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名探偵は教室にいる~なぞ解きをしながら読解力を上げるミステリー作品      

 今年度の小学校4年生の国語教科書(光村図書出版)に「友情のかべ新聞」と言う物語が掲載されました。

   作者は、元小学校教師のはやみねかおるさんです。
 「ごんぎつね」等の「定番」として評価が定まった文学作品や童話などが教科書に多く採用される中で、「ミステリー」作品が載るのは、とても珍しいそうです。
 
 たしかに、自分の経験を振り返っても、教科書でミステリー作品をよんだ覚えはありません。もっぱら、学校の図書館で「怪人二十面相」などの江戸川乱歩作品やシャーロック・ホームズシリーズを夢中で読んでいたことを記憶しています。
 そして、今もその影響を受けたまま、推理小説、ミステリー作品が大好きで、アガサ・クリスティーやアンソニー・ホロヴィッツ、東野圭吾さんや宮部みゆきさんの作品なんかを楽しんでいます。

 これまで、特別、何かの知識やスキルが増えるわけでもなく、ただ、作品世界に入り込んで、あれこれ考えて、推理して、最後に作中の名探偵の解決編にカタルシスを覚えて、すっきりするという、ある意味、ただの暇つぶしかもと思っていました。

 しかし、ミステリー作品が国語の教科書に掲載されたと知って、考え直しました。

 論理的にものを考えることや想像して考えること、仮説思考、物事の背景、真相を見ることなどの練習になっているのではないかと思えてきました。

 物語を読みながら、名探偵の推理に沿って、自分も思考するからです。
 あるいは、自分で謎解きをしていくからです。
 
 ミステリーの多くの作品が、まず「難問」「謎」が提示されます。
 そして、探偵(読者)はそれを「解く」「真相を明らかにする」事が求められます。
 ただ、この場合、学校の勉強のような「難問」とは次元が違います。それは、あらかじめ正解があって、テスト(問題・謎)が作られたわけではないからです。物語の中で、さまざまな物証が残っていたとしても、事件の犯人、当事者が意図的に、現場に残したわけではありません。
 なので、名探偵の推理は、謎を解くというより、現場に残された物証、断片から推理して、その帰結としての「正解を発見する」という感じになります。
 推理とは、それぞればらばらに散らばっている物証、断片的事実をならべ、つなげ、事件のつながりを説明できる一つの仮説(ストーリー)をつくることになります。そして、その仮説がどんなに非常識で、みんなが「まさか」と思えるようなことでも(実際、推理小説は、読者をあっと言うわせる結末、謎解きになることが多いですが)、断片的事実のつながりを「すべて説明できる仮説はこれしかない」と確信できる答えを名探偵は発見していきます。
 そして、名探偵の推理をもとに、もう一度、本を読み返すと、あちこちに伏線がはられていたり、犯人(謎解き)につながる描写が大胆に、初めから提示されていたり、いかに、自分がミスリードされていかに気づいたりします。ちゃんと文章を読んでいるようで読めていなかったことに気付きます。
 
 たぶん、教室の国語の授業でも、

・想像しながら読む楽しさ
・叙述をしっかりと読解する力
・物語の構成、伏線を理解するおもしろさ

が得られると思います。そして、友達同士で、謎解きを中心に、あれこれと自分の考えを交流したり、友達の話から再考したりして、考える力もつくのではないかと思います。
 
 画期的なことだと思いましたし、時代の変化も感じました。
 何より、ミステリー作品ファンの一人としては嬉しいニュースでした。
 
 今回の「友情のかべ新聞」のあらすじは次の通りです。

仲が悪く、いつも争っている同級生の「西君」と「東君」。二人を仲良くさせようと、先生は教室に貼る壁新聞を協力して作るように指示する。見事な新聞を完成させ、一見、仲良くなったように見えた二人だが、そこには秘密が隠されていた・・・。

 作者のはやみねかおるさんは、小学校教諭を務めながら90年に作家デビュー。「名探偵夢水清志郎」や「怪盗クイーン」シリーズなどの人気作を手掛けています。
 
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです
 

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