【BORDER .6】今思うこと
KINEMASのメンバースタッフ以外の人からいただいた、BORDERゲスト寄稿の第一回。名古屋のライブハウス、アポロベイスで働く木田くんからいただきました。ライブハウスで働く前、彼がバンドをやっていた頃から知っていて、昔自分が名古屋・新栄でライブサーキットを企画した際に手伝ってくれたり、タワレコとのコンピ「Circle of life 2」制作の際にも、若手バンドについてアドバイスをいただいたりしました。今の名古屋のシーンを知っていて、生の声を聞かせてくれる存在の一人です。（KINEMAS宮下）
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今思うこと / 木田 裕介 ( 名古屋APOLLO BASE )
コロナウイルスの蔓延に伴い、社会が多く変わってしまって約３ヶ月弱。
明確に覚えているのが、2月26日に最初の自粛要請が来た日のこと。
その日からはとにかく目まぐるしく、やれ「東京の某巨大レーベルは３月まで全アーティスト自粛らしい」やれ「大阪のあのライブハウスが営業を止めるらしい」そんな情報を日本中のライブハウスを愛する人たちと共有した。
僕の働くライブハウス、アポロベイスも2月27日以降、全公演が中止になっている。
ポジティブに捉えれば僕たちはあの日から、目には見えない団結感をお互いの姿を目にすることなく手に入れたと思う。ある意味では、ライバルとも言えるライブハウスの人たちも含まれていて、緊急事態で本当に腹を割って色々な人と話ができたことは財産になった。多くのものを失い、取り返しのつかない犠牲もあった中で、少しでもポジティブな面をあるとすれば今は団結力を得たことだと信じている。
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始めてライブハウスという場所で仕事を始めてから今年で１０年が経った。
高校生で初めてライブハウスにコピーバンドで出演してから５年目のことだった。
どこを境にしたのかわからないけど、俗にいう音楽業界の「大人側」に自分がなっていることに気づいたのはここ数年。
元々はバンドもやっていた自分、今は演奏はしていない自分。アイデンティティの置き場と、アーティストの時に思っていた、「お客さんとの距離感」と、ライブハウスマンとして考える「お客さんとの距離感」のギャップには今でも悩む。
そんなことを悩んでいるうちに、世界中がコロナウイルスという間違いなく教科書に乗るであろう病に侵された。そうして何が起こったかはこれを読んでくれている多くの音楽ファンや関係者、アーティストの知ることだと思う。
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我々ライブハウスは本当に多くの人に助けてもらっている。これは現在進行形の話。いつこの病気が治るかわからない状況の中で、したくてもできない約束（リターン）をするという矛盾を抱えながらのクラウドファウン
ディングや、ドネーショングッズ、多くの署名、その他多くのインターネットを用いた数々の支援。本当に感謝しています。
僕の働くアポロベイスへ賜っている支援は勿論、僕たちの仲間であり、ライバルである日本中のライブハウスへの支援。僕はライブハウス代表を名乗るような人間ではなく、代表して感謝などを述べる立場ではありませんが、それでも本当にこうした皆様からの支援には胸に込み上げるものがあります。
多くの方から「ライブハウスに救ってもらったから」「ライブハウスのおかげで」などのお言葉と支援を頂いていた。けどそうした物は通常営業できていた頃から、日々の感謝の言葉は直接であったり、SNSを介して頂いていて、お金だってチケット代やドリンク代という形で頂いてきた。
今は僕たちは営業することができず、苦しい時期であることは否定できない。だからこそ、今は皆様から頂いた支援は受け取り、必ずこの病から解放された時には、今まで以上のライブの場所を作って行きたいと。そうして恩返しをしたいと考えています。
語弊を生むかもしれないが、皆さんにとって夢の場所であるべきライブハウスとして、こうした苦しい現状を見せてしまうこと自体が、申し訳なさを感じたり、誰が悪いでもない話だけど情けない気持ちになった時も正直ある。
もっと言えば最初の最初は、僕たちライブハウスマンだけでこの問題を解決するべきだとも思っていた時もあった。
ただ、バンドマンもお客さんもライブハウスマンも、音楽好きという一点で境界は無く、ライブという素晴らしいアートを守り抜くために戦う気持ちは同じなのだと。そう思うと、今はすんなりと心に落ち着くところもあります。
必ず恩返しをさせてください。
よろしくお願いします。
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日本全国のライブハウスマンやアーティストだけではなく、全ての音楽を愛する人との団結力が高まった先に、今まで見たこともないような素晴らしい景色があることを願っています。
それまでは僕ら全員で力を合わせて、これからの時代を乗り越えて行きましょう。
- 木田 裕介 (from APOLLO BASE)-
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