見出し画像

レギュレーター

広大な砂漠の中に、まるで生物の巣窟のようにうごめく都市があった。
無数の塔や橋は昆虫の巣を思わせる形で建てられており、その構造は複雑怪奇だった。都市を支えるのは、電気波で漂うエネルギー。
昆虫たちはこの電気波を自由に使い、波乗りをするかのように都市内を移動していた。
この都市の住民は、人間ではなく「電気内生物」と呼ばれる存在たちだった。彼らは有機的な身体と電気を融合させた、半生物・半機械の姿をしており、まるで昆虫そのもののように都市に適応していた。彼らの体は常に電気波に共鳴し、周囲の空間を自在に変形させて生きていた。
都市の中央には「何でも空間」と呼ばれる特別な場所があった。
この場所は、電気波によってあらゆるものが無限に変化できる異次元のようなエリアで、住民たちはここでエネルギーを交換し、夢のような仮想世界を体験することができた。彼らはこの空間を利用し、都市の調和を保つだけでなく、新しい技術や知識を次々に生み出していった。
しかし、都市に危機が迫っていた。それは「恒星風」と呼ばれる、恒星から放たれる強烈なプラズマの嵐だった。恒星風は電気波を乱し、都市全体を飲み込む危険があった。住民たちは「恒星風」を防ぐために、都市全体を電気波で包み込む巨大なシールドを構築しようとしていた。
都市の科学者たちは、ある一つの鍵を握っていた。それは、特定の昆虫型生物が持つ特殊な電気パターンだった。このパターンを使えば、恒星風のエネルギーを逆に利用し、都市を守ることができるという理論があった。しかし、問題はその昆虫型生物が「何でも空間」の深部にしか存在しないことだった。
主人公の一人であるリードは、都市の防衛チームに属する若い技師で、都市を救うためにその昆虫を探す危険な旅に出ることを決意した。彼は電気波を操るスキルを持ち、都市内で最も優れた電気波乗りの使い手だった。リードは仲間たちと共に、未知の世界に飛び込み、昆虫を見つけ出すべく何でも空間を進んでいく。
だが、その空間の中には、無限に変化するトラップや、住民すら知らない危険が潜んでいた。リードたちは電気波を駆使しながら、空間を進むごとに変化する景色と異次元の生物たちに対抗し、徐々に目的の昆虫に近づいていく。しかし、その先に待っていたのは、自分たちの存在そのものを問うような衝撃的な真実だった……。
都市は果たして「恒星風」に耐えることができるのか。そして、リードたちは自分たちの未来を守るためにどのような選択をするのか――。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?