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その決算対策は会社を弱くする!「賢い決算対策」&「ダメな決算対策」

【記事更新のお知らせ】
2019年10月12日
 「1. はじめに」に、twitterでのこのノートに関するレビューを追加

このnote執筆に込めた思い

こんにちは!税理士のきむら あきらこ(木村聡子) と申します。

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まずは、このnote執筆に込めた思いから、お話しさせてください。

1年の経営活動の通信簿ともいえる「決算」

黒字の場合の節税対策にしても、赤字の場合の対金融機関向けの決算対策にしても、「正しい決算対策」を知っている中小企業の経営者は、まだまだ少ないように感じています。

正しい決算対策を知らず、下手に聞きかじった対策を安易に講じると、会社の経営体質を弱めることになります!

経営者の方々には、会社が小さいうちから、きちんと正しい決算対策の知識を身につけ、実践して欲しいのですが、最近は税理士も価格競争の波に飲まれ、なかなかそこまでアドバイスをすることが出来なくなっています。

これは税理士が悪いというよりは、「年に1回、決算だけ組んで〇〇万円」という報酬体系だと、事業年度の期首から決算まで、毎月数字を見ながら経営者と顔を突き合わせ打ち合わせをする機会がないので、社長に「決算対策の何たるか」を伝えきれないという実情があります。

そこで、起業仕立ての経営者の方や、これから起業しよう考えている方にむけて、「正しい決算対策」を伝えるコンテンツを書きたくて、今回、このnoteを発行しました!

1. はじめに

まずは、この「はじめに」を読まれた上で、このnoteがあなたにとって必要な内容かどうか確認してみてください。

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このnoteに興味を持たれた方は、もしかすると、決算を迎えた、もしくは、迎えつつある経営者や経理担当者の方が多いかもしれませんね。

まず、黒字決算の場合は納税が待っています。納税額を少しでも減らしたいと考えるのは、人として自然なことです。

そこであの手この手の決算対策(節税策)を講じようとして、このnote を読み始めたのかもしれませんね。

一方で、赤字決算を迎えることになりそうだという会社も、決算に向けて対策が必要です。

なぜなら、金融機関から資金を調達する際に決算書がその判断基準となるからです。

銀行等から借入をしている会社であれば、できるものなら決算は黒字で着地したいというのが本音でしょう。

しかし、ここに落とし穴があります。

黒字会社が下手な決算対策(節税策)を講じると、資金が流出することになり、会社の経営体質を弱めることにもなりかねません。

また、赤字会社が黒字に見せかける道を安易に選択し、決算書を粉飾(※)してしまえば、会社の信用を失うことになりかねません。

※「粉飾」
粉飾とは、会社の経営成績や財政状態を事実と変えて表示することを目的として、会計処理(決算処理)を意図的に操作することです。一般に「粉飾」とは会社の状態を良く見せることを言いますが、逆に会社の状態を悪く見せることを「逆粉飾」などとも言ったりします。

で、このnoteの内容なんですが…

節税策がバンバン書かれている、というよりは、「決算」「決算対策」とは何かについての、啓蒙のnoteだと思ってください。

よく、「学生生活の総決算」などと、物ごとを締めくくることや結末をつけることを「決算」と言いますが、それは会社の決算から来た言葉です。

それくらい大切で重要な「決算」を、適切な形で終えることができるよう、このnoteで、「正しい決算」の迎え方を、どうぞしっかり身につけてください!

このnoteに書かれていることを、経営者として理解し、実践して頂くことで、あなたの会社の基礎体力は確実にアップします。

つまり、このnoteは、人間に例えると「正しい健康法を説く書」のようなものだとご理解頂けますと幸いです。

▼▽▼ありがたいレビューを頂いたので転載させていただきます。note購入時のご参考になさってください。

ーーレビュー終わりーー

2. 決算対策はなぜ大切なのか

決算対策は大切

決算をとおして会社は、税務申告を行います。

決算に基づき、会社は株主に配当を行います。

これは、決算は会社の経営成績・財政状態を総括する「法律上要請されているまとめ」だからです。

期中の試算表よりも、決算書の方がその内容の信頼性が高く、銀行や信用調査の上で決算書が重視されるのも、このためです。

あ、でも、これってどちらかというと、会社の外部の人にとっての話ですね。

会社の経営者など会社の内側にいる人間にとっては、決算は、それ以上に重要な意味があります。

2.-1 会社のビジョン達成のための目標をブレイクダウンした最小単位が決算

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会社の最大目的は、事業を継続して行い、長期間にわたり顧客や従業員を守ることです。

行き当たりばったりの経営では、経営環境が厳しく激動するこの時代、会社はすぐに倒れてしまいかねません。

では、会社が倒れずに経営を行っていくには、長期間の継続企業を目指すためには、どうすれば良いでしょうか。

それは社長をはじめとする経営陣が、長期のビジョン=長期計画を持つことです。

「当社は社長である私が70歳になり引退する時までに、後継者を育てたい。引退する時期には、老後のことを考えて退職金はこれくらいは欲しい。」

計画は、最初はこれくらいざっくりしたものでも構いません。会社を経営していくにつれ、長期計画も毎年見直すことになりますが、そのうち、現実的で、より具体的な計画を練ることができるようになりますので!

