推敲のメモ帳 書き癖を知る
はじめての推敲。四回目。書き癖が色々と分かってきた頃です。
文末。「~と言った」ばっかりになってません? え? 私だけ? (^^;
まずは、とっても雑に書いたのが丸わかりなやつから。
【K初稿】『即座に首を振る相手に、シドはこの言葉がカツミをふみとどまらせることになるのか、それともあらぬ方向へ駆け出すきっかけになるのかわからなかった。まして、彼にとってはそれはどうでも良いことだった。』
【M】ここは文意が錯綜して分かりにくいです。少し文章を足して、情景描写を補完した方がいいように思います。わたしなら、ということで。
【M代案】『シドは、即座に首を振る相手に、用意しておいた言葉をかけようとして一度口を閉ざした。この言葉がカツミをふみとどまらせることになるのか、それともあらぬ方向へ走り出させてしまうのか、わからないなと。もっとも彼にとって、それはどうでも良いことだったが。』
「この言葉が」というのが、迷子になっています(^^;
文意が錯綜しているので情景描写を補完する。代案を元に加筆してみました。
【K十稿目】『シドは用意していた言葉をかけようとして、開きかけた口を一度閉ざした。足元で潮が満ちるように迫っていた闇が、顎を上げてそそのかす。自分の言葉でカツミが踏み止まるのか、それともあらぬ方向に走り出してしまうのか。シドには予測がつかない。分からないのだ。薬になるのか。毒になるのか。どちらに転ぶのか。だがその時のシドは、ペルソナを引き剥がされていた。』
長いな(^^; まあいいや。取り敢えず迷子は保護した(笑)
【K初稿】『それがフィーアをもっと傷つけることになるとも限らないからね』
【M】二重否定文は扱いが難しいです。正確に書けば、傷つけることにならないとは限らない、なんですが、どうにも回りくどくなってしまいますね。【M代案】『それがフィーアをもっと傷つけることになるかもしれないからね』『それがフィーアの傷をもっと深くしないとは限らないからね』くらいかなあ。
思いっきり間違ってる! なるのかならないのか! めっちゃ恥ずかしいいいい! んで、こんな喋り方しないよなあ。
で、こうなりました。
【K十稿目】『フィーアのことを却って傷つけるかもしれないからね』
あっさり(^^;
【K初稿】それは、その理由を知った途端に傷つかざるをえないカツミを守るための、最後の手段ではあったのだが。(中略)ジェイやシドがそんな予感を覚えざるをえないのは
【M】『ざるをえない』の重複は避けた方が。
【M代案】その理由を知った途端に深く傷ついてしまうであろうカツミを……くらいの感じ?
よくやってます重複(^^; 中略が入っているとはいえ、わりと近いです。
Mさんは、〇行前に同じ言葉、似た表現があるという指摘をよくしてくれました。まだ記憶に残っている言葉をすぐに繰り返すのは、わざとする場合を除いてやらないほうがいいですよねえ(^^;
この後には、同じ『音』の言葉を次々と使ってるのも指摘されました。
一番使ってしまうのが『サ行』だなあ。ここもそうですね。
「それは」「その」「知った」「ざるを得ない」「最後の」「手段」「ジェイ」「シド」「そんな」「ざるを得ない」……キャラ名は仕方ないにしても、ひでえ!!(笑)
んで、現在はというと。
【K十稿目】シドの策にはめられているのも、カツミには分かっていた。関わるなと言われれば言われるだけ反発してしまう。人などそういう生き物なのだ。カツミはずっとフィーアのことが知りたかった。彼の持つ何かが自分にとてもよく似ている。その正体を知りたいのだ。シドに本心を見破られた気がした。見透かされていると感じた。その言い訳のために、彼を攻撃してしまったのだろうか。裏切りを誤魔化すために。
原型、跡形もなし(笑)
カツミ視点に変えました。上手く扱えない言い回しにこだわるより、元から全て書き換えたほうがいい場合ってありますね(^^;
【K初稿】シドは診療鞄を手にすると言った。
【M】手にすると、〇〇と言った。〇〇の部分に形容詞でもいいし、なにかセリフでもいいし、入れた方が。もしくは、言ったのところを別の動詞にするか。
【M代案】シドは診療鞄を手にして立ち上がった。……とか。
【M】その次のパラグラフも含めて、『言う』が短い文脈の中でたくさん出てくると印象がすごーく野暮ったくなるんです。そこに一工夫要るかも。
この先も悪戦苦闘する『言う言う問題』(^^;
そりゃあセリフがあるんだから言ってるには違いないのですけど、言う言ううるさいんですわ。どんだけ言うばっかなんじゃ!! 指摘されて大汗かきました。
言うを多用しないための一工夫。「告げる」「宣言する」「反論する」「提案する」「(言葉を)こぼす」「放り投げる」「叩きつける」「落とす」「言い置く」でもいいですよねえ。喧嘩腰なら「刃を向ける」「鞭打つ」なんてのも。
で、現在はこうなってます。
【K十稿目】相手の動揺を横目に診療鞄を手にしたシドが、まったく世話の焼けると言いながら壁に掛かる診察着を取る。そしていつも通りに皮肉を重ね置くと、すぐに医務室を出て行った。
「本日二枚目の死亡診断書だな。クローンに必要とは思えないけどね」
言う。一回使ってるけど、セーフってことで!! (笑)
推敲って、誤字脱字を見つけるだけじゃないんですね。この小説は四半世紀寝かせた原稿なので、もう十分客観視できます(できなきゃ嘘だろ(笑))二か月くらいは寝かせておけなんて聞きますけど、大事ですねえ。
言動には根拠があるわけで。ストーリーの大元、つまりはキャラの言動の動機がハッキリしていないと、文章もとっ散らかるわけです(^^;
んで、とにかくいらない部分を削る! 書き癖を知って、回りくどい表現がないかチェックする。この小説では七万字削りましたけど、削って加筆してこの文字数です。
~と言った。みたいな単調な文末、似たような表現をさける。
そして、それから、その~の多用をさける。(私はすっごく使ってる! なのでサ行ばっか!)
「てにをは」を適切に使う。主語、述語の呼応、副詞の呼応が出来てるか。……出来てるかなあ(^^;
あと、リズム! 音読すると分かりますねえ。リズムよく読めるものは、読者にも親切だと思います。
まだまだ続きます(^^; ではまた!