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ウンザー・ハウス・フォー・ザ・ニュー・エラ

UNSER HAUS FOR THE NEW ERA
HD | Color | Stereo | 5 min | 2013
URL: https://vimeo.com/89390520
『ウンザー・ハウス・フォー・ザ・ニュー・エラ』は、映像『ウンザー・ハウス/UNSER HAUS』と楽曲『新しい時代/THE NEW ERA』(作曲家・三輪眞弘)によるミュージックビデオです。2013年に山口情報芸術センター[YCAM]で開催された「架空の映画音楽の為の映像コンペティション/FILM BY MUSIC」で審査員特別賞(樋口泰人氏)に選定され、YCAM 10周年記念祭の期間中に展示上映されました。その後、2014年オーバーハウゼン国際短編映画祭のMuVi Award(ミュージックビデオ部門)にてセカンドプライズを受賞したことをきっかけに、これまで50カ所以上の映像祭や美術展、テレビ放映等で上映されました。

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作品概要
映像『ウンザー・ハウス』は、作者の東京の自宅をカメラ・オブスクラに仕立て、刻々と変化する太陽光の模様を撮影した観察記録です。一方、サウンドトラックに使用した楽曲『新しい時代/THE NEW ERA 』(三輪眞弘)は、アルゴリズミック・コンポジションによる自動生成音楽で、コンピュータが動く限り生成されるその楽曲から5分間を抜粋して使用しています。

カメラ
僕はそれまで何も考えずに「カメラ=撮影機材」として扱ってきたのですが、ふと「カメラとは何なのか?」と疑問を抱きました。
写真史において、カメラの由来はカメラ・オブスクラという装置で、ラテン語の「暗い部屋」を意味します。機能的に言って、カメラ・オブスクラはもっぱら投影像を得る装置なので、現代のカメラは「カメラ・オブスクラ」と「記録媒体(フィルムやメモリ等)」を合体させたものと考えることもできます。

カメラ・オブスクラ
19世紀に写真技法が発明される以前は、画家が素描の道具としてカメラ・オブスクラを使用しました。さらにそれ以前は天体観測に使用され、天文学者らは巨大なカメラ・オブスクラの中で太陽黒点や日食を観測したそうです。

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観察記録
実際に自宅をカメラ・オブスクラ化し、様々な撮影方法を試みながら内部の様子を観察しました。上の画像は壁面を、4分ごとに1秒間ずつ撮影した多重露光写真です(地球は4分で 1度自転します)。

太陽光線
よく晴れた日に、その名も「暗い部屋」、カメラ・オブスクラの中へ入ると、まず目に入るのは壁に映る太陽像で、少し目が慣れてくると太陽光線が見えてきます。およそ1億5000万キロも離れた太陽から光速で降り注いでいると想像すると、なんとも言えず不思議な気分になってきます。

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新しい時代、布教放送 rtsp://neuezeit.org:554/nz.sdp
2001年3月10日より数年に渡って、自動生成音楽『新しい時代/THE NEW ERA』は、上記のアドレスでストリーミングされていました(現在ストリーミングは停止しています)。以下は、メールマガジン「方法」第13号(2002年3月3日発行)に記された三輪氏の文章です。
「アルゴリズムによる作曲の究極の表現形態をいつも考えていた。その答えとして永遠に音を生成し続けるコンピュータからの出力をそのままライブ放送(ストリーミング)するという試みがぼくを魅了してやまない。ドメインの命名から3台のコンピュータ上で24時間稼働し続ける複数のデーモンの設定まで、この放送システム全体でひとつの作品なのである。」

編集
カメラ・オブスクラの内部で刻々と変化し続ける太陽光の動きを観察することと、アルゴリズムによって自動生成され続ける『新しい時代/THE NEW ERA』のストリーミングを聴取し続けることの間には、何かしら相対的な関係があるように思います。

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けれども当時、言い当てる言葉を見つけられぬまま、作品というよりは観察記録として、画像を時間順に整理し、時間・場所の数値データを表示させて、映像・数値データ・音楽を一緒のファイルに保存しておくようなつもりで編集しました。

おわりに
7年後の今になって振り返ると、そういう作品のまとめ方もあるのだなと思います。本作をきっかけに、「カメラとは観測装置である」という解釈を定義しました。これ以降の制作では、その解釈を意識的に用いつつ、太陽の周期性や永続性といったトピックを扱っています。





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