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loundraw先生『イミテーションと極彩色のグレー』読書感想文


さあ、どんどんいきましょう。
つづいてのお便りはラジオネーム、ドナルド・トランプ(本人)さん。
北海道在住の14歳。中学二年生、女性の方です。

はじめまして、いつも楽しく聞いてます。
loundraw特集ということで、はじめてメールをします。
私がloundrawを知ったのは、中学生になって間もないころ、同じ塾にいた人に教えてもらいました。
はじめて聴いたloundrawの歌はとても衝撃的で、一瞬で好きになりました。
でも今日私がリクエストしたいのは、その歌じゃなくてloundrawの『Imitation』という歌です。
当時(と言っても去年の話ですけど)の私はimitationトークという遊びを発明しました。
Imitationはすごく言葉の多い歌で、歌詞カードには文字がたくさん並んでますよね。
imitationトークは、imitationの歌詞だけを使って相手とおしゃべりをするゲームです。
例えば『3.15.22』と書いた紙やメッセージを相手に渡すとします。
これはimitationの歌詞カードの3行目と15行目と22行目を読んでほしいという意味です。
実際に照らし合わせてみると『今日は、マルゲリータとミートスパゲティ、作りたい』となります。
私は、私にloundrawを教えてくれたその人と毎日何回もimitationトークをしました。
もうお気づきかもしれませんが、私はその人に恋をしていました。
ある日私は勇気を出して、その人に告白をしようと決意しました。
その日、その人はいつも以上に機嫌がよくて、ずっと笑顔でいれくれました。
私は、今晩特別なメッセージを送るから楽しみにしてと伝えました。
そして私は深夜十二時ちょうどにimitationトークを送りました。
『5.11.39』
『出会ったときから、好きでした、ずっとそばにいて』
いつもはすぐ返信がくるのに、どれだけ待っても返事はなくて、私は次の日どきどきしながら塾にいきました。
その人は塾にいませんでした。一番上の先生から、やめたと聞かされました。
その後のことはよくおぼえてなくて、気づいたとき、その人の連絡先やアドレスなんかは全部削除してました。
その人のことは今でも……いまでも、よくわかりません。
loundrawの曲も知ってるのは、その人からはじめて教えてもらった曲とimitationの二曲だけです。ファンを名乗る資格ないですよね。
でも、思い出にウソはつけないし、この曲を聴くのは勇気がいるけど、でもやっぱりもう一度聴きたいのでimitationをお願いします。

ドナルド・トランプ(本人)さん、素敵なメールをありがとう。
ではみなさんも聴いてください。
loundrawで『imitation』

つづいてのお便りは、京都にお住まいの二十六歳男性。ラジオネーム、孤独なダッチワイフさんからのリクエストです。

自分がオススメしたいloundrawの歌は『天使と悪魔』ですね。
インディーズ時代の歌だから知らない人もいるんじゃないかな?
これをリアルタイムで聴いてた当時、自分は大学生で、こう見えて自分かなりモテたんで、当時二股してたんですよ。
それで、どちらかといえば遊びで付き合ってたほうの彼女がライブハウスとか行くの好きで、最近ハマってる新人がいるから見にいこうって誘われて、そこで歌ってたのがloundrawだったんですよ。
なんか若いなって思ってたら、あのころまだ高校生だったんですよね。
それでまあ、そのときは、ああ確かに上手いな、くらいの感じだったんですけど、それから何日かして、今度はどちらかといえば本命だった彼女に、普段はこういうの聴かないんだけど、ちょっと気になる子がいるから見に行こうって、またライブハウスに連れてかれて、そしたらまたloundrawが歌ってたんですよ。
なんかloundrawって今でこそ『光!』とか『自然!』みたいなイメージですけど、あのころはバリバリの闇吐きまくりで、なんていうか、ガキのくせにこえーなこいつって思ったの覚えてますよ。
それで、あのころよく歌ってたのが『天使と悪魔』って歌で、これ最近ファンになった子とか聴いたらショック受けるんじゃないのってくらい詞も音も過激で、でも俺はやっぱりこの歌好きなんですよね。
ネットとか探しても音源ないし、何気にこのCDレアなんじゃないかなってニヤニヤしながらこのメール書いてますよ。
というか自分、音楽に金払ったのってこれがはじめてなんですよね。
それまではずっと、まあ、わかるでしょ?
いっとくけど、それからはちゃんとお金払ってますからね。俺は成長したんだ。
そんなわけで、俺の人生に少なからず影響を与えてくれたこの歌をリクエストします。

