Dig Ki/oon -Boy Meets Girl-(Selector : KANA-BOON リーガルリリー)

(インタビュー・テキスト 齊藤綾乃)


2022年4月にレーベル創立30周年を迎えるKi/oon Music(キューンミュージック)。昨年の4月より、設けたテーマに沿ったプレイリストを1年間に渡り編成していきます。
1月のテーマは、Boy Meets Girl。恋をするとドキドキ・ワクワクしたり、時には落ち込んだり悩んだりいろいろな気持ちになりますよね。そんな恋に落ちた時に聴きたいプレイリストをレーベル所属アーティストとともに選曲。

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Dig Ki/oon -Boy Meets Girl-
Pick Upアーティスト:KANA-BOON(谷口鮪、古賀隼斗、小泉貴裕)
            リーガルリリー(たかはしほのか、ゆきやま、海)

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今回は、3月30日にリリースするフルアルバム『Honey & Darling』に収録の新曲「メリーゴーランド」を先行配信したばかりのロックバンド・KANA-BOONから、谷口鮪(Vo, Gt)、古賀隼斗(Gt.)、小泉貴裕(Dr.)と、1月19日に2ndフルアルバム『Cとし生けるもの』をリリースしたばかりのスリーピースバンド・リーガルリリーから、たかはしほのか(Vo, Gt)、ゆきやま(Dr.)、海(Ba.)の計6名が選曲会に参加。同じレーベルの先輩後輩であるKANA-BOONとリーガルリリーがお互いの印象など、ここでしか聞けないエピソードとともにお届けします

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ーーまずはリーガルリリーからKANA-BOONへの印象を教えてください。

たかはし:私は16歳のときにKANA-BOONの音楽に出会いました。
「ないものねだり」でギターの練習をしてYouTubeに弾き語り動画をアップロードしたら、結構再生されちゃって。怒られるかもって焦った思い出があります。

古賀:多感な青春時代にぼくらの音楽に出会ってくれて嬉しい!

海:KANA-BOONが大好きで、11月テーマ「sleep」のプレイリスト選曲のときには「MUSiC」を選ばせていただきました。
お母さんも私がKANA-BOON好きってことを知っていて、今日KANA-BOONと対談する話をしたら「サインもらってきなさい」ってCDを持たせてくれました。ファン丸出しでお恥ずかしいのですが…。

谷口:えー!今日持ってきてくれたの?!
書きます!書きまくります!!

ーーリーガルリリー への印象はどうでしょうか?

谷口:かっこいいことをやっているなと常々思っています。
僕が最初にリーガルリリーを知ったのは「リッケンバッカー」をリリースした時期でした。
「彼女たちは詩人だよ」って勧めてもらったので聴いてみたら、本当だ!すごく新しい才能だなぁって感じましたね。

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ーー今回のプレイリストのテーマ「Boy Meets Girl」ですが、ラブソングはどんなときに聴きますか?

たかはし:恋愛に憧れているときです。

ゆきやま:恋愛真っ盛りのときにはいらないよね。

谷口:意外と女の子たちってドライなんだね(笑)
でもKANA-BOONのメンバーも、普段ラブソングを聴くイメージはないかも。

古賀:高校時代は聴きましたよ。あ、でもラブソングじゃなかったかも。
HUNGRY DAYSの「夜空を越えて」とか。

小泉:僕もラブソングはあまり聴かないかも。
高校生のときはチャットモンチーとか、HYにハマったけど。

古賀:あー!!HYの「手紙」ね。

谷口:素晴らしい。カラオケで男女で歌えるし。

ーーお互い新曲がリリースになりましたね。まずはKANA-BOONのみなさん、リーガルリリーの新曲「惑星トラッシュ」を聴いてみていかがでしたか?

