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今考えた嘘だけど、ちょっといい話

それはある日曜日の出来事でした。

入院している祖母のお見舞いの帰り、バスに乗った時の話です。

わたしが乗車した時点で、そのバスには他に5人ほど乗っていました。

赤ちゃんを連れたお母さんと、男子学生と、若いカップルがいたのを覚えています。

突然、赤ちゃんが泣きだしました。お母さんはすぐに赤ちゃんをあやし始めましたが、なかなか泣き止みません。

それを見ていた男子学生はその親子の席に近づくと、

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自称野球選手

ピーッ、ピーッ、ピーッ。

「はいじゃあ移動の方お願いしますねー」

「あ……あーっ! おいちょっと待てよ! それ俺の車!」

「あなたですか、ここに車停めてたの。じゃあ違反切符切るからこっち来てもらえますか?」

「なんだよ! 戻ってきたんだからレッカー止めろよ!」

「申し訳ないんだけど、もう処理しちゃったから。引き渡し手続きは署の方でお願いしますね」

「まだそこにあるだろ、車! 罰金は払う

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機内にて

「お客様の中に獣医様はいらっしゃいませんか!?」

キャビン・アテンダントの声に、わたしは目を覚ました。

飛行機が空港を飛び立ってからどれくらい経ったのかも、にわかには把握できないほど眠っていた。

「……すいません、わたしは医者ですが」

そう言ってそのキャビン・アテンダントに声をかけたが、彼女は少々困った表情で、

「あの……獣医様ではないのですよね?」

と聞き返してきた。

「いえ、外科

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もっと走れメロス

メロスはまたもや激怒した。原因は、「ヤマザキ春のパンまつり」にて貯めたシール(それらはプレゼント交換用の専用台紙にびっしりと貼られている)を景品である白い皿と交換してもらおうと最寄りのコンビニに出向いた際の店員の言動にある。

「――ですから、この台紙にも書かれているように、【※キャンペーンは景品が無くなり次第終了】なのですよ、お客さん。在庫はもう無いんです。それに、一皿もお渡しできないのであれば

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沈黙の女

仕方がない、最後の手段だ。

何とか手荒な真似をせずに済むよう試行錯誤して来た私だが、いい加減何らかの結果を出さなければならない時期でもあった。依頼者は長い目で見ているから好きにして良いと言ってくれているものの、その表情は明らかに焦っていた。

長い間この依頼者の豪邸で過ごしてきた私だったが、最近はこの屋敷暮らしを失いたくなくてチンタラとした日々を送っているだけなのではないかと自問するようになり、

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オオカミと少年

「オオカミが来たー! オオカミが来たぞーっ!」

少年は大声で村人たちに呼びかけましたが、誰一人驚く人はいません。

「またあいつか。どうせ今度も嘘だろう」

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「……ちょっと。ねぇちょっと!」

「あ、オオカミ」

「あのちょっとこっち来てもらえますか!?」

「なんだよ」

「何ですかこれは。村の人誰も怖がらないじゃないですか!」

「いやぁ…もう5度目だからなぁ」

「何回目だろうが関

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問題発生

「ヒューストン、問題が発生した」

打ち上げに沸いたのもつかの間、スピーカーから聞こえてきたのは操縦士の深刻な声だった。

「こちらヒューストン、一体何があった?」 

「いいか、落ち着いてよく聞いてくれ。……『上は大水、下は大火事、これなーんだ?』」 

管制塔は一瞬にして沈黙に包まれた。 
「上が大水で…下が大火事だと!?」 

「大気圏外から見て、地球上の何処かで大災害が発生しているというこ

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改造手術

「うっ……ここはどこだ?俺は……一体……」

「お目覚めのようだね」

「お前は誰だ!」

「そのうち分かる」

「ぐっ、身動きが取れない……これを外せ!」

「そうはいかん。君にはこれから脳手術を施さねばならんのだ」

「まさか……俺は……何かの実験台なのか!?」

「そう、君の体をちょっと改造させてもらうよ」

「なんだと!」

「目覚めた時、君は今までの君とは違う、新しい能力を持っているのだ

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売る少女

今日はクリスマス・イブ。

行き交う人々は誰もが幸せそうで、ある人はプレゼントを抱えながら、またある人は恋人と手をつなぎながら家路に急いでいます。どこかでベルをカランカランを鳴らす音がしたり、お店の前に立っているサンタクロースさんが突然ホッホッホーと笑い出したり。一年に一度の、素敵な日です。

街はすっかり雪化粧。まるでタンポポのような白くて綺麗なたくさんの雪が、空からどんどん舞い降りてきます。

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取り立て

「まいど」 

「あ!エヘヘ・・・こんちわ」 

「こんちわじゃないよ、まったく! ……何度も何度も足運んでね、こっちも今日という今日は持って帰んないと商売あがったりなんだよ!」 

「いぇ、わかってんですがね。えー……申し訳ないんですがもうしばらく……」 

「冗談じゃないよ!あのねぇ、アンタが叶えたい事があるっていうから話を聞いてやって、契約して、散々面倒見てやったんじゃないか。今更手のひら返

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