孤独なダッチワイフさん、ありがとう。
それでは聴いてください。
loundrawで『天使と悪魔』

loundrawニューアルバム『イミテーションと極彩色のグレー』発売記念。
『あなたの選ぶマイベストloundraw』

つづいてのお便りは佐賀県にお住まい78歳、男性。ラジオネーム、生まれ変わったら美少女の住む洋館の便座カバーになりたいさんからのリクエスト。

1976年なんていうと、この番組を聞いてるほとんどの人は、まだ生まれてもないんじゃないかな。
でも当時の私は40歳。おじさんです。
そのころの私はどこに出しても恥ずかしくないくらいの洋楽かぶれで、国産の曲など聴くに堪えないと、理由があったわけでもないのに本気で信じていました。
ある日、私は少し年上の素晴らしい女性と出会い、後に彼女は私の伴侶となります。
ある日、彼女は私が購入したばかりの当時としてはかなり高級品である大型のカセットテープデッキに一つのカセットを入れて再生ボタンを押しました。
スピーカーから流れ出た音に、私は撃ち抜かれたのです。
体が爆発したような、まさしく衝撃。
一体どこの国の歌手なのかと訊けば、彼女は“してやったり”という顔をして、日本人歌手だというではありませんか。
随分驚きましたね。
それまで私は自分のことを聖人ではないけれど、偏見を持たない良識ある人間だと信じて40年間生きてきた自負がありました。
しかし、実際の私は知りもしない世界に架空の憧れを寄せてそれを我がことのように誇る一方で、目に見える世界を卑下する愚かさを周囲にばらまいていたのです。
“目を覚ませ!”
あのとき、あの歌に、そう頬を打たれた気がしました。
私は無神論者ですが、あのとき私の前に妻とあの歌があらわれたのは、天の采配だったのではと思えてなりません。
あれから40年。妻の美しさも、あの歌の力強さも衰えるどころか、さらに磨きがかかっています。願わくば、私もそうでありたい。
私がリクエストするのは、思い出の、そして今も輝きつづけるその歌です。

生まれ変わったら美少女の住む洋館の便座カバーになりたいさん、いつも心に響くメールをありがとうございます。
それでは、生まれ変わったら美少女の住む洋館の便座カバーになりたいさんからのリクエストでloundrawの『自分と向き合うために必要な痛み』をお聴きください。

つづいてのお便りは二通つづけてどうぞ。
東京都にお住まいのラジオネーム、食べるブルマさん。7歳男性。同じく東京都にお住まいのラジオネーム、スパッツマンさん。7歳男性。
まずは食べるブルマさんのお便りから。

loundrawさんのこの歌が好きなので、かけてください。よろしくお願いします。

つづいて、スパッツマンさんからのお便りです。

loundrawさんのこの歌が好きなので、かけてください。よろしくお願いします。

それでは食べるブルマさんとスパッツマンさんからのリクエストをお聴きください。
loundrawで『かの──

……あれ?
……ええっと、少々お待ちください。
……はい……みなさん、申し訳ありません。ただいま機材のトラブルで用意していた音源が流せないようです。大変申し訳ありません。
整い次第、食べるブルマさんとスパッツマンさんのリクエスト曲をかけさせていただきます。ご了承ください。

改めまして、本日のMusic Switchはloundrawニューアルバム『イミテーションと極彩色のグレー』発売記念特別企画『あなたの選ぶマイベストloundraw』を開催中です。

