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【BORDER 16】締め切り

締め切り / ayako (KINEMAS,いとまとあやこ / Vocal )


『BORDERの最終締め切り、日曜日にします!出せそうだったらよろしくです笑』

届いたLINEには“笑”と書いてあるけれど、全く笑っていないみやしーの顔が浮かんだ。日曜日まであと3日、書きかけの文に取り掛かる。

思い返せば2020年の春にこの企画は始まった。得体の知れないコロナの第一波で一番世間がピリついていた頃だった。春だというのに花見はもちろん自粛モード、それでも人は季節を逃すまいと桜並木を散歩する。

BORDERの最初の締め切りは2020/5/15で、私はボーダーと聞いてまず初めに浮かんだ狩撫 麻礼『迷走王 ボーダー』について書こうとしていた。結果書けなかったのだけど、オススメの作品なので是非読んで頂きたい。

そして気がつくと蝉の鳴き声。季節は夏になろうとしていた。その間にも続々とBORDERの記事は更新されていく。

伸びた締め切りについては尋ねない。まだいいだろう、まだ提出してない人がいるだろう。

強制ではないにせよ、漕ぎ出した船は漕ぎ切りたい。

ボーダー、ボーダー、、、

毎日毎日あたまの中をボーダーが埋め尽くす。

書いては消して、書いては消して。

秋に入って、あとは残すところムッティーとアヤコだけだ、と耳にした。ムッティーがいる。そのことは私に安心を与えた。ムッティーはどうだったんだろう。

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10月の終わりに数日間、道東(北海道の東部)の大自然を旅行した。

友達がガイドをしているので個人ツアーを依頼し、一般のツアーではありえない時間帯に入れない場所まで連れて行ってもらった。

ちょうど秋の終わりで冬の入り口。枯れ枝が作り出す見渡す限りの灰色の色調が、なんと豊かだったか。

雄大な丘、渡鳥、静寂、アイヌの踊り。

人よりもタンチョウやエゾ鹿に会っていた。月明かりで湖畔に佇み絵を描き歌った。初めは絶対遭遇したくなかった熊も、アイヌの伝統を知るうちに会いたくなっていた。会えなかったけど。

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印象的な出来事があった。霧多布湿原の早朝カヌーで教えてもらったアイヌ語『レラ』

それは、風を意味する言葉で、同時に『全てのものとダンスをする』という意味でもあるそうだ。

風に揺れる葦(ヨシ)も、鳥の羽も、なびく髪も、共にダンスをする者。ガイドの友人はそう言った。

これだ、、、。私のボーダーの題材は決まった。

国境なく海を越える渡鳥、自然と共に生きてきた人類。

そう決めて、納得して、妄想して、書いては消して、そして、そして、、そうこうしているうちにハッピーニューイヤー!2021年になっていたー!

どうしても、自分の気持ちを文にすることに抵抗があるみたい。書いては消して、書いては消して、本当に書きたいことは心の内に追いやって、はぐらかす。

これこそBORDERだ、私と他者との境界線。

この境界線を行き来して混ざり合い融合する事が、私にとって表現活動なんだと思う。

そんな訳で、このあれやこれやの気持ちはまた歌詞になるなどして昇華されていくんでしょうおそらく。

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そしてこの文章は当初の締め切りを遥かに越え年を跨ぎ、2021年1月25日月曜日am10:16、ようやく提出したのでした。

遅くなって本当にすみませんでした!!


写真:毛利健太


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