谷口:恋ってふたりで一緒に過ごしている時間だけを味わうものではないって感じたな。歌詞で言うと「君からの連絡で 仕事放り投げて 小田急線飛び乗った」ってところ。ひとりでいる道中に、ふたりを感じる感覚が僕にとってはフレッシュで面白かった。どちらかと言えば男性は、一緒にいることに注目しがちなところがあるから。でも改めて考えてみれば、ふたりのことを思い出したりするのが恋なんだなって思いました。

小泉:感情が出ているというよりは、情景が浮かぶ感覚の曲だよね。
意識して作曲したの?

たかはし:恋愛している真っ最中より、達観して自分を見ているときのほうが恋をしている感覚になるんですよね。曲作りも一緒で、一歩引いて考えるようにはしています。

谷口:サウンドもメンバーそれぞれの役割がしっかりしてて、今までみんなが培ってきたことが形になっているんだろうなってすごく伝わりました。3人組バンドならではだよね。

たかはし:収録するときも3人で演奏するのは大切にしているところです。
あと「惑星トラッシュ」はギターが難しくて、レコーディングのときも頑張りました。

古賀:たしかに難しそうだね。すごくバンドを感じる。

リーガルリリー 一同:うれしい!

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ーーリーガルリリーの皆さん、KANA-BOONの新曲「メリーゴーランド」を聴いていかがでしたか?

たかはし:とてもかっこよかったです!言葉が全部入ってきました。語感や韻の踏み方とか、どんな言葉をサウンドに当てはめればいいのとか勉強になります。どれだけ言葉数が多くなったとしても、メロディーがなめらかに進んでいくのでかっこいい。

谷口:日本語は独自の音があるから、言葉遊びがたのしいですね。
僕が曲を作るときは音が先に浮かんで、あとから言葉が出てきてパズルのようにはめていく作業をしています。

海:聴いたときKi/oon Music!って思いました。
しかもメンバーみんながそう感じていて、「なんかKi/oon Musicじゃなかった?」「わかる!!」って会話が繰り広げられました。

古賀:えー!コメントが斬新すぎる!

谷口:そんなレーベルごと僕たちに背負わせるなんて無理よ!背負い切れないよ(笑)

ゆきやま:Ki/oon Musicの所属アーティストしか持っていないサウンドなんです!絡み合いはかっこいいし、聴いていて私が知っているKi/oon Musicだ!って思いました。言葉をサウンドにはめる感じや遊び方が、KANA-BOONぽかったです。キメが多いから、ライブがかっこいいんだろうな。

谷口:Ki/oon Musicを背負ってるのか...頑張ります!


ーー恋愛をテーマに作曲するときに意識していることはありますか?

谷口:昔はそのままの出来事を曲にして、供養している感じでした。
今は格好をつけすぎない程度に詩的な表現をするようしているけど。男性からの視点でしか歌えないことってあると思うんですよね。たとえば、恋愛におけるダサさとか情けなさとか。
僕らは失恋やうまくいかないことをテーマに歌うことが多いから、男性が自分の姿を重ねて聴いて、かわいがってもらえているのかも(笑)

たかはし:私はダサさや素直な気持ちを隠し通しながら、ずっと曲を作ってきました。でも新曲「惑星トラッシュ」では全てをさらけ出したら、とても気持ちよくて。やっと今ラブソングのスタートラインにたてたような気がします。最近気がついたけど恥ずかしいことって、隠すから余計恥ずかしい。
だったら歌って丸出しにしちゃった方がいいんですよね。素敵な感情に変わってくれるから。

谷口:僕らは恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言うことが許されているから。

たかはし:たとえばケンカしたときとかに感じる怒りとか悲しみも、LINEで伝えたいって思ったことも曲にできてしまうから有利なのかもしれないですね。

ーーKi/oon Music所属のアーティストの楽曲で、オススメのラブソングがあれば教えてください。

谷口:まずはリーガルリリーの曲から「好きでよかった。」はすごくいいですね。溢れる気持ちを歌に閉じ込めて、ずっと大切にしていくような感じ。

たかはし:ありがとうございます。「好きでよかった。」は高校のときに作りました。恋はあまりしたことがなかったけど、恋愛系の漫画とか小説が好きだったから想像を詰め込みました。報われる恋愛はあまり面白くなくて、かなしい恋愛が大好きでしたね。

