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ディケンジング・ロンドン

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チャールズ・ディケンズ没後150周年記念 熊谷めぐみ&霧とリボン共同企画展《ディケンジング・ロンドン》|2020.11.29〜12.5 *12/2休
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2020年12月の記事一覧

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|骨董屋《1》

* *  ツアーDAY 3——本日はレスター・スクエアからスタートです。小説『骨董屋』より、少女ネルの祖父が営む骨董屋に到着しました。  軋む扉を開けて薄暗い店内に入り、目が慣れてきた頃に奥の方に見つけたのは、はっとする清廉な白を纏った、影山多栄子さまの静かな面差しのお人形。そしてその横には、ちいさな木彫りの個性的な面々が集合していました・・・ * * * ネルと骨董屋  『骨董屋』は、語り手がロンドンの街中で少女ネルと出会う場面から始まる。道に迷ったという彼

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|骨董屋《2》

* *  不思議な品々が眠る骨董屋に、もう少し滞在してみましょう。  錆びついて壊れた錠前のある半開きになった戸棚をそっと覗いてみると、深い闇に浮かぶように、中央が十字状にくり抜かれた箱が置いてあります。  造形作家・川島朗さまの作品に、ふたたび出会いました。 * * * 骨董品より古いもの  『骨董屋』の冒頭で、語り手はある奇妙な光景に驚かされる。彼を驚かせたのは、古びた品々でいっぱいの骨董屋や、その中に佇む美しい少女ネルの姿だけではなかった。それは、少女を

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|デイヴィッド・コパフィールド《1》

* 『デイヴィッド・コパフィールド』あらすじ  
母と乳母ペゴティと幸せに暮らしていたデイヴィッドは義父となったマードストンから過酷な仕打ちを受け、寄宿学校に送られる。個性あふれる人物たちと出会いながら、デイヴィッドは自分の人生の物語を描いていく。 *  骨董屋を出て次に向かうのは、『デイヴィッド・コパフィールド』ゆかりのノーウッド。  ゼラニウム咲き乱れる温室で、ある少年と少女に出会いました。温室いっぱいに広がる横井まい子さまの馨しく美しい描線を堪能しましょう。

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3|デイヴィッド・コパフィールド《2》

『デイヴィッド・コパフィールド』あらすじ 
母と乳母ペゴティと幸せに暮らしていたデイヴィッドは義父となったマードストンから過酷な仕打ちを受け、寄宿学校に送られる。個性あふれる人物たちと出会いながら、デイヴィッドは自分の人生の物語を描いていく。 *  DAY3最後のツアーは、温室から続いて『デイヴィッド・コパフィールド』ゆかりの場所を三箇所巡ります。  ふたりの青年の人生の旅程に重なる本ツアー。画家・永井健一さまの硬質優美な世界観で綴る圧巻の三連作をお楽しみ下さい。

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 3

 ツアー前半の締めくくりとなるDAY3——先ほど、ノーフォーク州の潮風過るヤーマスからロンドンに戻ってきました。すでに時は頽廃時間。夜更けまでご一緒して下さいました皆様に深くお礼申し上げます。  明日はツアーのお休み日。後半も多彩な作品がロンドンのあちこちで皆さまとお会いできるのを待っています。前半のツアーを読み返したり、お好きな時にぜひディケンジングしてみて下さいね!  では、本日のツアーを振り返ってみましょう。 *霧とリボン 実店舗は休業中のためご入場頂くことは

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|オリヴァー・ツイスト《1》

* *  ツアー後半がスタートしました。DAY 4の今日最初に体験するのは『オリヴァー・ツイスト』の世界。  ペントンヴィルのとある家で、ひとりの女性へのオードたるブルーに出会いました。造形作家・川島朗さまよる記憶の水紋に眠る女性の肖像をお届けします。 * * * オリヴァーが見た肖像画  フェイギンが子供たちに行わせている仕事がスリであると知ったオリヴァーは、恐れをなして逃げ出すが、ドジャーたちに罪をなすりつけられ捕らわれる。衰弱した姿を哀れんだ老紳士ブラウン

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|オリヴァー・ツイスト《2》

* 『オリヴァー・ツイスト』あらすじ 救貧院で生まれた孤児のオリヴァーは、過酷な環境の中に耐えかねた子どもたちを代表して粥のおかわりを求めたことで監禁され、徒弟に出される。引き取られた葬儀屋でもつらい仕打ちを受けたオリヴァーはロンドンへ向かい、道中で一緒になった少年ドジャーに案内されて風変わりな老人フェイギンと出会う。 *  『オリヴァー・ツイスト』の物語を遡ってみていきます。今回訪れるのはオリヴァーのいた救貧院。  そこでは、カリグラファ・佐分利史子さまの手によ

