっちから来ておいてひどい言い草ねぇ・・・、まあそれは2割ぐらいは正しいわ」

翼「2割?」

凛「私は2年、行方をくらませた如月を探していたのよ、見捨てた理由を知りたくね。
探して探して探し続けて、それでもなぜか見つからなくて、そんな私が最後に頼ったのが」

如月「・・・女神との契約か」

凛「そうよ、それで『視る力』を習得したにも 関わらず如月は見つからなかった。絶望に涙を呑んだわ。だからさっき如月と再会した時はとても嬉しかったのよ?」

如月「なんでそこまで、俺のことなんて忘れて楽しく生きてくれればよかったのに」

凛「相変わらず自己解決の回答を人に押し付けるわね如月。確かにあんたの選択は最善だったのかもしれない、そのおかげで問題に巻き込まれることもなくなったわ。
でも、そんな最善なんて私は一度でも求めたことがあったかしら?」

如月「なかったな。まったく自分のだした答えが忌々しい」

凛「そして、焦がれに焦がれた相手は別の友人を作り、見捨てた親友のことなんて忘れて楽しく日々を過ごしていましたとさ。   
私がどんな思いで追いかけたかもしらないでっ、嫌われるようなことをしたかもしれない、もっと如月の話を聞くべきだったかもしれないそんな自己嫌悪に縛りつけられながら、毎日まいにちマイニチ探し続けた答えが・・・これ?」

凛「ふざけんな!!!」

翼「よほどの憎悪・・・そして愛情か」

ナギ「師匠・ ・・」

如月「向き合わなきゃいけねえよな、自分に言い訳して、最善なんて言葉で逃げ続けた結果がこれだ」

凛「向き合う?あんたが向き合う?お笑いね、私と向き合わず挙句見捨てたくせに、いざ自分の身が危なくなったら向き合いたいとか綺麗な言葉を並べるの?それは私のためじゃない自己保身のためでしかないのよ」

如月「悪かった、と言っても許されることはないだろうが」

凛「必要ないのよ謝罪なんて!、私はただ・・・受け入れられないのならはっきりと否定してほしかった。言葉にしてほしかった、ただ向き合って話がしたかった」

如月「澤木、決着をつけよう」

凛「決着?・・・そうねつけるべきよね亮」

如月「ナギ、翼。澤木を連れ帰るぞ」

翼「いいのか?殺されるかもしれないぞ」

如月「俺は二度と選択を誤るわけにはいかない」

翼「さすがは一度間違えた男は言葉の重みが違う」

如月「耳がいてぇな、否定もできねえが」

翼「精々心刻み込むんだな、彼女の傷はそれ以上だ」

如月「ああ。言われずとも刻み込まれてるよ」

翼「ならいい」

ナギ「あのぉシリアスな雰囲気なところ悪いんですが、澤木さんに打ち勝つ策はあるんですか?」

翼「残念だが私は手詰まりだよ、あの目を持ってすれば全て防がれそうだしな」

如月「策ならあるさ、上手くいくかは賭けになるがな」

ナギ「何をするつもりですか?」

如月「簡単な話だ、あいつ自身が自分の『視る力』を疑わせればいい」

ナギ・翼「はっ?」

凛「作戦会議は終わったかしら?」

如月「終わったよ」

ナギ「上手くいくんですか?」

翼「やるしかなさそうだ」

如月「戦闘配置! 翼は俺の正面、ナギは俺の後ろに」

ナギ・翼「了解!」

如月「それじゃあラストバトルを始めるかニート団の」

如月・翼・ナギ「名の元に!」

凛「翼ちゃんを盾にして、ナギちゃんに支えてもらうなんて男として恥ずかしいとは思わないの?」

如月「ここまで外道働いて今更だろう?翼!」

翼「わかっている! たぁ!」

凛「まったく学ばないわね・・・なら答えてあげる『かまいたち』!!」

如月「やっぱり『かまいたち』できたか」

凛「威力は最大!チェックメイトよ!」

如月「いつも言ってるだろ凛、チェックメイトを宣言するには早すぎるってな!」

翼「相手は風の刃、風の刃を受けるには・・・これしかない!『風車斬り』!」

翼「はぁぁあああ!!!」

凛「くっ、予知しているわ!刀を風車のように回転させて風の刃を斬り割く、ありえないと思っていたけど本当にやってのけるなんて」

翼「ナギィ!!」

ナギ「はいっ! ダァ!」
《さっき割った床の破片を投げている》
如月「『かまいたち』なんて威力の高い異能を放てば他に干渉する余裕はねえだろ!」

凛「私を・・・・なめるんじゃぁないわよ!! 」

ナギ「なっ!?大砲の如く打ち出していた空気の塊を分散させて破片を防いだ!?」

翼「だが、計算通りだ、如月!」

如月「貫けえぇええええ!」

凛「甘い!甘い甘い甘い甘いのよぉ!確かに集中力はかなり分散されたわ、
だけど馬鹿正直に来るあんたの刃が視えない程じゃないのよ!右下段から左上段への斬り上げね!」
  
如月「ぐっ、的確に見抜くか、その軌道で正解、だけども!」

凛「へ?」

如月「途中で刃を手放せば軌道もへったくれもねぇだろ!」

凛「なっ!自分の武器を上に放り投げて一体何をっ!」

如月「刃はそのままお前の背後に飛んでいく。思った通り、一瞬思考 が停止したな!」

凛「しまった、刃に気を取られて如月も私の背後に!」

如月「予測とは逸脱した動き、これがお前の弱点だ!『視る力』に頼り過ぎたな!」

凛「ぐっ、完璧に背後を取られた!?まだっ、まだよ亮の刃は私に届いていない!まだ終わってないのよぉ!!」

如月「空中水平切り!」

凛「終わらせてたまるかっ!」

如月「なっ!? ここにきてそんな速度で向きを変えるのかよ!」

凛「はぁ、はぁ、防いだ! あんたの負けよ亮!」

如月「そうだな俺の負けだ。だが、俺達の勝ちだな」

凛「はぁ?俺達の・・・勝ち?俺達?はっ!」

凛「ぐっ、如月はフェイク!?本当の刃は如月ではなく」

翼「背後ががら空きよ『居合い斬り』!」

凛「距離が近すぎる!防ぎようが・・・ぐはっ!」

翼「はあああ ああああ!!!」

凛「うぐっ、ふふっ、お見事ね」

翼「私の愛刀が期待に答えなかったことはない」

凛「たかが木刀と侮っていたわね」

ナギ「まだ動けるんですね、恐ろしいタフさです」

翼「決着は着いた、これ以上の争いに意味はないよ」

凛「終わった?終わったのね。戦いが。ふふっ、私負けたのね策力に力に・・・信頼に。この目を持っても見えないものがあるのね。完敗・・・だ・・・・わ」

如月「・・・チェックメイトだよ。凛」

END

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