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ポリンキー

POLINKI
HD | Color | Stereo | 8 min 19 sec | 2017
URL: https://vimeo.com/241290342
『ポリンキー』は、暗闇の中で目覚めたある男の夢物語として展開する短編映像作品です。2019年に国立新美術館で開催された「21st DOMANI・明日展」では、本作と映像作品『ウンザー・ハウス・フォー・ザ・ニュー・エラ』(2013)とを組み合わせたビデオ・インスタレーション作品として展示しました。

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作品概要
この映像作品は、暗闇の中で目覚めたある男の夢物語として展開する。夢の中で男は母子に出会い、彼女らの言葉に導かれて4つの光点を見る。赤ん坊はそれら4つの光点を結んだ三角すいを、ポリンキーと呼んだ。ポリンキーとは、433年と11日、8分19秒という非常に長い時間をかけて観測される図形である。

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空間と時間
「光年」という、天文学で用いる距離の単位に関心を持ちました。説明を読むと「時間」と「距離」を行き来するような感覚を覚えます。そこでの感覚をたよりに『ポリンキー』の制作を進めました。作品の構想にあたって自宅をカメラオブスクラ化して中にこもり、太陽光の軌跡をトレースしました。この映画では、そうして描かれたトレース線をはじめとして、太陽光線、時間のタイムライン、視線、星の軌跡等、様々な線を用いて架空の図形を描く過程が示されています。

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地球と太陽と北極星
作品のナレーションで語られる8分19秒という時間は太陽光が地球に到達するまでの間隔を、433年という時間は北極星ポラリスの光が地球に達するまでの間隔を示しています。

図形の描画
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この作品で描かれる作図手順は、3DCGソフトウェアを用いてあらかじめ試みられました。つまり、ソフトウェア上で太陽の動きを再現し、ポリゴンを用いて巨大な三角すい「ポリンキー」の作図手順をシミュレーションしたのです。以下のナレーション文は、そこでの手順に基づいて記述されました。

AからBへ、8分19秒の間、その光をなぞりなさい。Bを中心として、線分ABを半径とする円を描きなさい。Cは、その円と光との交点にある。線分ACの中点とBを結ぶ線に沿って、その面を90度折り曲げなさい。AとCにそれぞれ小さな穴を二つ開け、穴Aから穴Cを覗き込みなさい。いま、おまえはポラリスを見ている。現在の北極星、433年前からの光である。その光を433年間追いつづけなさい、Dはそこにある。光点ABCDを結んだ三角錐をポリンキーと呼ぶ。

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おわりに
この記事のはじめにも書いたように、昨年、本作と映像作品『ウンザー・ハウス・フォー・ザ・ニュー・エラ』(2013)とを組み合わせたビデオ・インスタレーション作品を発表しました。その際、数名の観賞者から、二つの作品の補足関係を楽しんだと意見を貰いました。
かつて『ウンザー・ハウス・〜』を制作した際、「カメラとは観測装置である」と自分なりに定義しました。本作では、その定義に呼応する物語を提示しています。

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