つづいてのお便りはラジオネーム、生後三ヶ月無職童貞さん。
大阪にお住まいの三十代、会社員。女性の方からです。

好きな人と好きなものを共有できる。
それが人生最高の喜びではないでしょうか。
かつて、私の人生はその最高の状態にありました。
だけど、それは長くつづきませんでした。
私の人生には、最高の出会いが二度訪れました。
一度目はloundrawという最高のアーティストに出会えたこと。
二度目はそのloundrawを私と同じくらい好きになってくれた人と出会えたこと。
その人とは職場で出会い、loundrawを知らなかったので少し強引にすすめてしまったものの、すぐに心から好きになってくれたことがわかりました。
職場の人とは深い仲にならないようにと決めていたのに、なぜかその人とだけは頻繁にメッセージのやりとりをしたり、職場の外でもあったりしていました。
その人に好意を持たれていると気づくのに時間はかかりませんでした。
しかし、私がその気持ちに応えることはできませんでした。
理由は私も彼女も女性だから。
このご時世に同性同士のつきあいを咎める人なんてほとんどいない、と思われる方も少なくないでしょう。
では、彼女が私より20歳も年下の、まだ子供だと知ったらどうでしょう?
私は塾の講師で、彼女はそこに通う、まだ中学生になったばかりの少女でした。
とてもかわいらしく、かしこく、独創的な子でした。
loundrawの歌の歌詞だけを使っておしゃべりをするゲームを考えて、それをよく二人でしていました。
そして、それが別れの決定打にもなったのです。
そのゲームは簡単な暗号を解いていくようにできているのですが、ある日彼女は、今晩特別なメッセージを送るから楽しみにしてほしいといってきました。
年甲斐もなく私は緊張して、あろうことか期待もしていました。
彼女から告白のようなものを受けとることはわかっていました。
もちろん、大人としてどのような態度で接するべきなのかは考えるまでもありません。
それでもそのときの私は一人の人間として、受け取りたかったのです。
かつて自分も持っていたはずの、生きていくうちに落としてしまった、むきだしの純粋さを。
そして暗号は届き、それを解読すると、それはこのようになっていました。
『知ってた? 僕たちは、信じられないほどくだらない理由で誰かを嫌うことができる。それがあなただ』
それを読んだ瞬間、私は自分がうっかりして、解読する箇所を間違えたのだと思いました。
しかし、何度確認してもメッセージは変わりません。
しばらく唖然として、そうしてやっと自分は20歳も年下の子にずっとからかわれていたのだと気づくことができました。
気づけばポタポタと泣いていました。
それでようやく受け入れることができたのです。私も彼女に恋をしていたのだと。
私は同性愛者でも小児性愛者でもありません。
同時に、これまで誰かに愛情を持った記憶もありません。
きっとあれは私の初恋だったのでしょう。そしてそれは失恋に終わったのでしょう。
職場に辞表を出して地元を飛び出して一年。やっと忘れかけていたのに、どうしてなんでしょう?
どうしてloundrawはこんな美しい歌を、こんなタイトルで発表したのですか?
まるで私に、忘れるなというみたいに。

生後三ヶ月無職童貞さん、ありがとうございます。
それではリクエストの曲を聴いてください。
loundrawで『TI、チ。NA、ナ。MI、ミ。』

次のお便りは姫路にお住まいのラジオネーム、ズルむけアツアツおでんさん。
6歳の男の子からです。

はじめましてloundrawさん。
loundrawさんに教えてもらいたいことがあります。
ぼくはloundrawさんみたいな歌手になりたいです。
どうすればloundrawさんみたいになれますか?
ねえloundrawさん。
本当のことをいいます。
本当のぼくはただの6さいではなく、46さいです。
ぼくはちゅうがくのときから歌手になりたくて、歌や音楽のべんきょうを、いっぱいしました。
なんどもおーでぃしょんにでたり、デモテープをおくったりしたけど、だれからもあいてにされませんでした。
ねえloundrawさん、どうすればあなたみたいに、はやくみとめられて、すぐにヒットして、せかいじゅうでかつやくできるのですか?
はっきりいって、ぼくはあなたにぎじゅつで負けているとはおもえません。
あなたがつくっているような曲を、あなたがうまれるまえから演奏していました。
それでもぼくはあいてにしてもらえませんでした。
おまえにはさいのうがないといわれつづけました。
なっとくできません。
おしえてくださいloundrawさん
なれるひと と なれないひと の ちがい は なんですか?

そんなズルむけアツアツおでんさんからのリクエスがこちらです。
聴いてください。
loundrawで『どんなになくしたくても、なくせない想い』

つづいてのお便りは住所不定17歳の男性。ラジオネーム、喋るブルマさんからです。

loundrawに人生を救われた人は少なくないと思う。
それにloundrawのおかげで生まれた出会いもたくさんあると思う。
俺には人生でたった一人だけ親友と呼べる男がいたんだ。
そいつと俺は何もかも正反対で、唯一の共通点はloundrawのファンだってことくらい。
loundrawを好きになるきっかけになった曲も同じで、お互い小さいころラジオでその曲をリクエストしたこともあったんだ。
一緒にコピーバンドなんかもやって、高一の文化祭で結構評判良かったんだ。
別にプロになりたいとかそういうのじゃなくて、ただそいつといるだけで楽しくて。
それは本当に最高の毎日で、だけど今の俺が最高じゃないのは、もうそいつがいないから。
死んだとかそういうのじゃなくて、俺がそいつを裏切ったんだ。
一週間前、急に親父が明後日この家から出て行くっていうんだよ。
旅行でもするのかと思ったらそうじゃなくて、なんか親父の会社ヤバくて、要するに家族全員で夜逃げするっていうんだ。
全然現実味なくて、ふざけてんのかなって思ったよ。
だけど親父マジな顔してるし、兄貴は結構前から知ってたみたいでなんか深刻な顔してるし、妹は大泣きするし、俺だけ変に落ち着いてたんだ。
でも夜になっても全然寝れないし、どんどん不安がふくらんで、急に泣けてきて、それでもっと不安になって、不安で死ぬんじゃないかって思えてきて、なんでこんなことで苦しまなきゃいけないんだってキレそうになって。実際、次の日学校でキレたんだ。
放課後、俺の様子が変なことに気づいたあいつが、どうかしたのかって心配そうに近づいてきて、あいつそういうのすぐ気づくやつだから。
俺がなんでもないっていっても引かなくて、そしたらあいつはこういったんだ。
何があったのかわからないけど、もうすぐloundrawの新譜が出るし、それ聴いたら元気になるって。
理不尽なのはわかってるけど、俺マジでキレて。こっちは金がなくて困ってるのに、お前は遊びで使える金があっていいご身分だなって思って。
うるせえよ! って叫んで俺は腕を振り上げたんだ。
本当になんでそんなもの持ってたのか、それ使って何するつもりだったのか全然記憶にないんだけど、俺は手にカッターナイフを握ってたんだ。
ナイフの刃があいつの左の頬を切って、あいつの顔から血が流れて、教室の床が血まみれになって、それを見て俺はすぐに逃げたんだ。
走って帰ったら、親父が予定より早くなったっていって、すぐトラックに乗せられて家を出て、正直そのとき俺は安心したんだ。
絶対警察に捕まると思ったし、そしたら家族はもっと大変な目にあうんじゃないかってずっと怖い妄想がやめられなくて、でもこの夜逃げのことは誰も知らないはずだから、俺は捕まらないはずだって、よくわからないけど安心したんだ。
本気でクズだと思うよ、俺は。
少なくともあいつを傷つけたとき、先生を呼ぶべきだったし、保健室につれていくべきだったし、何よりまずあやまるべきだった。
俺はどれも選ばずにただ逃げたんだ。
どうにかできたはずなのに、逃げるを選択したんだ。
たぶん、親父もそうだったんだと思う。
俺の人生はこれからどうなるかわからないけど、いつかあいつにあやまりたい。
この気持ちを忘れないために、だから今はこの曲をリクエストします。

