感想
昨年、綾瀬はるかさん主演でドラマ化もされた話です。
作者の新川帆立さんは、現役の弁護士(現在は、小説執筆に専念すべく、弁護士は休業中)です。
本を書くことについては、16歳の時に読んだ夏目漱石の「吾輩は猫である」にインスパイアされ、自分も小説を書きたいと思ったのが始まりだったそうです。
ただ、小説家として生活していくにはまだまだと考え、経済的な自立を目指して、弁護士資格を取得、実際に弁護士として大手法律事務所で勤務。今作が「このミステリーがすごい」で大賞受賞したのを機に、小説執筆に専念中だそうです。
すでに、弁護士を主人公にした「倒産続きの彼女」(今作の主人公、剣持麗子の後輩弁護士にあたる)も書き上げています。
実際に弁護士として活躍した経験から、話の随所に法律用語や裁判にまつわる話、弁護士ならではの言葉が語られています。
普段、刑事やミステリーに関するテレビドラマや映画でしか、なじみがない裁判に対して、いくつも新しい知識が増え、勉強になりました。
例えば次のような、言葉や内容が出てきました。
話の内容としては、「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」や「犯人を仕立て上げる」など、いきなり、つかみの部分から、驚き!!
そして、いったいどうなっていくんだとワクワクしながら読み進めました。
途中からは、ミステリー作品の王道である「犯人あて」「なぞ解き」にうつっていきましたが、「犯人を仕立て上げる」段階で、事件に関係する登場人物と交流があり、それぞれの人間関係が明かされもして、なぞ解きに関する情報が提示されているので、伏線やヒントが盛り込まれている形となり、推理をするのには十分でした。
作者の新川さんは、学生時代に麻雀に熱中し、プロテストも受けたそうです。その理由は、麻雀をしていると周囲の男性から舐められ、失礼な態度をとられることが多かったため、本気度を示したかったからだとか。
そんな新川さんの経験や性格を反映?したような主人公「剣持麗子」は、魅力的なキャラクターです。
剣持麗子が語る男女観や恋を含めた男女に関係する言葉にもエッジが効いたものが多数ありました。例えば・・・。
新川さんは途中から企業所属の弁護士として働いた経験もあるそうで、会社やそこで働く人からなど、人間観察で得られた人のありようや言動の意味などもさりげなく、作品の中に披露していました。
物語を楽しみつつ、法律や会社、人間関係の機微など、様々なことを学べる一粒で二度おいしい作品だと感じました。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです。