Dig Ki/oon -Rain-(Selector : the chef cooks me下村亮介)

(インタビュー・テキスト 齊藤綾乃)

来年2022年4月にレーベル創立30周年を迎えるKi/oon Music(キューンミュージック)。今年の4月より毎月テーマ設け、季節に合わせて聴きたくなるようなプレイリストを1年間に渡り編成していきます。
6月のテーマは、Rain。一日中雨が降り続ける梅雨の時期には、気持ちもどんよりしがちですよね。しかし街の静けさや雨音、また雨上がりの景色など、この時期だからこそ楽しめる曲もたくさんあります。そこで今回は雨の日に聞きたくなるようなプレイリストをレーベル所属アーティストと共に選曲。

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Dig Ki/oon -Rain-
Pick Upアーティスト:the chef cooks me下村亮介
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今回のゲストは、最近ではLiSAの最新ミニアルバムでの編曲、また数多くのアーティストでの楽曲プロデュース、ライブサポートなど多彩な活躍を見せている、the chef cooks meの下村亮介さんです。

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ーー雨をテーマにしたthe chef cooks meの楽曲について教えてください。

下村: 2015年に発売したシングル「RGBとその真ん中」に入っている「PAINT IT BLUE」は、雨を想いながら制作しました。この曲の作り方は僕の中では珍しく、雨をテーマにした曲を作ろうと思って、メロディーより先に歌詞を書き始めました。

ーーどうして雨をテーマにしたのですか?

下村: 僕は気圧変化に弱くて、雨の日とかになると頭痛がすぐ発生してしまうんです。そのせいで梅雨の時期は苦手で、嫌だなぁと思っていたんですけど、そんな気持ちを歌にするのもいいかもなって。雨でも楽しめるように、むしろ雨だからこの曲を聴こうって思ってもらいたいと考えながら作っていました。

ーー他には雨をテーマにした楽曲はありますか?

下村: 直接的に雨のことは歌ってはいないけど、「AMBIVALENT」は雨が降って頭痛を感じるような時期に歌詞を書いていました。そもそもこの曲が入っているアルバム「Feeling」にはエフェクターをたくさん使って、全体的にじめっとした空気感にしていますね。

ーー「Feeling」のアルバムでgroup_inouのimaiさんとフューチャリングした「dip out」は、雨のような雰囲気を感じるのですがどうでしょうか?

下村: あ、それは間違いではないです!よく気がついてくださいましたね。この曲は僕がひとりで活動することになるであろうって予知して書いた歌詞です。曲の説明を一切していなかったので、その背景を読み取れている人はそんなにいない。「回転体」のアルバム曲の歌詞とかを引用しているけど、トップリスナーくらいしか気がついていないんじゃないかな(笑)
imaiさんと曲を作る時に、「回転体」ツアーのこととか、僕の好きなgroup_inouの「BLUE」を聴いて考えていました。ちょっと気怠そうな雰囲気で水とかの言葉が出てくる曲なんですよね。そんなこともあり「dip out」にこの時の気持ちが反映されいるような気がします。


ーーそんなエピソードがあったのですね!他のアーティストで、思い浮かぶ雨の楽曲はありますか?

下村: レーベルを関係なくお話すると、梅雨時期に聴く洋楽ではB.Jトーマスの「Raindrops Keep Fallin' on My Head」です。僕の中では雨ソングNO.1!
1960年代の名作映画「明日に向かって撃て」の曲で、雨の日も悪くないなって思えるポップさ。コード進行も綺麗ですよね。自分のバンドでもカバーしてました。
邦楽だと、雨といえばeastern youthです。「雨曝しなら濡れるがいいさ」なんて楽曲はまさに雨に打たれ、抗う感じがします。高校生の時メロディックパンクを聴いていて、かっこいいなと思いました。

ーー下村さんがeastern youthを挙げるのは少し意外でした。

下村: eastern youthは当時の僕にとってはすごい新鮮で、ハマりました。この世代のアーティストは、先輩から教えてもらうことも多くて音楽を始めたきっかけです。秦基博さんが僕と同じ部活で2つ上の先輩なのですが、秦さんがMr.Childrenとかエレファントカシマシを歌っていたのでよく聴いていましたね。当時から抜群の歌唱力でした!
新海誠監督の「言の葉の庭」っていうアニメ映画で、秦さんが大江千里さんの「Rain」をカバーしたのも素敵でした。原曲も名曲だけど、秦さんが歌うとより現代的になって違った聞こえ方がします。大江千里さんのメロディって、いきなり転調したり不思議。はっきりしないメロディーラインが好きですね。

ーー素敵な曲ですね!他に雨の日におすすめしたいKi/oon Music所属アーティストはいますか?

