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不調をこらえる娘ちゃん。あなたはうちのヒロインです。

退院後、娘ちゃん(14)と息子(7)は、かなり一緒に遊ぶようになりました。その姿を見ることが、私にはほんとーーーに嬉しい&癒しです。
2人が一緒に遊ぶ方法は決まっていて、むしろそれ以外で遊ばないのですが…。ぬいぐるみごっこです。ぬいぐるみごっこ以外の時間は、各々が別々のことをしています。B型。
息子はぬいぐるみごっこが大好きで、それに付き合ってくれる人が好きなのです。いつも私をターゲットにしてぬいぐるみごっこをしていましたが、私は5分もすると死んだ魚のような目になります。余裕があってノリノリの時は大変盛り上がることが出来るのですが、毎回そういうわけにはいきません。私にもコンディションがあります。(いいわけ)
退院してきた娘ちゃんは、なんとぬいぐるみごっこにお付き合いするという心のゆとりを手に入れて来たようです。
なんと頼もしいお姉さんなのでしょうか。

「嫌なことあった~嫌なことあった~」
「ドウシタノ ダイジョウブ?」
「イライラする~えーい バシッ」
「ワタシノ マネシテル…ウフフ…アハハハハハ(爆笑)」

娘ちゃんが不穏になるときの様子をいつも見ている息子は、それすら遊びの題材にします。7歳の純粋さよ。娘ちゃんがニコニコと対応しているので「それ有りなのか…」と驚く私です。
こう書くと調子が良さそうにお見受けされるかと思うのですが、良いことばかりではありません。1ヵ月入院したからといって、あれもこれも回復するわけではありません。風邪じゃないのです。
さっきまで楽しく遊んでいたかと思えば、不穏はいつも突然にやって来ます。娘ちゃんの絶叫する様子に、息子は恐怖で泣き出してしまいます。私は息子を抱きしめながら、娘ちゃんが落ち着くように言葉をかけます。落ち着いている状態が以前より良いだけに、その落差が激しくて驚きます。

入院前、息子は全く娘ちゃんに近づきませんでした。仲の良かった姉弟がよそよそしくなり、とても悲しく感じていましたが、それをどうにかすることは無理なことだとあきらめていました。別に喧嘩をしているわけではありませんが、精神疾患というものをまだ理解できない息子にとっては受け入れる以前の問題だろうと思ったのです。
大きな声は怖いだろうし、物を投げたり暴れたりするのも怖い、ママやパパを叩くのも怖い、当たり前の反応です。大人の私だって怖いのです。
ただ娘ちゃんがそうするのには理由があるのだという知識を得て、理解をし、怖い気持ちを薄めているのです。
でも最近の、理屈など良く分からなくてもうまく対応している息子を見ていると、勝手にあきらめたり決めつけたりして、なんと私は頭の固いつまらない大人なのだ、と思ったりするのです。

不穏の症状が出始めた頃のことを思い出します。こちらもどう対応したら良いのか分からず、ああしてみようか、こうしてみたら、と模索の日々でした。平穏なフィールドのBGMが流れていたのに、突如として戦闘シーンのBGMに切り替わります。一日の内に何度も何度も何度も。
「もうやめてよ!なんでそんなことすんの!?」つい娘を糾弾し、叱責し、論破したくなります。でもその場の高ぶった感情で放った言葉は、結局自分を苦しめることになります。「あんなこと言わなきゃ良かった~」となることは避けたい私です。
だいたい「なんで?」なんて聞かれても、「病気だから」としか答えのない話です。病気が良くなれば、しなくなるのです。
「痛いからやめて。暴力はだめだよ。人にも家族にも自分にも。」かける言葉はそのくらいでしょうか。

ある時、娘ちゃんと息子が部屋に二人きりのときです。(私はたぶんキッチンにでもいたのでしょう。)
また、娘ちゃんに不穏のスイッチが入りました。抑えられない衝動が湧いてきます。でもいつも矛先になるママはいません。弟(6)がいるだけです。
弟に手を出してはいけない!!咄嗟にそう思ったのでしょう。矛先を人ではなく、物に変えました。身近にあったテーブルをガタガタゆらし、叩き始めました。その物音で、パパと私は駆けつけて来ました。
娘ちゃんは自分の拳を握りしめて、必死で自分を抑えようとしていました。
『弟にケガをさせてはいけない、物を投げたりしてはいけない、泣かせてはいけない。弟は守り、助けるもの。』
そんな心の声が聞こえてくるようでした。
自分をなんとか制しようと、必死に頑張っている姿は、まさにあの国民的ヒロインのようでした。急に引き合いに出して恐れ多いのですが、私が今まで見聞きしたものの中では相当に近い様相なもので、本当に冗談で言っているわけでなく、あの様子を見てしまったらそれ以外の表現が浮かんで来ないのです。申し訳ありません。
同作においては、どんな時でも妹は妹であることに変わらないという兄のブレないスタンスには感服致しますし、相手を尊重した接し方、対応術には目を見張るものがあります。あんまりすごいから対応に悩んだ時は「彼ならどうするだろうか…?」と思ったりします。くじけそうになった時、どうやって己を鼓舞するのかも学びました。
手引書や専門書に書かれていることは正しいのでしょうが、全てではないと思っています。納得の出来る答えがそこに書かれていないと思っていたら、意外なところに見つけたりします。
その大昔、精神疾患という概念がどれほどのものだったかは分かりませんが、理解もされにくく、原因も定かではなく、手の打ちようもなく、取り憑かれただとか、何かの呪いだとか、因果応報だとか、何かのせいにしたい、理由を作りたい人間は、病気を様々な形で表現したのかも知れません。
(別に作品が精神疾患を比喩しているとかそんなことを言っているわけでは全くありませんので悪しからずです。純粋にリスペクトしております。)
令和の現代においてもまだハッキリとした原因が分からず、完治も無理だと言われている病です。でもここまで人間は戦って来ました。ただこの先の未来の医療に、まだまだ期待しながら生きていきたいのです。
脱線しました。

不穏はそう簡単に消えません。
入院したって消えませんでした。
その辛さは本人にしか分かりません。変わってあげることは出来ません。
でも、娘ちゃんは回復してきていますし、私達だって前へ進んでいます。あの頃と同じままではありません。話してみると、娘ちゃんは自分の状態や周りのことも、本当に良く分かって、見えているのです。
それだけ分かっていれば、あとはもうどう付き合っていくかという段階かと思います。

満場一致でうちのヒロインです。

~2024新春スペシャル~
レベルアップした娘ちゃんの不調回避術

壱、昼間のうちに身体を動かし、エネルギーをプラスなことにつかう
弐、全集中で塗り絵をする
参、ストレスボール的なやつをめっちゃムニムニする
肆、音楽を聴く、歌を歌う、踊る
伍、今の気持ちをポエムにしたり、作詞にしたり、絵にしたり、創作に勤しむ

本年も宜しくお願い申し上げます。

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