喋るブルマさん、ありがとう。
ではみなさんも一緒に聴いてください。
喋るブルマさんからのリクエスト。loundrawで『だからせめて、後悔をするんだ』

東京都にお住まいのラジオネーム、さらばスパッツマンさん17歳男性から、こんなお便りが届いています。

子供のころ見たテレビの番組で、イタリアのとあるマフィアのドキュメンタリーが放送されていました。
マフィアというくらいなので、当然悪い人たちです。
でも、そのマフィアには一つのルールがありました。
クリスマスには絶対悪さをしない、ということです。
悪いできごとに遭遇すると、人はそのときの状況と不運を紐付けしようとします。
いつもと違うものを食べていたとか、変わったかたちの雲を見たとか、普段は着ない色の服を着ていたとか。
クリスマスに嫌な思いをすると、その人はクリスマスをよくない日だと思い、クリスマスを避けるようになるかもしれない。
クリスマスが大好きだったそのマフィアはクリスマスイブとクリスマスの二日間だけは、地元の人にお菓子やプレゼントを振る舞っていました。普段は暴力や麻薬を扱っているのに。
奇しくもというべきか因果応報というべきなのか、二年後のクリスマスにそのマフィアは抗争相手に惨殺されたというテロップで番組は締められていたと記憶しています。
僕にとってloundrawとはクリスマスでありマフィアです。
僕には一人の親友がいました。
正しくは、僕には親友と思っていた相手が一人いました。
loundrawの衝撃を共有できて語りあえる最高の仲間。
きっと彼とは大人になっても変わらない友情で結ばれているのだろうなと青くさいことを信じていました。
しかし彼は、突然姿を消しました。
何かを抱えているのは一目瞭然でした。
本人は上手く隠せているつもりだったのでしょうが、端から見れば子供のかくれんぼよりバレバレです。
僕など何の役にも立てないかもしれないけど、それでも相談してほしかった。
昨日までloundrawの音楽は純粋に勇気を与えてもらえる存在でした。
だけど今はloundrawを聴くと彼を思い出して、僕の顔と胸の左側が痛みます。変なこといってますよね、すみません。
いつか彼と出会い、僕の中で紐付けされてしまったマフィアの部分を断ち切るために、この曲をお願いします。

ありがとう、さらばスパッツマンさん。
それでは聴いてください。loundrawで『あなたは光をくれた』

つづいては北海道からのお便りです。
ラジオネーム、クリント・イーストウッド(本人)さん。
17歳の女性からです。

私は今、とても興奮しています。
心臓の鼓動で倒れそうだけど、まだ倒れるわけにはいきません。
私には好きな人がいました。でもその人とは悲しい別れをしてしまいました。
その人とはloundrawの『imitation』という歌の歌詞だけを使って会話をするゲームをしていました。
ある日、私は勇気をふりしぼって告白の言葉をその人におくったのですが、その人から返事はなく、理由も告げずその人は私の前から去っていきました。
それが三年前の話です。
私はショックでそれ以来loundrawを聴けなくなりました。
ところが先日、コンビニで偶然imitationが流れて、そこで強い違和感におそわれました。
歌詞が、記憶とあまりにも違うのです。
確認して驚愕しました。
loundrawはシングルとアルバムでは大きく歌詞を変える傾向があるのだと、そこではじめて知ったのです。
私が告白の想いを込めておくった暗号はアルバム版の歌詞に照らし合わせると拒絶の言葉になってしまうことが判明しました。
そのとき思い出したのです。
あの日のあの人はいつもより上機嫌でした。確認してみると、あの日はloundrawの新しいアルバムの発馬日で、そこには新しい歌詞のimitationも収録されています。
何もかも理解した今の私は絶望に押しつぶされそうですが、微かな希望がそれを食い止めています。
あの人はもう私のことなど覚えていないかもしれない。でも、私の想いは出会ったときから何一つ変わっていません。
あの人が今どこにいるのかもわかりません。
だけど、いいニュースがあります。
あの人の故郷はこの街だし、来週ここでloundrawのライブがあるのだから。

クリント・イーストウッド(本人)さん、ありがとうございます。
シングルとアルバムで歌詞が大きく変化するのはloundrawの特徴であり魅力ですが、数多くのloundrawの作品の中でも『imitation』は最も異質なものに分類されるかもしれませんね。
アルバム版で挿入された『僕たちは、信じられないほどくだらない理由で誰かを嫌うことができる』の一文は、当時多くの議論を呼びました。
パッケージに映る少女についてもですが──ちょうど今、番組公式のPHOTOMENOにアップしましたので、リアルタイムで聴かれてるリスナーさんはチェックしてみてください。
まずはシングル版のパッケージ。

そしてアルバム版のパッケージ。

同じ少女だという人も、まったくの別人だという人もいます。
シングルでは『I like to take a picture(私は写真を撮るのが好きです)』という歌詞がアルバムだと『It is difficult for me to imitate her moves(私には、彼女の仕草を真似るのは難しい)』と全く違う言葉に変更されていたこと、さらにシングルでは6月23日の物語なのにアルバムだと7月20日になっているなど、この番組でも考察コーナーを設けて数週間特集したので覚えている方もいると思います。
ちょっと脱線してしまいましたね。申し訳ありません。
クリント・イーストウッド(本人)さんはリクエスト欄が空欄になっているのですが、せっかくなのでこの曲をお届けしましょう。
loundraw『imitation』
今回はアルバムバージョンでお楽しみください。

