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『作文指導を変える:つまずきの本質から迫る実践法』を読んで①

池田修 (2023). 『作文指導を変える:つまずきの本質から迫る実践法』明治図書

国語科ではどのような作文指導がなされているのか(あるいはなされていないのか)を垣間見たくて読んでみました。いろいろな発見があり、英語教育にも応用できそうなアイディアもあったので、まとめておきます。

なぜ作文指導がなされていないのか

冒頭からなかなか衝撃的な記述から始まります。

私は、教員免許更新講習で「体験作文の書き方」という講座を担当してきました。その講習では、受講した延べ 400人以上の先生方にアンケートを取ってきました。その結果、作文の書き方や、作文の指導の仕方を、大学や研修で習ったことがあるという先生には、お会いすることはありませんでした。

p. 003(はじめに)

これがどこまで本当か、一般化できるものかは分かりませんが、英語教師の私からすると大きな驚きです。試しに上記を「英語科」「エッセイライティング」に置き換えてみましょう。「エッセイライティングの書き方や、エッセイライティングの指導の仕方を、大学や研修で習ったことがあるという先生には、お会いすることはありませんでした」という状況は、私には想像ができません。

どうして国語教師に作文の指導法が分からないのか。著者の考察によれば、国語の教師ははじめから国語ができた人が多いため、作文の指導を受けた経験、あるいは作文指導を立ち止まって考えた経験が乏しいといったことが書かれています。その観点から考えれば、英語科では「元々(外国語である英語で)エッセイライティングができた人」というのはいないはずですから、「英語教師にとってのライティング指導」と「国語教師にとっての作文指導」はイコールではないということに気付きます。

「書くこと」の指導の実際

小学校学習指導要領では、「書くこと」の指導に1・2年生では年間100時間程度、3・4年生では85時間程度、5・6年生では55時間程度を配当することになっています。これに関して筆者は、小学校での「書くこと」の指導時間の多くは「漢字の書き取り」に使われていることが多いのではないかと述べています。

このことは、いわゆる欧米諸国では母語での言語技術教育(Language Arts)が盛んに行われているのに日本では行われていないといった指摘に対する、一つの要因かもしれないと気付かされます。この点は別の機会にきちんと考えたいと思います。

また、大学生を対象にどのような作文指導を受けてきたかについて尋ねたアンケートでは、ダントツ一位が「原稿用紙の使い方」であったと報告されています。筆者は、乱暴な言い方をするならば、学生たちは原稿用紙の使い方の指導だけで作文を書くように指示されていたことになる、と述べています。このように、小学校・中学校で作文の書き方が指導されていない現状が示されています。

ここまで、本書が示す「現状」をまとめてみました。この後、筆者の実践を元にした具体的な改善案が続きます。英語の授業にも取り入れられそうな実践も多くあるので、次回の投稿で引き続きまとめてみようと思います。


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