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【改正公益通報者保護法】2022年6月1日スタート!改正ポイントをわかりやすく徹底解説

パワハラをはじめとしたハラスメントが多発しています。
また、「内部通報したことで会社から解雇された…」といった事例も発生しています。

そこで、

●通報者をより保護することが必要
●内部通報制度のさらなる活用を促進することが必要
●問題の早期是正により被害を防止することが必要

これらの課題を解消することを目的に、
改正公益通報者保護法が2022年6月1日からスタートします。

今回は、
●公益通報者保護法改正ポイント3選
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。

■改正ポイント1:安心して内部通報しやすく

労働者数300人超の事業者については、内部通報体制整備(内部通報窓口の設置、内部受付業務従事者・調査業務従事者・是正措置業務従事者の指定等)が義務化されることになります。
(※中小事業者(従業員数300人以下)は努力義務

また、「行政措置」が導入されることになります。
具体的には、処分権限のある行政機関は、事業者の内部通報体制整備が十分でないと判断した場合、当該事業者に対し助言・指導・勧告することができます。
勧告に従わない場合は、当該事業者名を公表することもできます。

「守秘義務」が新設されることになります。
内部受付業務従事者・調査業務従事者・是正措置業務従事者に対し、通報者を特定させる情報について守秘義務を負わせ、守秘義務違反者に対しては30万円以下の罰金が科されることになります。

したがって、「安心して通報しやすくなっているか」「通報者が保護されやすくなっているか」の観点から自社の内部通報制度を設計し、実効性の高い内部通報制度を構築することが求められます。

また、内部受付業務従事者・調査業務従事者・是正措置業務従事者については、公益通報者保護法や消費者が公表する「指針」「指針の解説」についての知識が求められるとともに、コミュニケーションスキル等が求められるなど、一定の能力・適性を有する者を指定することが必要です。

■改正ポイント2:行政機関等への通報を行いやすく

権限を有する行政機関への通報、また、報道機関等への通報条件が緩和されることになります。

公益通報には次の3種類があります。

1.内部通報(事業者への通報)
2.外部通報(行政機関への通報)
3.外部通報(マスコミ等への通報)

●「1.内部通報(事業者への通報)」の保護要件

公益通報者の保護要件は、「通報対象事実※が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」です。

公益通報者が主観的に通報事実があると信じて公益通報した場合、公益通報したことを理由として、雇用元(旧雇用元)や派遣先(旧派遣先)から不利益な取扱い※を受けたとしても、法律が公益通報者を保護しようとするものです。
(※不利益な取扱い:解雇、降格、減給、退職金の不支給等)

※通報対象事実
 ・「対象となる法律(令和3年2月1日現在:474本))」に
   違反する犯罪行為
    +最終的に刑罰につながる行為
 ・「対象となる法律」に規定する過料の理由とされている事実
    +最終的に過料につながる行為(新設)

●「2.外部通報(行政機関への通報)」の保護要件

公益通報者は、次の1.2.のどちらかの要件を満たすことで、雇用元(旧雇用元)や派遣先(旧派遣先)から不利益な取扱いを受けたとしても、法律が公益通報者を保護しようとするものです。

1.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合

※信じるに足りる相当の理由がある:「真実相当性」といわれるもので、単なる憶測等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要
(これが、外部通報(行政機関への通報)のハードルを上げる要因になっている。)

※行政機関:通報対象事実について、法令に基づき勧告や命令を行うことができる機関をいい、各府省庁等のほか、都道府県等の地方公共団体も含まれる。

2.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料し、かつ、次の事項を記載した書面(電子メール等を含む)を提出する場合

①公益通報者の氏名または名称および住所または居所(通報者への連絡が取れること)
②当該通報対象事実の内容(通報内容の合理的根拠が認められること)
③当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由(通報内容の合理的根拠が認められること)
④当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由(行政処分や行政指導が行われるべき理由)

この「2.」については、「1.」で求められる「真実相当性」は必要なく、客観的な証拠といった真実相当性がない場合であっても、自分の氏名等を記載した書面を行政機関へ提出すれば、仮に通報対象事実がなかったとしても、公益通報者は責任を問われることはありません。

●「3.外部通報(マスコミ等への通報)」の保護要件

公益通報者は、次の1.2.の両方の要件を満たすことで、雇用元(旧雇用元)や派遣先(旧派遣先)から不利益な取扱いを受けたとしても、法律が公益通報者を保護しようとするものです。

1.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合(真実相当性が必要)

2.次のいずれかに該当する場合

①内部通報(事業者への通報)・外部通報(行政機関への通報)をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信じるに足りる相当の理由がある場合
(以前、同僚が内部通報したところ、それを理由として解雇された)

②内部通報(事業者への通報)をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある場合(会社ぐるみで法令違反が行われている)

③内部通報(事業者への通報)をすれば、事業者が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信じるに足りる相当の理由がある場合(新設)

④事業者から内部通報(事業者への通報)・外部通報(行政機関への通報)をしないことを正当な理由がなくて要求された場合(誰にも言わないように上司から口止めされた)

⑤書面(電子メール等を含む)により内部通報(事業者への通報)をした日から20日を経過しても、当該通報対象事実について、事業者から調査を行う旨の通知がない場合又は事業者が正当な理由がなくて調査を行わない場合(勤務先に書面で通報して20日を経過しても何の連絡もない)

⑥個人の生命・身体に対する危害又は個人の財産に対する回復困難若しくは重大な損害が生じる急迫した危険があると信じるに足りる相当の理由がある場合(「個人の財産に対する損害」が新設)

権限を有する行政機関への通報、報道機関等への通報の条件が緩和され、行政機関等への通報が行いやすくなることから、「1.内部通報(事業者への通報)」、つまり、自社の内部通報制度のさらなる活用を促進し、自社内の問題を自社内で把握し、早期是正することにより被害を防止することが求められます。

■改正ポイント3:通報者がより保護されやすく

次のとおり、保護される通報者に「退職者(退職後1年以内)」「役員」が追加されることになります。

1.退職から1年以内の労働者を保護対象に追加
 現役の労働者に加え、退職から1年以内の労働者(労働者であった者、派遣労働者であった者等)も公益通報を行うことができる。

2.役員を保護対象に追加
 役員※も公益通報を行うことができる。

 ※取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、法令に基づき法人の経営に従事している者。ただし、会計監査人は含まれない。

本事項について社内規程に規定し、幅広く通報を受け付ける体制を整備する必要があります。

それでは、今回のまとめです。

今回は「公益通報者保護法改正ポイント3選」について、解説しました。
1.安心して内部通報しやすく
2.行政機関等への通報を行いやすく
3.通報者がより保護されやすく

コンプライアンス経営を実践する基盤の一つが「内部通報制度」といえます。
本制度が役職員や組織自身を守ることにつながります。

また、お客様、取引先、行政機関そして地域社会との信頼を高める切り札にもなります。

改正公益通報者保護法の施行を組織風土改革の絶好の機会と捉え、良いことも悪いことも共有・シェアできる組織・職場を作っていきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)

【追伸】

【改正公益通報者保護法に対応】
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【追伸2】

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