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案外 書かれない金継ぎの話 (4) 修理の手順

材料を買って金継ぎを始めたが、思ったより難しく挫折したのでやり直してほしいというお話は毎年頂きます。金継ぎは、個々の作業は複雑ではありませんが、手順を間違えると手に負えなくなるのも事実です。今回は、金継ぎに挑戦しようという方へ、始める時のアドバイスです。

先に結論を

器の壊れ方は大別すると、ヒビ、欠け(亀裂含む)、破損の3つがあります。金継ぎを始めようと思う方は
ヒビ止め修理 → 欠け埋め修理 → 破損接着修理
の順で練習をするのがお勧めです。
破損接着は見栄えもするので、雑誌の紹介記事などでは、いきなり破損接着修理を勧めるものが多いように思います。しかし破損接着は手順や注意点が多い上にヒビ止めや欠け埋めを伴う場合もあり、初めてやるにはハードルが高く器を傷つけたり汚して台無しにしてしまう事もあります。
「案外 書かれない金継ぎの話」では、ヒビ、欠け、破損の順に修理方法の解説を行っていこうと思います。

難しいのか、大変なのか

私は作業を始める前に、まず修理の分類をすることにしています。

大切なのは修理の手順が見える見えないかの分類です。言い方を変えると、これまでの修理経験を利用して直せるか、新しい方法を考えないといけないか、で分けます。(初めて金継ぎをする人は、当然、何も分からない状態なので、手順書と似た壊れ方の器かどうかを比較してみると良いでしょう。似た壊れ方であれば手順書の内容をまねて修理することが出来ます。)

手順が見えない時は『難しい』とラベル付けして、取り合えず珈琲を淹れて飲みながら壊れた器をよく観察することから始めます。手順の推測は非常に重要で、手順を誤ると修理による器のひずみが原因で、修理しなくても良かった箇所にヒビや亀裂が生じ修理の手数が増えてしまうこともあります。

手順が見える時は、終了までの手数を予想し、手数の多いものに『大変』とラベル付けします。『大変』は時間こそ掛かかりますが手順を間違えず冷静に進めれば必ず終わります。
しかし焦って手順を間違えると『難しい』に入り込んでしまい頓挫します。『難しい』事になってしまった時は作業を止め、『大変』にクラスチェンジ出来るよう手順を見直す事に専念するのが近道です。

修理の手数てかず

金継ぎ作業で金を蒔くまでの最短の手数(実用可能になる必要最低限の手順)は、ヒビ止めが5手、欠け埋めは8手、破損接着は11手(実際には何度か繰り返す作業もあるので、ここまで一直線に進む事は稀です)くらいだと思います。
各作業の詳細は、追々、別の記事で書きますが、概ね以下の表のような流れで進みます。

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基本的な修理手順

欠け埋めはヒビ止めの約1.5倍破損接着はヒビ止めの約2倍の手数が必要です。
また、ヒビは、長さの違いはあってもヒビ止め作業だけを行えばよいですが、欠けはヒビを伴う事が多いので、(8+α)手。破損は欠けとヒビを伴う事もあるので、(11+α+α)手、と手順や手数が複雑になっていきます。
「ヒビ」より欠け、「欠け」より「破損」の方が修理が複雑だという事はご理解頂けたと思います。

ちなみに、手数が増えると、ひと作業毎に漆を固めるための時間が必要になりますし、修理に使う材料や道具も増えるので、買ったり保管場所を考えたりと、修理作業以外の事も増えます。

始める前からいろいろ書いて、それだけで挫折してしまっては元も子もないのですが、金継ぎを始める時に手順や手数の把握は重要な要素だという事を頭の隅に置いて頂けたら、始めてから失敗したと思う事が少なくなるのではないか、と思います。
まずは手数の少ない修理から順に、材料の性質を理解しながらステップアップしていくのが得策です。

(つづく) - ご質問は気軽にコメント欄へ -

(c) 2021 HONTOU,T Kobayashi

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