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「コロナワクチン、アナフィラキシーへの対策は?」

2021/04/18


TONOZUKAです。


コロナワクチン、アナフィラキシーへの対策は?


以下引用

 日本アレルギー学会は、新型コロナウイルスワクチン接種による重度の過敏症への管理や対処法に関する指針をまとめ、2021年3月12日に改訂した(「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」)。この指針を基に、アナフィラキシー発生時の対処法や注意を要する接種対象者の特徴などについて解説する。
 新型コロナウイルスのワクチンの接種が日本より先行している欧米では、重度の過敏症であるアナフィラキシーを来す頻度が従来のワクチンよりも高いことが報告されている。米国では、Pfizer社およびModerna社が開発したmRNAワクチンが承認されている。1月27日時点での米国疾病予防管理センター(CDC)のまとめによると、各ワクチンの接種後、それぞれ100万接種当たり4.7例および2.8例の頻度でアナフィラキシーが報告されている。一般的にワクチンによるアナフィラキシーの頻度は100万接種当たり1.3例程度だ。

 しかし、新型コロナウイルスのワクチン接種後のアナフィラキシーであっても、対処法は他の原因によるアナフィラキシーの場合と変わらず、適切な対応により回復する。指針では、ワクチン接種に際してはその益と害のバランスを考える必要があり、副反応に対する過度な懸念や対応は社会に大きな損失と負担をもたらすと指摘している。
アナフィラキシーの機序

 ワクチン接種による全身症状のうち、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱などは、ワクチン接種後数時間~数日後に現れる一過性の現象で、機序は明らかではないもののワクチンによる正常な免疫応答の一部と考えられる。一方のアナフィラキシーは、アレルゲンなどの侵入によって複数の臓器にアレルギー症状が惹起され、生命に危険を与える可能性のある過敏反応であり、ほとんどが接種後数分~十数分以内に発現する。

 ワクチン接種後のアナフィラキシーは、免疫原であるワクチン主成分やアジュバント、保存剤などの添加物に対するIgE抗体を介して、マスト細胞が活性化することで症状が引き起こされると考えられている。従ってアナフィラキシーへの対策には、ワクチンのどの成分に対してIgE抗体が産生されるかを特定することが肝要になる。

 新型コロナウイルスのワクチンにアジュバントや保存剤は添加されていない。しかし、Pfizer社およびModerna社のmRNAワクチンには、mRNAが封入された脂質ナノ分子を形成する脂質二重膜の水溶性を保持する目的でポリエチレングリコールPEG)が使用されており、これがアナフィラキシーの原因になり得る。なお、AstraZeneca社製のワクチンには、PEGと交差反応性を持つがPEGよりも分子量の小さいポリソルベート80が添加されている。

 PEGはマクロゴールとも呼ばれ、様々な食品に乳化剤として添加されている。また、化粧品や軟膏基材、慢性便秘治療薬、大腸内視鏡検査前処置用の腸管洗浄剤などに使用されているほか、薬物動態の安定化のために種々の注射薬に添加されている。広範にPEGが使用されていることを考慮すると、一般にPEGを原因としたアナフィラキシーの発生頻度は高いとは言えないものの、これまでに薬物アレルギーや原因不明の特発性アナフィラキシーとされていた患者の中に、PEGに対する過敏反応が含まれている可能性は否定できないとしている。

 また、米国では、Pfizer社ワクチンによるアナフィラキシー例の94%、Moderna社のワクチンによるアナフィラキシーの全例が女性であったとの報告もあることから、化粧品による経皮感作の可能性も否定できないとしている。ただし、PEG特異的IgE抗体の測定系は確立していないことから、アナフィラキシーの誘発機序や実態解明については今後の課題であると指摘している。

ワクチン接種に注意を要する対象者

 3月時点で日本で承認されている新型コロナウイルスのワクチンは、Pfizer社が開発した「コミナティ筋注」のみ。このワクチンの接種不適当者として、以下の4例が挙げられている。ただし、(3)以外は一時的な接種延期でよいとしている。