下村: ASIAN KUNG-FU GENERATIONですね。中でも1-2位を争うくらい好きな曲は「迷子犬と雨のビート」です。UKサウンドなんだけどアメリカンなアプローチ。2つの音楽要素の間のような、こういうパターンの時が僕は好きですね。
あと雨をテーマにといえば「雨上がりの希望」は歌詞がいいなぁ。ゴッチさん(Vo 後藤正文)が雨のことを歌っている歌詞って結構あると思うけど、ちゃんと希望があるというか、雨って悪くないなって思わせてくれる。綺麗なメロディーラインですごくいい曲です。
希望とは違う雨の描写を書いているのが「極楽寺ハートブレイク」と「鎌倉グッドバイ」だと思います。この2曲が入っているアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」は、梅雨の時期に合いそう。江ノ電を乗ったことある人には身近に感じられますし。

ーー確かに歌詞にも6月とか入っていますよね!他にもおすすめしたいアーティストはいますか?

下村: 今回の企画で絶対に話したいと思っていたのが、砂原良徳さんです。電気グルーヴのメンバーを卒業後は、ACOやスーパーカーのプロデューサーとしても活躍されてKi/oon Musicになくてはならない存在ですよね。僕がいいなと思った曲は、ほとんど砂原さんが関わっています。

ーーそうなんですか?具体的にはどの曲ですか?

下村: まず電気グルーヴの楽曲でいうと「虹」です。僕の中では、「虹」を聴くとフジロックに結びつきます。フジロックのような雨が多いフェスでこの楽曲が流れたら最高だな!と思いながら聴いてました。
学校でお昼の放送に「VITAMIN」のアルバム曲がよく流れていた。「虹」を聴いた時は、中学生ながらいい曲だなと思ったのを覚えています。

高校生になると、ACOを知って「悦びに咲く花」が好きになりました。洒落ているエレクトニックな部分と90年代のアメリカのヒップホップサウンドが混ざったような。あとは「雨の日のために」の歌詞はディープな世界観だけど、サウンドでよりフォーカスさせたり、逆に中和させたりしているような独特な雰囲気を感じる。よくよく調べたらプロデュサーが砂原さんで、だから好きなんだなって思いました。

ーースーパーカーはどうでしょうか?

下村: 2002年にリリースした4枚目のアルバム「HIGHVISION」は、僕の殻を破るような衝撃でした。それ以前のスーパーカーの楽曲は、オルタナティブロックを日本ポップスにうまく落とし込んでいて尖っててかっこいいなと思っていたけど。「HIGHVISION」で音楽の方向性が激変しましたよね。ドラムやシンセサイザーの独特な音に、弦楽器の音色のようなストリングスを曲に重ねて、当時は考えられないような音楽のつくり方でいいなと思いました。調べたらやっぱりプロデューサーが砂原さんでした(笑)

ーー面白いですね。スーパーカーでおすすめの曲はありますか?

下村: 「Rainbow Rain」は雨の日に聴くのにおすすめです。歌詞はないので、直接的に雨について触れているわけではないですけど。だからこそ実際に雨の日に聞くと、考え事したり自分ごとにしやすい。うまく雨と向き合わせてくれるなと思います。

あと砂原さんと言えば、2001年にご本人がリリースしたアルバム「LOVEBEAT」も大好きです。スーパーカーのプロデュースと並行していた時期ですね。こちらも歌詞や歌の要素はほとんどないですけど、気怠い感じ。その当時の自分の生活とも照らし合わせて、勝手に喪失感を背負って聴いていました。アルバム内の「SPIRAL NEVER BEFORE」は、雨の日に聴くのもいいですよ。
「LOVEBEAT」の発売から20周年を記念して、新たなミックス、マスタリングを施したリマスター版が2021年9月に出る予定なので、絶対買います!

ーーそれは楽しみですね!雨をテーマにした楽曲を沢山教えてくださって、ありがとうございます。

下村: 今回のプレイリスト企画はいいチャンスだと思って、雨をテーマにした楽曲を改めて聴いたら発見が多かったですね。僕がアジカンをサポートさせてもらって9年くらい経つのですが、雨という視点で聴いてみるとゴッチさんの歌詞が素敵だなとか再確認したり。砂原さんはKi/oon Musicの立役者じゃないかと思ったり。Ki/oon Musicのアーティストは個性豊かですよね。

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Ki/oon Musicでは毎月月末にプレイリスト”Dig Ki/oon”を公開していきます。今月は3つのプレイリストを公開中。

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Dig Ki/oon -Rain-
Pick Upアーティスト:the chef cooks me下村亮介
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「雨」をテーマに選曲した6月のマンスリープレイリスト


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