さて、お別れの時間が近づいてまいりました。
loundraw特集の回は毎回そうなのですが、今回も間違いなく番組史上最多のお便りをいただいております。
みなさま、本当にありがとうございます。
できるだけたくさんのメッセージを紹介したいので二通つづけていきます。
まずはラジオネーム、蘇るブルマさん。愛知県49歳会社員、男性の方。

リクエストしたい曲は『また』です。
自分の半生、いや人生はloundrawと共にあったといっても過言ではありません。
loundrawとの出会いがなければ私は人生の途中で挫けていたでしょう。
包み隠さずいいます。きっと自殺していました。
十代のころ父が事業で失敗し、家族全員で夜逃げをした経験があります。
十代の心にそれは恥ずかしく、将来への不安もあったのですが、それ以上の心残りとして、その過程で私は唯一の親友と呼べる相手を精神的、物理的に傷つけてしまったのです。
陳腐な言い回しではありますが、事実として、そのときのことを忘れた日は一日もありません。
幸か不幸か金銭的な問題は意外なほどあっけなく解決して、就職先の職場にも恵まれ、愛する人と出会い、家庭を持ちました。
順風満帆といえる日々でした。
しかし先月、信頼していた部下からの裏切りにあい、取引先まで巻き込んだ甚大な損害を招く事態を発生させてしまいました。
私はすぐさま取引先に飛び、跪き、謝罪しました。
顔を上げてくれといわれ、従うと、私の目線の先にいたのは、かつての親友でした。
すぐに彼だとわかったのには理由があります。30年以上前につけた傷が、まだ生々しく残っていたからです。
私は呼吸ができなくなりました。
生活に余裕ができた時点ですぐさま謝罪に向かうべきだったのに、そうしないで、今度は彼の会社に取り返しのつかない迷惑をかけた。
彼の目に私は疫病神に映ったことでしょう。
安い誠意を見せることでごまかさないで、まっとうな対応と経過報告を。
それだけいって彼は私に背を向けました。
ある程度の暴力は甘んじて受ける覚悟だったので、微かに安堵しました。
が、動悸は激しくなる一方です。
想像しうる最悪の再会でした。
どうするべきなのか、その答えはまだ出ていません。
それでも、私の心の根っこには二つの文字が見えます。
『また』です。
また、あのときのように彼と語りたい。
loundrawについて。人生について。たわいないどうでもいい、しかしかけがえのないものについて。
また、彼を友と呼びたいのです。

次のお便りはラジオネーム、帰ってきたスパッツマンさん。
49歳、東京都在住の会社員の方からです。

半世紀も生きていれば、子供のころ大人たちからどれほどの嘘をたたき込まれてきたかわかるというものです。
その代表が因果応報という価値観でしょう。
良い行いには良い結果が、悪いことをすれば相応の報いが。
自分のしたことがそのまま自分に返ってくる。
だとすれば、私は無意識にどれほどの悪事に手を染めたというのでしょうか。
若いころ、親友だと思っていた相手から顔に傷をつけられ、それはその後の人生のありとあらゆる場面で私の足を引っ張ってくれました。
出会った人々はこの傷に、さもありなんというエピソードをなすりつけては私を任侠映画から飛び出したキャラクターのように扱いました。
既に両親とは死別、親戚とは疎遠、兄弟はおらず、結婚などもってのほか。
それでも理解ある社長に拾われて、ほしいときにほしいものが買える程度の生活はおくれていました。
それがある日、めまいを覚えるような事態に巻き込まれ渦中の相手が謝罪にきたかと思えば、なんとそれは私の顔を傷物にした張本人ではありませんか。
聞くところによると、彼は綺麗な奥さんと三人の子供に恵まれ、そこそこの家で生活しているというではありませんか。
なるほど。
世界が因果応報で回っているだとすれば、彼は私の与り知らない場所で世界を何度か救っているのか、難病の特効薬でも作ったのか。
そして何らかのバランスをとるために、またしても私に不幸をなすりつけにきたとでもいうのでしょうか。
不愉快を通り越して喜劇です。
彼は『また』謝罪にくるといいました。
私はもうくるなと告げました。
それでも彼は『また』くるでしょう。そういうやつです。
高校時代loundrawのコピーバンドを結成して、文化祭で披露しました。
私はボーカルに憧れていたのですが、分不相応なのはわかっていました。
しかし彼は私に歌うべきだと肩をつかんできました。
私は無理だといいましたが、彼に無理やりボイストレーニングをやらされました。
結果は散々。それでも彼はいいました。『また』明日な、と。
『また』は文化祭前日まで毎日つづいて、そして当日、誇らしくなるくらい完璧にloundrawを歌う自分がいました。
あの瞬間、確かに私は
loundrawだったのです。
もしかして──『また』あんな日が戻るとでもいうのでしょうか?
バカバカしい。今の私は16歳の子供ではなく、半年後には50になっているというのに。
それでも胸の奥にくすぶる、このなつかしさは何なのでしょうか。
私は、一体、何を期待しているというのでしょうか。

