得意料理

私は高校を卒業した後
専門学校に通うため、大阪へ引っ越した。
最初の1年は寮に住んだけど
2年目からは一人暮らしを始めた。

あいだ、2~3年ほど
実家に戻ってたこともあるので
一人暮らし歴は大体20年弱ぐらいになる。

有難いことにどこで暮らしていても
実家からコシヒカリが届くので
自炊することも多かった。

お惣菜を買っちゃうこともあったけど。

といっても自分一人のために作るものは
大体、料理名があってないようなもの。
例えば、
『豚肉とモヤシを焼肉のたれで炒めたの』
とか、
『豚キムチ炒めたけど辛かったからチーズ入れたやつ』
とか。

『得意料理は?』
と聞かれても料理名を言えるものはなかった。
そもそも、料理得意じゃないし。

そんななか、私が20代後半の頃に
一緒に働いていた20歳の女の子は
私が悩みに悩んで、
特にない…と答えた後
自信満々に
『カルピス!』
と答えた。

『ん?カルピスって料理なん?』
おばちゃんたちから、
総ツッコミをうけていた。

しかし、その子は怯むことなく
水とカルピスの絶妙な配分が得意なんだと
熱弁をふるっていた。

そうか…
手の込んだハンバーグとか
ロールキャベツとか考えて、
得意なわけない!
って答えられなかったけど
手が込んでなくてもいいのか…。
そう思った。

それでも、得意料理が浮かばない。
名もない食べられる料理を
作り続けるしかないのだ。