【日記】なれない

2021/10/23
歪から生まれたので歪にしか生きられなかった。それでいて人の歪には人一倍過敏だった。かたちも中身も歪だった。歪だった。
一生に1度しか恋なんてしないなら文章に恋したいと思う。言葉になりたい。なれない。非現実がほしい。あまりに現実的で適当なお金がかかる。かなしい。非現実がほしい。お腹を摘むと憎いほど肉が手に余った。非現実みたいに贅沢な見た目になりたかった。夢みたいな容姿に。なりたかった。なりたかったな。
来世は男の子になって、女の子がいちばん憎むところのうつくしく残酷な男の子になって、こっぴどく振られたい。愛だとか恋だとか大層なことを易々と歌うように口ずさむ軽やかな男の子に。飛びたい。飛べない。なりたい。なれない。
言葉になりたかった。大森靖子の歌詞になりたかった。桜庭一樹の文章に。服部まゆみ『この闇と光』のラストの文章に。ようやく分かった。私は言葉に、言葉になりたかった。
自分は繊細ですって胸を張れる厚顔無恥なら、電車で腕を組める厚顔無恥なら、良かったのか。方々に声をかけて回るホストのように精神が強かったら。自己語りしかしないオタクなら。人の変化はやっぱり怖い。
魂は、魂だけは永遠に高潔で傲慢で清純な少女でありたいなと思う。来世で男の子になれても。

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