(1)明らかな発熱を呈している者
(2)重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3)本剤の成分に対し重度の過敏症の既往歴のある者
(4)上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

 「重度の過敏症」に該当するのは、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下など、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状を呈した場合。1回目のワクチン接種時に、血管迷走神経反射や発熱などの副反応を呈したケースは接種不適当には該当しない。一方、1回目の接種時に重度の過敏症を呈した場合には、2回目のワクチン接種は避けるべきだとしている。

 また、ワクチンの成分(特にPEGや、PEGと交差反応性を有するポリソルベートを含む薬剤)に対する重度の過敏症の既往がある場合は、専門医による適切な評価と、重度の過敏症の発症時における十分な対応が可能な体制下でない限り、ワクチンの接種を避けるべきだとしている。

 コミナティ筋注の接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者)としては、以下の6つの例が挙げられている。

(1)抗凝固療法を受けている者、血小板減少症または凝固障害を有する者
(2)過去に免疫不全の診断がなされている者および近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
(3)心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患を有する者
(4)予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者および全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
(5)過去に痙攣の既往のある者
(6)本剤の成分に対して、アレルギーを呈する恐れのある者

 (4)のうち全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある場合、および(6)に該当する場合は、アナフィラキシーなど重度の過敏症に対応できる体制の下でワクチンを接種し、接種後の観察時間も30分以上とする。

 (6)で言及されているワクチンの成分のうち、アナフィラキシーの原因となる可能性があるのは、PEGおよびそれと交差反応性があるポリソルベート。特定の医薬品使用後にアナフィラキシーの既往がある場合、添付文書でその薬剤にPEGまたはポリソルベートが含まれていたかを、ワクチン接種前に確認する必要がある。指針では、PEGまたはポリソルベートが含まれる医薬品リストが掲載されている論文(J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;S2213-2198(20)31411-2.)を紹介している。

 なお指針では、ワクチン接種前に予防的にヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与することは、かえってアナフィラキシーの初期症状を不明瞭にする危険性があるため、好ましくないと指摘している。ただし、他の疾患に対して投与中のヒスタミンH1受容体拮抗薬については、投与を中止する必要はないとしている。

 また、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、ワクチンや医薬品(注射)以外の物質(食品、ペット、ハチ毒、環境[ハウスダスト、ダニ、カビ、花粉など]、ラテックスなど)に対するアレルギーを有する場合も、新型コロナウイルスのワクチンを接種することによるアナフィラキシーの発症リスクは変わらない。ただし、コントロール不良の喘息患者は、アナフィラキシーを来した場合に重症化するリスクがあるため、これらに対応できる医療機関での接種が望ましいとしている。


この辺りから専門的な話になってきますが、引用しておきます。


アナフィラキシー対策に必要な体制

 指針ではアナフィラキシー発生時に備えた対策として、下記の医薬品と備品を接種現場に準備することを推奨している。また、ハイリスク症例に対する接種に際しては、これらに加えて標準的な救急カートと、パルスオキシメーターや挿管セット、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の注射薬などの医薬品を追加で備えることが望ましいとしている。

【一般のワクチン接種現場に必要な医薬品・備品】
◆血圧計、静脈路確保用品、輸液セット
◆アドレナリン注射薬0.1%(2本以上)
 ・ボスミン注1mgまたはアドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」
 ・自己注射薬「エピペン注射液0.3mg」でも可
◆生理食塩水20mL(5本以上)/500mL(2本以上)
◆ヒスタミンH1受容体拮抗薬(5錠以上)、
 ・PEG(マクロゴール)を含まないもの(例、ビラノア錠、ルパフィン錠、アレグラOD錠など)を推奨
◆副腎皮質ステロイド薬注射薬(2本以上)
 ・ヒドロコルチゾン(ハイドロコートン、ソル・コーテフ、サクシゾンなど)またはメチルプレドニゾロン(ソル・メドロール、ソル・メルコートなど)
 ・PEG、ポリソルベートを含むものは不可(例、デポ・メドロール)

