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たい(小説とうたうたい)
2017年5月1日 15:26
週末のその日、美沙は意図的に時間を取って【空白】を作ることにした。理由は、牧師さんのメッセージの中で印象に残った言葉からだった。「静まって、わたしが神であることを知れ。」「静まり、なにかをすることを止めることで、神が語り、働かれる空間・スペースを作ることができるのです。」 確か牧師さんはそんな風に言っていたように記憶している。「祈りとは、耳を傾けることです。目に見えない神の語りかけ
2017年5月1日 15:25
「おーっす、美沙!」「千尋ちゃーん。」 地下鉄のホームで待ち合わせた二人は、蒸し暑い天気だったからか、やたら肌の露出の多い服装だった。千尋は明るいミントグリーンのノースリーブに編み目の粗い上着を羽織っていた。ホットパンツからすらりと伸びる長い足にふり返る男性もいた。美沙はふわりとした明るいオレンジ色のスカートにパステルイエローのキャミソール、胸に白いウサギのマークをあしらった柔らかいグレー
2017年5月1日 15:24
その晩、美沙は眠れなかった。 だんせい。 男性。 ダンセイ。 ぐるぐるぐるぐる。 10時半を回っていたが、美沙はがばと起き上がり、上着を羽織って1階へ降りていった。「あら美沙、眠れないの?」 母がリビングで帳面をつけていた。「うん……。」 すとん、と母の隣のとなりの椅子に座る美沙。視線はテーブルに落ちたままだ。母はちら、と美沙を見たが、すぐに帳面に目を戻した。話