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両親が最近やけに優しい

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この四月で社会人になり丸一年が経過したが、最近気になることがある。両親がやけに優しい。特に母親が顕著だ。両親と共暮らしの身であるが、休日に顔を合わせるとまるで数年ぶりに顔を合わせたかのような反応だ。元気かい?としきりに尋ねては大丈夫と答えたり。洗濯したワイシャツにアイロンを当てようと思ったら既にキレイに出来上がっていたり。確かに去年は色々と心配させた。新卒から半年で転職した息子が心配で仕方ないのだろう。そう思うと余計に苦しい。独りで泣いたりもした。このことを職場の人と世間話的な感じで話すと親はいつになっても子が心配なのさ、とずっしり重く返してきた。

今の職場は勤務形態が少し特殊なので、始業時間や終業時間が常識はずれなところがある。それが余計に両親の不安の火種かもしれないが、きちんと休みもあり自分的には納得がいっている。この前、上司がお前に新しい仕事を任せたいと吹っかけてきた。自分自身は仕事を受けたい気でいるけれど、その増えた分また親が心配するのではという不安もよぎる。もういい歳なんだし親の心配を気にするのもと思うかもしれないが、共暮らしの身分であるから同居人である親の意見をまるっきり無視して不安にさせるのもどうかと思う。

親はいつになっても子供が心配なのさ、という言葉が頭の中で交錯する。もちろん自分は自分であるが、誰かの支えのもとに成り立っている。その支えてもらっている気持ちを踏みにじってまで進んでいく勇気はない。でも心配してくれる気持ちは凄く感謝したいけれど、どこか気持ち悪い感情がにわかに湧いたりもする。小さい頃はあんなに親に甘えて、ずっと親の膝から離れたくないなんて思ったりしたのに。一方で親なんかパーって放ったらかしにして一人でマンションに住んで働いて、休みは遊びまわっている(そう見えているだけかもしれない)友人に聞いてみたい。君の親は最近優しいか?って。少なくともこの優しさは二十代前半の僕らは誰も持ちやしない感情のひとつかもしれない。

絹掛

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