谷口:えー!実体験だと思ってた。

たかはし:その時は感情をあまり前に出せなかったですね...。
みんなのために曲を作っていたから、私の話を聞いても面白くないよなぁって考えてました。

谷口:そうだったんだ。あとはリーガルリリー の「風にとどけ」はBメロが素敵なメロディーでドキドキしました。自転車でふたり乗りをするほど、素敵なシチュエーションってなくないですか?

小泉:男が後ろに乗るってパターンもいい。まあ法律的にはダメですけど、法をも超えるときめきがある。

たかはし:恋愛だけじゃなくて、ママチャリでお母さんが後ろに子供を乗せるっていう想像もあります。

私が好きなラブソングはKANA-BOON「羽虫と自販機」です。羽虫がはためく羽の残像がギターから感じられて、景色がぶわーって見える。
あと歌詞もよくて...この曲も実体験ですか?

谷口:そうだね!作る曲はほとんど全部、実体験だね。
「羽虫と自販機」の題材にもなった女の子のことを歌った曲はたくさんありますね。「眠れぬ森の君のため」とか「さくらのうた」も同じ子をテーマにしてます。

海:そうなんですね!私は「HOPE」がすごく好きで、情景描写が少ないのに言いたいことが多いんだろうなってすごく感じた。言葉がすごい入っているのに無駄な言葉がひとつもなくて、素直な気持ちを見た気がして心が揺さぶられます。

あとギターサウンドもずっと裏メロみたいな感じで特徴的ですよね!インストだけで聴いてみたら全然違う曲になるのかなと思います。
まさにラブソングだなと思いました。

谷口:あんまり自分たちの曲をラブソングとは言わないんですけど、唯一「HOPE」だけはラブソングかもしれない。
僕は昔から「愛してる」って言葉を歌いたくなかった。もしかしたら、僕らの曲で「愛しているよ」を用いる曲は「HOPE」だけかも。

話は変わるけど、リーガルリリーのみんなはチャットモンチーとか世代ではないのかな?

たかはし:そうですね。先輩からチャットモンチーいいよって勧められて知りました。聴いてみたら、とても好きでした。「8cmのピンヒール」とかいいですよね。

谷口:僕らが高校生の頃は女の子が憧れるバンドといえば、チャットモンチーだったな。女の子だけじゃなくて男の子も憧れちゃうみたいな、すごく硬派なバンドなんだよね。でも「風吹けば恋」とか「染まるよ」とかピュアな恋の曲も多い。チャットモンチーの特別なところは、いい意味でのダサさとか弱さが歌詞に見えることなのかな。武骨な面や素直な感じがバンドの礎にあるから、ピュアな曲を歌ってもいやらしさが出てこないよね。

小泉:僕もチャットモンチーのラブソングしか聴いてなかったな。

古賀:高校の帰り道、こいちゃん家で「シャングリラ」のMVずっと観てたよね。

小泉:鮪がボーカルで、チャットモンチーのコピバンもしたよね。

谷口:コピバンと言えば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONもコピーしまくってたよね。「真冬のダンス」はロマンチックでいいラブソング!リアルタイムではそんな風に思わなかったけど、大人になった今は聴こえ方が変わりましたね。

古賀:ボーイミーツガールのテーマに沿っているかはわからないけど「君の街まで」は、メロディーとかにグッと来ます。

海:「君の街まで」を初めて聴いた時びっくりしました。サビで「うぅ〜う」っていうんだ!って。あとは「ムスタング」もいいんですよね。映画のエンディングに流れて、持っていかれました。