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|大いなる遺産《1》

* 『大いなる遺産』あらすじ 
両親のいないピップは、年の離れた姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしていた。クリスマス・イブに、ピップは一人の脱獄囚に遭遇するが、その男は再び捕えられる。それからしばらくしてピップはミス・ハヴィシャムの屋敷に連れていかれる。そこでは、ピップの運命を変える出会いが待っていた。 *  『オリヴァー・ツイスト』の世界から『大いなる遺産』の世界へ移動します。ミス・ハヴィシャムが住むサティス荘のモデルとなった、ケント州ロチェスターにあるレストレー

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|大いなる遺産《2》

* 『大いなる遺産』あらすじ 
両親のいないピップは、年の離れた姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしていた。クリスマス・イブに、ピップは一人の脱獄囚に遭遇するが、その男は再び捕えられる。それからしばらくしてピップはミス・ハヴィシャムの屋敷に連れていかれる。そこでは、ピップの運命を変える出会いが待っていた。 *  もうしばらくサティス荘に滞在します。  時が降り積もり、屋敷全体が灰モーヴ色で覆われている奥の一室で、画家・横井まい子さまが描く二人の女性が、現実から遊離し

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|大いなる遺産《3》

* 『大いなる遺産』あらすじ 
両親のいないピップは、年の離れた姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしていた。クリスマス・イブに、ピップは一人の脱獄囚に遭遇するが、その男は再び捕えられる。それからしばらくしてピップはミス・ハヴィシャムの屋敷に連れていかれる。そこでは、ピップの運命を変える出会いが待っていた。 *  そろそろサティス荘をはなれる時間になりました。  闇の中、静かにゆらめく蝋燭だけが時の存在を感じさせる邸内で、梅原あずさ様の描く時の微睡みを纏うミス・ハヴィ

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4

 ツアー後半がスタートしました。  『オリヴァー・ツイスト』と『大いなる遺産』の世界を巡った一日、お楽しみ頂けましたでしょうか。本日もヴィクトリア朝ロンドンへの時間旅行をご一緒して下さいました皆様に、深く感謝申し上げます。 *  頽廃時間となりましたが、本展タイトルである「ディケンジング」という造語の由来について、お話したいと思います。少しの間、お付き合い頂けましたら嬉しいです。  この言葉は、とある喫茶店で共同企画者の熊谷めぐみ様と本展の打ち合わせをしていた時に閃

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 5|荒涼館《1》

* 『荒涼館』あらすじ 
霧深いロンドンの大法官裁判所では遺産をめぐる不毛な訴訟「ジャーンディス対ジャーンディス」の裁判が行われている。エスタは後見人となったジャーンディスに引き取られ、彼の親戚で、裁判の関係者でもあるエイダとリチャードとともに荒涼館で暮らすことになる。 *  ひときわ霧深い夜のロンドンからツアースタートです。  DAY 5の今日は、小説『荒涼館』の舞台をゆっくりと巡ります。まずは、小説冒頭の裁判の舞台となる「大法官裁判所」を目指します。  濃い霧

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 5|荒涼館《2》

* 『荒涼館』あらすじ
 霧深いロンドンの大法官裁判所では遺産をめぐる不毛な訴訟「ジャーンディス対ジャーンディス」の裁判が行われている。エスタは後見人となったジャーンディスに引き取られ、彼の親戚で、裁判の関係者でもあるエイダとリチャードとともに荒涼館で暮らすことになる。 *  霧深いロンドンからリンカンシャー州に移動して、小説に深い陰影を刻むレディ・デッドロックが住む館を訪問します。  ある秘密を探るために貴婦人から女中に変装する女性の機微を、執筆された当時を紐解

ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 5|荒涼館《3》

* 『荒涼館』あらすじ
 霧深いロンドンの大法官裁判所では遺産をめぐる不毛な訴訟「ジャーンディス対ジャーンディス」の裁判が行われている。エスタは後見人となったジャーンディスに引き取られ、彼の親戚で、裁判の関係者でもあるエイダとリチャードとともに荒涼館で暮らすことになる。 *  霧深いロンドンに戻り、そこからエスタ・サマソンの足跡を追ってハートフォードシャー州の荒涼館へ。  小説に登場するラヴェンダー香水のエピソードから着想した、二人の女性に捧ぐ霧とリボン製・香水箱を