【ハイリスク症例への接種を行う現場に必要な医薬品・備品】
◆パルスオキシメーター
◆酸素ボンベ(流量計と延長チューブ付き)、経鼻カニューレ・使い捨てフェイスマスク
◆挿管セット
◆ヒスタミンH1受容体拮抗薬注射薬(2本以上)
◆吸入短時間作用性β2刺激薬(pMDI)とスペーサー(2セット以上)
◆グルカゴン(β遮断薬を投与中で、アドレナリンが無効の場合に使用)
アナフィラキシーの診断

 通常の接種対象者に対しては、ワクチン接種後には15分の観察時間を設ける。過去にワクチンや他の医薬品による即時型アレルギー反応・アナフィラキシー歴がある場合や、コントロール不良と思われる気管支喘息患者への接種後は、少なくとも30分程度の観察が望ましいとしている。即時型アレルギー反応・アナフィラキシー歴があり、β遮断薬を投与中の患者については、医療機関での接種を推奨している。

 観察時間内に注射部位以外の皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、皮膚の発赤・紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹や刺激感、目のかゆみ・眼瞼腫脹、くしゃみ・鼻汁・鼻のかゆみ・鼻閉などの鼻炎症状。アレルギー性鼻炎患者は明らかな症状の増強)が出現した場合は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を内服させ、症状が改善するまで観察する。症状が改善しない場合は、最寄りの医療機関受診を指示する。

 ワクチン接種後30分以内、もしくはアレルギー反応の観察中に、(1)前述のアレルギーを疑わせる皮膚・粘膜症状、(2)気道・呼吸器症状(喉頭閉塞感、呼吸困難、喘鳴、強い咳嗽、低酸素血症状)、(3)強い消化器症状(腹部疝痛、嘔吐、下痢)、(4)循環器症状(血圧低下、意識障害)──のうち、2つ以上の症状が発現した場合は、アナフィラキシーと診断する。

 なお、アナフィラキシーに類似した症状を呈する疾患として指針では、血管迷走神経反射、パニック発作、喘息発作、過換気症候群、てんかんを挙げている。それぞれ、アナフィラキシー発生時に呈する蕁麻疹、全身掻痒感、血圧低下、喘鳴、腹痛などの症状のうち、幾つかに該当しないことが鑑別の手掛かりになる。基礎疾患やそのコントロール状態によって、ごくまれに痙攣や脳血管障害などの神経学的疾患、冠動脈疾患、肺塞栓症を含む心疾患などを生じる恐れがあるが、その可能性は低く、アナフィラキシーとの鑑別は比較的容易としている。
アナフィラキシーの治療

 アナフィラキシーの発症時には、急に座ったり立ち上がったりする動作を禁止する。仰臥位で下肢を挙上させるが、嘔吐や呼吸促(窮)拍の場合には、本人が楽な姿勢にする。

 アナフィラキシーの第一選択治療はアドレナリンの筋肉注射。絶対的禁忌は存在せず、アナフィラキシーが疑われた時点で可能な限り迅速に、大腿部中央の前外側などにアドレナリン(ボスミン)0.01mg/kg(最大0.5mg)あるいはエピペン注射液0.3mgの筋肉注射を行う。血管内投与は行わないよう留意する。同時に、酸素吸入と生理食塩水の急速点滴投与を実施する。呼吸困難が強い場合は短時間作用性β2刺激薬(pMDI)の吸入も行う。

 初期反応で症状が安定した場合でも、二相性反応の発生に備え、入院させることが望ましいとしている。接種施設に入院設備がない場合には、対応可能な医療機関への搬送を推奨している。

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