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夏の魔物

勹゛っとくるSUMMER


夏、なんつーか、通過する。
あついあつい午後1時前、真っ白な日差しと日傘越しの涼風、日焼けしてセピア色の中古CD市を横目にイヤホンから流れてきた曲がフロントメモリーだって気づいた瞬間そこに夏がいた。6月だったけど夏だ。本物の季節は暦すら通過して五感に口付けを残していく。夏だ!最新プレイリストが似合う季節。そこにフロントメモリーと死神とノスタルジックJPOPを追加した次の日のことだった。
6月は死にたみが似合う。シャボンみたいにかわいくぱちんっておしまいになって消えちゃいたい破滅衝動は厚かましい肉体に逃避行って選択肢を提示した。幽体離脱が似合う季節。兎にも角にも早く肉体から解放されたかった。あのときの私は精神だった。6月は、幽霊。海に行こう。シーグラスみたいな透ける脆さがほしい。真っ青なかなしみみたいなアコースティックギターが欲しい。 大森靖子のハンドメイドホームが弾けるようになりたいの…。社会性を獲得するごとに子供になりたい。大人になったんですね。


Over The party


教職のグループで飲みに行ったとき、どうして免許を取るのかって話になって、体育会系の男の子が「スポーツマンとしての自分の寿命はあと10年無いから(その後は体育の先生をするつもり)」と言って空のジョッキを眺めていたあの光景がうつくしくて忘れたくない。誰よりも活発な彼が誰よりも自分の短命を見詰めている。人生かくあるべき。ヘッドホンの似合うギャルになりたいからとりあえずクロップド丈のトップスをたくさん買った。ジョセフ・ジョースターにもなりたいから良い感じ。早くなりたいもの:ガリガリの黒髪ウルフ/昔ピアスが開いていた女/青春映画の音無き絶叫/ひとりぼっち/かわいそう/かわいい。


SHINEMAGIC


ムビナナ4回目は爆泣きRTAだった。さすがに泣かないかな〜って思ってたのに。1曲目のイントロでもうダメだった…。
人間とかいう存在のことがもうずうーーっと大嫌いでダメだ。自分のことも。邪魔だしうるさいしいない方がいいし。でもアイドリッシュセブンは明るく前向きに生や日常を肯定してくれる。生きててくれてありがとう、一緒に進もうね、過去はうつくしいし今はすばらしいし明日はきれいだよってあんなに美しい生き様の星々がちょっとの綻びに銀紙を伸していのちを燃やして輝いてくれる、あの感動を3次元の私たちが受け取るたび彼らは画面以上のものをこちらに届けてくれる。「にじをかけ」てくれる。力強く優しく。なんでそんなに人間のこと信じられるのかちょっと分かんない。わかんないからすきだよ。
八乙女楽にも不条理な毎日が存在するならウチらなんて不条理の5乗くらいあるよ絶対!青年は痛みを知って大人になるから、その成長痛を愛していたいな。痛い透明な根性焼き、輝くほど死ねと言われる魔法、映画みたいなクソ人生、シャボン舞う魔法のスクリーン。映画館ってひとつの母胎だ。シネマジックで死んで生まれ変わって魅惑のライブステージから生まれた私で魔法の重力を感じて生きたい。


tokyo blackhole

最近は大森靖子の「tokyo blackhole」ってアルバムの曲ばかり聴いている。作品だけでなく人間を本気で愛してみたい。人間ってきもいけど。夏の夕暮れはエモくてちょうど悲しい。東京は穴。それらしい構造の中で無数の人間未満が蠢いている。木曜日が嫌いだ。四限と五限を好きな友達と受けらんない。精神的にきつい。いっさいのいいとこがないから自分が嫌い。絵空事ばっか考えて社会性も現実味も喪失してしまうと人とうまく喋れなくなって、気を許せる人としかコミュニケーションができなくなるのに授業違うから周りから友達がいなくなっちゃってかなしい。誰かに会いたい。