それでは聴いてください。
蘇るブルマさんと帰ってきたスパッツマンさんからのリクエストで
loundraw『また』

ついに最後のお便りです。
ラジオネーム、シャア専用ハイエースさん。
千葉県にお住まいの32歳、自称お笑い芸人さんからです。

loundraw特集の回はいつも熱量のすごいメールばっかりで自分なんかが送っても読まれないと思うけどloundraw好きなんで送ります。
別に自分はloundrawに救われたとかloundrawに人生を変えてもらった、みたいなのはないし、結構聞かなくなる時期とかもあるんだけど、結局loundrawに戻ってくるというか、なんかloundrawって実家のような安心感みたいなのないですか?
おかずというよりご飯、みたいな。
なんていうか、普通に好き。
リクエストは最近アラームにしてるこの曲でお願いします。

シャア専用ハイエースさん、ありがとうございます。
それではこの曲でお別れしましょう。
loundrawで『なんでもないような、ただ満たされた顔をして』

loundrawニューアルバム『イミテーションと極彩色のグレー』発売記念特別企画『あなたの選ぶマイベストloundraw』いかがだったでしょうか?
明日のこの時間は──え? あっ、はい。わかりました。

緊急速報です。
三日前からボーイスカウトのキャンプ場で行方不明になっていた工藤チナツちゃんが、先ほど発見されたそうです。
そのチナツちゃんがなんと、この番組にメッセージをおくってくれたそうなのでこれから読ませていただきます。

では、いきます。
北海道出身。ラジオネーム、伝説の下着ドロボーさん。
5歳、女性の方からのお便りです。

わたしはloundrawさんがだいすきです。
理由はわたしのママがloundrawさんのだいファンだからです。
ママはまいにちloundrawさんのうたをうたってくれます。
だからわたしもloundrawさんのうたをうたえます。
何日かまえ、とつぜん山がくずれてテントがじめんにうまってしまいました。
わたしはこわかったです。
どれだけまってもだれもきてくれなくて、こわかったです。
だからわたしはうたをうたうことにしました。
loundrawさんのうたです。
わたしがうたをうたうとママが笑顔でわたしのそばにきてくれるので、うたをうたいました。
そうしたら、誰かがきてくれて、じめんをほってくれて、わたしをたすけてくれました。
ママがきてくれたのだと思いました。ちがいました。
わたしをたすけてくれたのは、ふたりのおじいちゃんでした。
ひとりは、かっこよくてこわいかおのおじいちゃん。
もうひとりは、やさしくて、おかおにきずのあるおじいちゃん。
おじょうちゃん、loundrawのそのうたをうたうなんて、わかってるね、とかっこよくてこわいおじいちゃんはわたしにいいました。
やさしいおかおのおじいちゃんがわたしをおんぶして、山をおりてくれました。
そこにママとママがいて、ふたりはわたしをだきしめてくれました。
わたしはもうなにもこわくありません。
loundrawさん、いいうたをありがとうございます。だいすきです。

伝説の下着ドロボーさん、ありがとうございます。
それではこれが本当に最後の曲です。
あなたも一緒に歌いませんか。
loundrawで『極彩色(かのうせい)』




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