ゆきやま:最近は携帯で連絡が取れちゃったりするから、離れることが難しくなっていると思うんです。でも離れた方がいいことも多いじゃないですか?ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」は、さよならどこかで元気でって感じがいいんですよね。離れたことを肯定したり希望がある表現だと嬉しいし、好きだなって思います。

海:わかるな〜。
だけどやっぱり離れたくないって気持ちが残っているのが、KANA-BOONの楽曲だよね。自分で気持ちの整理をつけている感じがして、大人になったからこそ出てくる言葉なのかなって思います。人間らしくて素敵ですよね。

谷口:恋愛で感じた気持ちが曲になるのは、人間らしくて正しい感情だと思う。曲を作る時にキュンとくるポイントは探しているかな。
たまにメロディーと言葉が相まって、とんでもなくドラマチックなフレーズが生まれる瞬間があるかも。

たかはし:狙って作ろうとしても、作れないんですよね。

ーー他のアーティストでおすすめのラブソングはありますか?

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海:Charaの「タイムマシーン」がすごい好きです。
「時代は戻らないよね タイムマシーンはこない」って歌詞にあるんですけど、時間は戻らないって恋愛にするのに重要なポイントですよね。

ゆきやま:私もCharaは好きで、「やさしい気持ち」は名曲だと思います。
そのアーティストにしか書けないような素直な言葉や雰囲気を感じると、グッときちゃうんですよね。Charaはずっと自分だけの世界感を持っているなと思っているんですけど、この曲は彼女がどんな気持ちなのか、人に語りかけているわかりやすい歌詞もいい。
永遠のラブソングですね。

谷口:シナリオアートの「ラブマゲドン」は本当におすすめですね。
映画「アルマゲドン」と掛けてのタイトルをつけているんですけど、世界の終わりがくる瞬間に一緒にいたいっていう恋の曲。そんな素敵な瞬間を切り取って曲にしていて、恋っていいなあって憧れます。

応援ソングって頑張れの一言で完結しがちだけど、恋愛における言葉は途方もなくあるからラブソングは限界がない方がいいんですよね。
そういう意味でも「ラブマゲドン」は最高のラブソングです。


古賀:よくよく考えたらラブソングは聴いていないですね。
ただ、当時リピートしていた曲を聴くと、その時の恋愛のことを思い出すとかはあります。NICO Touches the Wallsの「THE BUNGY」とか、DOESの「修羅」とか。

小泉:全然ボーイミーツガールじゃない。
古賀だけちょっと違うから、別のパートを作った方がいいかもしれない。(笑)

古賀:いや、ある意味ラブソングですよ。
恋愛には修羅がつきものですからね(笑)


ーー今回対談してみていかがでしたか?

谷口:今まではバンド同士で接することはほとんどなかったから、今回の対談でリーガルリリーの人柄やメンバーの関係性が知れてよかった。
どんな人なのかを知ったあとに楽曲を聴いたら、どう変化するのか気になるので改めて楽曲を聴きなおそうって思いました。
あとは恋愛の曲を実体験から作っていないのが意外でした。頭の中で作り上げた世界を詩や曲にするよりすごいことだと思うので、詩の部分も見返してみたいです。

たかはし:私は逆に全部実体験ってきいて、驚きました。
恋をしている最中にもこの情景を忘れないように曲にしようっていうのは最初からあったのかな。とても素敵だなって思いました。

ーー最後に、恋に迷えるボーイズやガールズにひと言お願いします。

たかはし:もっと彼女に甘えてほしいです。

谷口:もっと甘えてもいいんだ!
僕からガールズへ伝えたいことは、かわいがってあげてほしいし、たくさん恋してほしい。恋は人が成長するうえで重要な鍵になりますからね。


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Ki/oon Musicでは毎月月末にプレイリスト”Dig Ki/oon”を公開していきます。

Dig Ki/oon -Boy Meets Girl-
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           リーガルリリー(たかはしほのか、ゆきやま、海)

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