今観たい映画:パルプ・フィクション/ルル二部作
女の子の概念ばかり探している。ゼミで女学校制度とその内情についての解説を聞いて「あ、これ完全にうちじゃん」って思った。回し手紙したりかわいいシール集めたりお姉様や妹がいたりした秘密の花園だったらしい。楽しい場所だけどずっと女だけではいられなくて、卒業したら縁談見繕って結婚して散り散りになってしまう。男は悪だ。少女の世界にいらないから。いけないって分かってるけど未だに男嫌いは治らないし悪化してる気すらする。少女性の証明みたいにゆるやかに蔦を伸ばして視界を染め上げている甘い毒。野郎なんて全員死んじまえ。かわいくもないくせに。


フォーエバー・ヤング


正しくあれないことがステータスになっている。社会性を獲得したくないなあと思っていたら落とした時計の文字盤が全部取れた。将来は就職なんかしたくなくて、現実味の薄い幽霊みたいな黒髪ウルフのピアスバチバチ女になって都内の格安アパートで女の子のヒモになりたい。暑い部屋に扇風機だけまわして酒の缶ばっか転がってる狭い床でたまに思い出したようにギターを弾きたい。ウィンストンしか吸えないけど痛くてかわいそうになりたい。
バ先の好きな先輩が辞めちゃった。人との出会いっで全部が運命で、私ってずっとこのままじゃいられないんだなあって当たり前を実感させられた。誰とも別れたくない。それでも他者とコミュニケーションを試みるたびに自分という人間の奥行きのなさを自覚させられる。詰まらない奴。人が嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嘘、すきですきですきだから怖い。会話とかあんま上手くないけど、楽しくしてみるから嫌わないでほしい。
おねがい、夏だし。


フロントメモリー


引き出しの奥から出てきたネイルチップがかわいくってちょっとこの夏に飽きてしまった。髪黒いしネイルも落とさなきゃいけない。わたしのなつはしゃかいにみられている。
メイクは、ネイルは、派手髪は、ピアスは、防御だ。こんなクソッタレな社会(といっても、あなたであるところの社会は、私にとっての社会なので、だれかにとってのあたしは社会でもあるわけです)(結局視線の内部化に過ぎないんでしょうか。いいえ。いいえ)を生き抜くための。自分に自信がない分かわいいを作ってなんとかかわいくない世間を楽しみたい。毎日は手作りだよね。
とうに二十歳なんて過ぎてしまったけど、わたしはプリキュアになりたい。かわいいかおで当たり前みたいにかわいい衣装に変身して、傷ついてもかわいい。世界救いたいとかそんなんじゃなくて、崇高な魂を持ったかわいい女の子だけがいける地上の天国にありつきたいだけ。
変身バンクって祝福の可視化じゃないですか。確かにかわいい服に袖を通してメイクも上手くいって好きな香水をプッシュするあのひとときは、幸福です。世界がパチパチキラキラして見える。だからぼくは塾講をやめた。わたしはスーツじゃかわいくなれなかった。だのにこの夏はちょっとスーツを着なきゃいけない。社会性を持つわけですね。嫌だな。
何もかも、とまれ。世界が後ろにちょっとずつ戻っていきますように。


JERRY FISH


海に行ったらすること、少女性の実験と追憶。やわらかな希死念慮に身を任せてみること。去年は制服を着納めに江ノ島に、今年は遺書を書いて横須賀の海に流してきた。朝焼けを見るとか、三時のクリームソーダとか、そういうしっとりしたエモで海も楽しみたい。ああ私いつでも死ねて、だからこそ生きたいなって思える。男の子に連れられて海に行ったのはあんまりたのしくなかった。でもあたし、笑ってた。カメラロールには終始ニコニコの私が映っていて、絶望。そんなんじゃないのに。あんなんじゃなかった。でもあんなんになるしかなかったよね、だって求められてるのはそういう私だし。すくなくともこんなしみったれたこと書かない私をあたしは提供しているし、そう見られたいし、すべて自業自得で嫌気がさす。クラゲは死ぬと水に還るんだって。あたしが作ったぶよぶよで、実体のない、でもずうっと纏わりついてくる、あとたまに刺してくる毒性の透明な私もいっしょに海に還ればいいのに。

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