長期計画を考えたら、こんどはそれを適えるための中期計画を考えましょう。

「後継者に喜んで会社を引き継いでもらえるよう、60歳くらいまでには拠点を○○市に設けておきたいなぁ。退職金の原資を稼ぐためには、年商○億円は必要だな…。まずは5年後に年商○億円を目指そう。そのためには、開発中の新商品を2年以内には市場に出す必要があるな。」

そして、この中期計画を年度に落とし込んだものが、1年ごとの決算の計画です。

計画はブレイクダウン

永続企業を目指すため
着地点を見据えた経営を行うため
何をしたいかその1歩を踏み出すため
その目的のための手段として蓄財を行うため

毎期毎期の決算はそのマイルストーンとなります。

つまり、会社の中長期のビジョン達成のための目標をブレイクダウンした最小単位が決算といえます。

決算は、夢へ向かって漕ぎ出したあなた(経営者)のゴールに繋がっています。それゆえ、1年ごとの決算は非常に大切なのです。

決算の重要性について理解いただいたところで、次はその対策の重要性についてお話しします。

長期計画→中期計画→決算とブレイクダウンした場合、「当社のあるべき決算の姿」というものが見えてきます。

その「あるべき決算」(予算)を目指して、日々、経営を行っていきます。

会社の中には、積み上げ計算をして綿密な予算を立てるところもあるでしょうが、慣れないうちは、中長期目標から逆算したざっくりした予算でも良いと思います。

ところが、こういった予算を持たず、闇雲にどんぶり勘定でいきあたりばったりの経営をしていると、何が上手くいっているのか・いないのかも、わかりません

1つの決算が予算どおりにいかないということは、それを繰り返しているうちに、中期や長期の構想がガタガタになるということです。

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そこで、決算をさらに月ごとに分解した月次決算が重要性を持ってきます。そして月次決算を締める都度、あるべき決算(予算)の姿に向けて歩んでいるか確認し、そうでなければ早めに対策をすることが重要になります。

というのも、後で詳しく述べますが、決算対策はまず事後ではできません(いくつかできるものもありますが、その数はうんと少ないですし、大きな効果は得られません)。

また、決算対策の中には、期末ギリギリでできるものもありますが、その多くは、その事業年度の早い時期から検討し手を打たなくてはならないものです。

決算に向けた対策が重要なのは、決算をあるべき姿に近づけるためと、その多くが間際になってから手を打っては遅いからです。

有効な決算対策を行うためにも、まずは「わが社の決算の理想像を持つ」ことと、「月次決算をとおして早め早めの対策を実践する」ことを心がけましょう。

次は、決算対策の考え方の基本についてお話しします。

3. 決算対策の考え方

3.-1 黒字のときの決算対策の考え方

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会社が継続して事業を行うためには、利益を出して会社にお金を残さなくてはなりません。なぜなら、会社が倒れるのは、会社の内部にお金が尽きたときだからです。

だから、会社がもうかっていること(黒字)は、大歓迎すべきことです。

しかし、黒字の場合は納税がつきまといます。もちろん、納税は適正に行わなくてはなりませんが、決算を締めた後で

「予定以上に利益が出てしまった!こんなことなら、必要な設備投資をやっておけばよかった!」

と、後悔しても後の祭りです。

会社を取り巻く経営状況が激しいこの時期、利益が出ているときに先手を打って必要な設備や人材育成等を行っておくことは、会社の生き残りのために必須ですし、必要なことにお金を使うことは、後で詳しく述べる「正しい節税」につながります。

黒字のときの賢い決算対策は、中長期の構想に基づいた「わが社の決算の理想像(予算)を持つ」こと。その「理想像」より利益が出すぎたり納税額が多い場合には、正しい節税策を検討することです。

また、節税策は時期により早すぎたり遅すぎたりするものがありますので、期首・期中・期末で適切な対策を行うこともポイントになります。

3.-2 赤字のときの決算対策の考え方

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「決算対策」と言うと、どうしても「節税対策」が頭に浮かぶ方が多いようですが、赤字の会社も対策が必要です。

赤字の場合は「黒字化のための対策」ということになります。

赤字のときの決算対策は、黒字のときの節税対策よりも難しく、より早めに着手しなくてはなりません。従って、期首からの月次決算がより大きな意味を持つことになります。

また、社長と経理担当者だけで対策を考えることは難しいです。

黒字化するためには、今後の収益見込みの情報を得るため、営業担当や開発担当から情報を得る必要があります。

タイムリーな月次決算と、確度の高い収益予測により、費用削減等について早期に手を打つことを心がけることが、赤字の時の決算対策には必要です。

この「黒字化するための対策」は、金融機関からお金を借りるための対策と思いがちですが、そう考えると小手先の対策に目を奪われがちで、それが粉飾に手を染める要因になってしまいます。

赤字のときの決算対策は、「会社の収益構造や財務体質を改善するためのもの」と、戦略的にとらえるようにして下さい。

さあ、次からはいよいよ、決算対策について具体的にお話しをしてまいりますよ!

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木村聡子/ 税理士/ https://akirako.jp/onlinesalon/lp/ 主催⬅️Webメディアを仕事に活かすお手伝い/著者/逆算手帳・認定講師/個人ブログ https://akirako.jp/ は確定申告期に月刊23万PVを記録するメディアになりました