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蛇の恩返し(短編小説)

納戸を開けると焼酎につけこまれた蛇がいた。マムシ酒はばあちゃんの生きがい。何度噛まれてもやめようとしない。顔を近づけると蛇は私をじろりと睨んだ。「俺を助けたら褒美をやるぜ」「マジですか。現金お願いします」「わかったよ」蓋を開けると蛇は「お前、馬鹿だろ」とせせら笑い藪の中へと消えた。恩知らずな蛇だ。どうせすぐまたばあちゃんに捕まるだろう。ところが最近夫があの時の蛇だとカミングアウト。「マジで気づかねーのな。お前、馬鹿だろ」あ、この言い方。確かに蛇だ。褒美がまさか「俺」だなんて、なんて高慢な奴だろう。一瞬めちゃくちゃムカついたけど、幸せだから、ま、いいか。

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